マレーシア家具産業を国策推進

マレーシア家具産業を国策推進

製造拠点から脱却 独自のデザイン開発で世界へ

マレーシアは、豊富に採れるゴムの木などを用いた木製家具の製造で、今や世界の家具輸出国ランキングのトップ10の仲間入りをしている。30年前は未熟であった産業も、今や成熟産業となってきた。特に人件費や資源の安さから、ニトリや東京インテリア家具など、日本の家具販売店の製造拠点としての役割も大きく担っている。2014年は約2,000億円の家具を輸出した。同年、日本への輸出額は、アメリカに次ぐ2位(170億円)となっていた。2020年までには、この6倍近い1兆2,500億円規模に成長させるべく、政府の計画のもと積極的に政策支援を行ってきた。製造に適した環境の下で、高品質の製品を創出し、見込みのある市場規模へと急速に成長を遂げてきた。

今回取材したのは家具メーカー18社だった。これらは大きく分けて①地場の木材を中心に家具を製造するメーカー②ソファ専門メーカー③マットレス専門メーカー④デザイン性の高い家具を作るメーカーの4種に大別される。

スプリングアート社の 製品
スプリングアート社の 製品
ニトリでも販売してい る
ニトリでも販売してい る

①については、多くがダイニングテーブルやチェアを主に製造していた。完成品を製造するところがほとんどだが、中にはDIY向けのノックダウン部材を製造する企業もあった。ムアール地方に本社を構える「Spring Art(スプリングアート)」社は、キャビネットやデスクのDIY部材を製造していた。マレーシア材を使用したMDFを用いている。DIY材に不可欠な穴あけ工程に力を入れている同社の製品は、より機能的でハイエンドという評価のもと、ニトリにも製品を提供している。また、首都クアラルンプールから車で1時間ほど西に進んだカパールに拠点を構える「LATITUDE TREE(ラティチュード・ツリー)」社も、ゴムの木を用いたダイニングのDIY部材を製造している。同社は日本への輸出をにらんでホルムデアルデヒドの発散レベルが最も低いランクであるF☆☆☆☆認証を取得しており、LIXILをはじめとした日本企業がたびたび視察に訪れるという。また、ゴムの木以外で、他社があまり使わない素材を用いて差別化を図る企業もあり、同国の北側ペナン州バターワースに拠点を置く「UNITED WOODWORK(ユナイテッドウッドワーク)」社は、耐久性や加工性が高く材質がサクラと類似するマレーシア固有のニヤトー材を用いており、南国風の家具として市場で高い評価を受けている。日本においても流通しており、さらにドリームベッド社から技術提供も受けており、より日本市場にあった製品を提案している。こうしたメーカーの大多数が売上額の90%近くを輸出で売り上げており、輸出先も中国や韓国などのアジアをはじめ、アメリカや日本、ヨーロッパなど多岐にわたっていた。

ラティチュード・ツリー社の製品
ラティチュード・ツリー社の製品
ニヤトー材を用いるユナイテッドウッドワーク社
ニヤトー材を用いるユナイテッドウッドワーク社

②のソファ専門メーカーは、多くの種類の皮革を取りそろえ、さらにはカラーバリエーションも幅広くとり、多様なニーズに対応している姿勢が強く見られた。100%を機械に依らず、人手を加えることで、より高品質なソファ作りを行っていた。クアラルンプールから車で20分ほど北西に進んだスンガイブローに拠点を構える「ZOLAND(ゾーランド)」社は、オリジナルデザインのソファを国内外に向けて製造しているが、ソファに使う皮革を切り出す際に、専用の機械でスキャンを行い切り出し可能な部位をモニターで示し無駄のない皮革の使用を実現している。合わせて、品質評価の際にも、機械に依るスキャンだけでなく実際の人の目を交えることで、耐久性の高い製品を製造していた。

機械で皮革をスキャン(ゾーランド社)
機械で皮革をスキャン(ゾーランド社)
ゾーランド社のオリジナルソファ
ゾーランド社のオリジナルソファ

③のマットレス専門メーカーは、天然ゴムからできるラテックスを使用するなど、自然素材を用いているメーカー、また、差別化のために独自のスタイルを追求するメーカーも多い。マレーシアの家具輸出量の約3分の2を占めるクラン港の周辺に拠点を置く「GOODNITE」社は、静電気防止のため、表面のファブリックに電気を吸収するカーボン材を混ぜた「STATFREE」を採用していた。一方、バターワースに拠点を置く「COCO INDUSTRY(ココインダストリー)」社は、その名にあるように、ココナッツからとれた繊維を芯材に用いたマットレス「FibreLux」を製造していた。ラテックスに比すると畳のように固めだが、体にフィットしやすく、なおかつ化学物質を用いていないので環境にも優しい製品だ。日本に対しても製品を輸出しており、ニトリやアクタス、さらには楽天市場などのネットショップでも販売している。同社は政府の支援のもと、ケナフファブリックを中材に用いた「ECONAF」を開発するなど、環境を最優先に考えた技術を最大限に応用していた。

「STATFREE」(グッドナイト社)
「STATFREE」(グッドナイト社)
ココナッツが芯材のマットレス(ココインダストリー社)
ココナッツが芯材のマットレス(ココインダストリー社)

④のデザイン性の高い家具としては、日本に限らず世界的に居住空間の狭小化が進んでいることから、空間スペースを活用できる家具が多く目立った。ムアールに拠点を置く「SIMEWOOD(サイムウッド)」社は、折り畳み式デスクや椅子を製造。壁面ボード状に折りたたんだ机の下部に、折りたたんだ椅子を収納できる。特に日本市場では好調で、ニトリや東京インテリア家具でも販売実績がある。また、クアラルンプールに拠点を置く「MOCOF」社は、こうした事情を反映して、壁面収納型のベッドを製造していた。普段はクローゼットのように壁面に埋まっているが、軽くタッチするだけで自動的に下りてくる。他にも、ベッドに変形するソファも製造。背面を上げることで、内部に収納されているマットレスが飛び出してくる。住宅だけでなく、企業の休憩室の中で使われることも多いという。こうした家具はまだ少数ではあるが、人件費や資源の安さから、欧米で生産される類似製品に対抗するカテゴリになりうるようだ。

折り畳みデスク・椅子(サイムウッド社)
折り畳みデスク・椅子(サイムウッド社)
壁面収納ベッド(MOCOF社)
壁面収納ベッド(MOCOF社)

今までは海外での製造拠点としてOEMを行っている企業が多かったが、輸出量が伸びるにしたがって、独自の色を出し、市場を開拓しようという企業が増えていた。なおかつ、特にこうした企業が多く集まるムアール地方を中心に、教育機関においてもグローバル人材の育成教育にも力を入れている。こうした官民のダイナミックな取り組みによって、マレーシアは世界屈指の家具産業国へと成長しつつあるようだ。

ベッド変形ソファ(MOCOF社)
ベッド変形ソファ(MOCOF社)

マレーシアの記事は本紙8月5日号(1675号)より連載開始。どうぞお楽しみに。


この記事は紙面の一部を抜粋しています

ホームリビング/寝装ジャーナル 購読に関するお問い合わせはこちらから