商圏ルポ <みなとみらい地区・石川町 ②>

商圏ルポ みなとみらい地区・石川町

西洋家具発祥の地 石川町

前回はみなとみらい地区の販売動向を記したが、今回は石川町エリアの販売動向について記していく。
石川町は、みなとみらい地区の南、横浜市中区の中南部に位置する地域。地域内はほとんど住宅地として利用されており、南部には丘陵もある。地区の玄関となる駅が、JR根岸線の石川町駅で、一日平均で32,000人が利用する。
港町横浜よろしく、ペリー来航後から、外国人が多く居を構えていたという。現在でも、当時の建物が残されている。

みなとみらい地区・石川町 ②
みなとみらい地区・石川町 ②

そうした同地区は、日本における西洋家具の発祥の地となっている。1863年に当時同地区に在住していた英国人のゴールマンが、地元の馬具職人に作らせたのが始まりだという。そうした経緯で日本に導入された西洋家具は、150年もの時を超え、今や市場を席巻するまでに浸透してきた。

ダニエル元町店

そうした土地らしく、駅前商店街には数店の家具店が並ぶが、中でもこの西洋家具のルーツを色濃く継承して生まれたのが「ダニエル」だ。同社は1943年に創業したが、創業者の咲寿武道氏は協同組合横浜クラシック家具を設立し、伝統技術の継承と品質向上に努めたという。

ダニエル元町店 外観
ダニエル元町店 外観
店頭の大きな赤い椅子
店頭の大きな赤い椅子

同社の本店が、「ダニエル元町店」(中区元町3―126)だ。駅から10分ほど歩いくと、正面玄関に置かれた赤い大きな椅子が視界に入ってきた。この椅子は、さながら同店の、ひいてはこの地域の看板で、「ゴダイゴ」のレコードのジャケットにも使用されたことがあるという。およそ築40年レトロな雰囲気の2階建ての店内では、1階では価格と品質を追い求めた海外ブランドの家具を、2階においては同社のオリジナルとなるダイニングやソファといった脚ものをメインに取り扱っていた。特に同社のオリジナルの椅子については、飴色のカバ材を用いており、長く使えて座り心地がいいと、古くから定評がある。店内ではロングセラーの「ブーツワイドアームチェア」も販売されており、カーブが美しいデザインで柔らかく座れると、多くの使用者を魅了してきた逸品だ。

1階で販売される輸入家具
1階で販売される輸入家具
ダニエルオリジナル家具
ダニエルオリジナル家具

同社が特に顧客に訴求したいポイントは「丹精を込めて長く使えるものを提供すること」にあると店長の下岡忠司氏。市場では低価格帯の商品が幅を利かせているが、同社の製品はいずれも職人が時間をかけて作った製品であり、値段は張るものの、長期間の使用に耐えうるように設計されている。

そうした同社の姿勢を一番よく示しているのが修理サービス「家具の病院」で、組立や椅子生地の貼替え、木工などの各分野に専属職人を擁している。特に椅子については、例えば張地の貼替えを依頼しても、各分野に精通した職人がいるため、補強が必要と判断した箇所にも補強を施すなど、まさにかゆいところに手が届くようになっている。このサービスを受けることで、末永く製品を使用することができる。同社製品のみならず他社製品の修理も受け付けているという。近年ではメディアでの露出もあってこうした修理依頼が増えており、横浜エリアのみならず、関東一円の椅子の修理を受け付けているということだ。店頭の赤い椅子の隣には、修理前と修理後の椅子の比較モデルも出ていた。

ブーツワイドアームチェア
ブーツワイドアームチェア
椅子修理前後の比較モデル
椅子修理前後の比較モデル

ターゲットとしては、主にハイクラス層を見ているが、若年層でもこだわりのある家具を求めてたとえ1品だけであっても買い求める顧客も存在するという。70年近くも歴史があるので、母の嫁入り道具であったドレッサーを修理して自分の嫁入り道具として使いたいなど、親子2代でユーザーになる例も少なくないようだ。

その他特筆すべき例として、同社が主催する各種イベントがある。これまで「家具の病院」などで同社が培ってきた技術を伝承し、年間で家具製作の基礎を学ぶ「家具の学校」を始め、夏休み時期に子供を対象とした木工教室、そして同社の工場見学も随時開催し、同社のものづくりの姿勢を公開している。技術伝承にも注力しているのは、まさに西洋家具のルーツを受け継いだ同社らしいといえよう。

横浜クラシック家具「ダニエル」ウェブサイト


葉山ガーデン元町店

同じく、駅に向かって歩いていくと、「葉山ガーデン元町店」(中区元町5―198)がある。同社は緑豊かな丘陵と美しい海に囲まれた同県三浦郡葉山の地で、1989年に創業。英国カントリースタイル家具を多くの世帯に広めるべく、日本の暮らしに合わせアレンジしたオリジナル家具を製作・販売している。現在神奈川と都内に15 店舗を構える。

15店舗のひとつである元町店は、テナントビルの2階と地下1階に入居。地下ではワードローブやダイニングセットといった木製家具を、2階ではこれらに加えてソファや時計、さらにはアクセサリーなどの雑貨を販売していた。

葉山ガーデン元町店 外観
葉山ガーデン元町店 外観
北海道で製造した家具
北海道で製造した家具

こうした家具は、いずれも北海道の工房に依頼して製造しているオリジナル家具だ。特に椅子とソファ以外の家具については、無垢材を用いたオーダーメードが可能で、使用する部屋のサイズに合致した製品を提供できる。無料採寸も実施しており、使用場所のサイズ感に合わせた家具を設計できる。住宅への作り付け家具が普及しつつあるが、各顧客の特性に合わせることができるからこそ、こうしたオーダーメード家具の製作依頼が増えているという。また、ソファについては生地の張替えが可能だ。

年齢層としては、年配層が来ることが多く、やや高めとなっているが、店頭で販売している輸入雑貨を一目見て、そのまま店内に入り、後日集団で訪れる女性客も多いという。また、婚礼家具としてたんすなどを買い求める女性客も存在するということだ。

2階では生活雑貨も販売
2階では生活雑貨も販売
無垢材で家具のオーダーメードが可能
無垢材で家具のオーダーメードが可能

人口減少等に伴って、家具インテリア業界もこれから生き残りをかけてますます競争が激化することが予想されるが、それでも同社は顧客の声に耳を傾け必要なものを提供するという従来の姿勢を貫く姿勢だ。

オーダー家具の葉山ガーデン 〜クラシック モダン〜 ウェブサイト


この記事は紙面の一部を抜粋しています

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