家具産業の新方向と課題 熱海清談(上)

熱海清談(上)
一般社団法人日本家具産業振興会会長カリモク家具相談役

加藤知成

聞く人
長島貴好(本紙社長)

暮らしの設らえが家具業の基に

長島 日本家具産業振興会は5月の定時総会でなにか新しい事業を打ちだしましたか。

加藤 これという新しいものはなく、国産家具表示の推進と、合法木材事業について新法実施の見通しになったため、経済産業省や林野庁を通じて、家具への様々な現状調査や課題が寄せられています。細部は経産省がつめることになっているようです。

長島 合法木材については世界的な問題ですが、現実には非常に難しいところがあると思います。来年の5月20日頃の新法施行を予定しているようですね。

加藤 盗伐材などは日本でのことではなく、世界から入る、または海外で調達する木材のことですね。こうした盗伐材問題は原木、製材ものだけではなく、パーツとして入って来るものもあります。第3国を経由してくる場合、その裏付けと入手企業の関与度がなかなか把握し難いわけです。

長島 もともとが日本の国産材使用の後、フィリピンをはじめアジア、アセアン材の輸入、そしてロシア、米国、南米とまさにグローバルな確保に成りました。合法木材か否かは、産出国の管理強化に頼るしか仕方がないのではありませんか。

加藤知成 氏

加藤 確かに複雑で、途上国を経由してロシア材などが入ってきているという情報もありますね。
だが基本は林野庁の国土開発計画(防災や国産材活用振興)などによる狙いもあることは事実でしょう。マクロに見て世界の熱帯雨林保護、エコ対策など盗伐材による悪影響を防ぐ、というのが国際視点での規範ではないでしょうか。

長島 考えてみれば、指物師の時代は国産材だったんですよね。桐タンスもそうでした。

加藤 当社も国産材だったんです。それが外材に切り替わってきた。その理由の一端に、環境保護の視点から保護政策に乗り出したことも原因になっています。それで使用が止まったんです。

長島 ところで国産家具ですが、販売店で表示をしています。この販促効果と拡大はどうですか。

加藤 ユーザーの関心が高いんですが、残念ながら東京都や神奈川県の組合ではコントラクト市場のオーダー家具が多いせいか、国産家具表示には関係ないという姿勢です。
また、いろんな部分で天然木を使いだしました。家庭用、既製家具では家具店が仕入れて売ることから、コンサルティング販売の時代になってきました。つまり「技術」を売る時代です。だから私はIFFTに出展してお客さんに説明するとき、販売強調より「技術」をアピールしなさいと言っています。

琳派は偉大な家具屋集団だった

長島 ところで、我々家具産業は、実は「人間産業」として精神衛生面にまで関与する時代ではないかと考えています。

加藤 元来、自然の樹木に囲まれて伊勢神宮を護ってきたのが倭民族です。そこに民族としての伝統工芸も含まれていました。それが、いまではバラバラにされてしまったんですね。全国の木工業種の職人が各種産業分野に散ってしまった。そして明治以降は産業別に分かれたんです。
私は昨年末に京都で「彬派」の展示会をみたんです。そこで教えられたのは、本阿弥光悦などは「家具屋の領域に入るグループ」だったのではないか、ということでした。

長島 加藤さんは昔から難しいことを、禅問答みたいに言ってきた。「家具は家財。その家の主人の地位、品格が現れている」と聞いたのはもう30年以上前かな。しかし、感心するのは「一貫してブレ」がないことです。

加藤 だって、そういうもんじゃないですか。人間はどこが変わりましたか。寝て、食べて、働いてですよ。道元禅師ではありませんが、目は横に、鼻は立直にです。だから、私達の担う本質は「お客をもてなす設えをどう作るか」ということです。または「自分が安楽に日々暮らす設え」でもあります。京都の料亭では「もてなし」の60%は設えで、40%は料理、サービス、タイミングです。光悦は食器までデザインしたんですね。最近思うのはオープンイノベーションということです。

京都の料亭はもてなしの60%が設らえ

長島 やはり難しいなあ(笑)。ただ、私にも一貫して分かるのは「伝統や基」です。現代短歌の基にあるのはやはり万葉集です。いかにグローバル化しても日本の四季です。これはイタリアモダンじゃない。

加藤 外人デザイナーが日本に来て、出された「おしぼり篭」を持って帰るというんですね。なんだというと、整理して構想を練る基だという。単に椅子をデザインするのではなく、クライアントの意思に添う提案を考えるんだと。こう考えると「家具屋は文化の殿堂」だと私は思うんですよ。

長島 ウーン、禅問答に近い。が、わかるんですね。なんとなく(笑)、今日は1年に1回、熱海での村内会の総会に招かれて同室しました。昨日のように思える速さで、互いに後期高齢者に入りました。

熱海清談(下)につづく 6月7日後楽園ホテルにて)


この記事は紙面の一部を抜粋しています

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