2017年 新春特別インタビュー:太田昭宏 氏

太田昭宏 氏
公明党全国議員団会議議長衆議院議員

太田昭宏

聞く人
長島貴好(本紙社長)

激動の時代に日本がリーダーシップを

長島 本紙の連載を大臣現職の頃から有難うございます。一貫して日本の国土の安心安全、防災、生活防衛のことですね。さて、アメリカでトランプ大統領が誕生しました。日本は単一民族で、今世紀は外国人も住むようになりましたけれど、米国は多民族国家で移民の国ですね。

太田 世界に大きな流れが渦巻いていて、そういう状況がトランプ新大統領を生んだと思います。例えば2016年6月のEU離脱、これも「まさか」ということでした。そこには移民に対する反感というものあります。

中間層といわれる人たちの仕事が奪われている。そして給料が少なくなり格差というものが広がっています。不満の底流に格差と移民の問題がある。そこへきて白人のブルーカラーといった人たちが、移民によって仕事が奪われ、不満が高まっています。

移民という大きな問題とか、フランスではテロもありましたね。四、五月にはフランス大統領選もありますし、またドイツも秋には選挙があります。いろんな国々でリーダーの改選期です。そして現実には格差であるとか、移民であるとか、中間層の没落であるとか、かなりの不安定、不満が溜まっているのだと思います。

安倍総理も「だからこそ日本がしっかりしなくてはいけないし、格差という状況があるならば是正しなくてはいけない」と言われています。公明党もそのなかで、特に庶民、中小企業の側に立って、そこへの配慮をしっかりした政治を行わなくてはいけないと思います。また世界の経済ということを考えても、日本はしっかりしなくてはいけない。またそういうポジションにあると思います。

さらに日本の政治は、新大統領との関係をしっかりと構築していくと同時に、新大統領を生んだ背景というのは、世界的に共通の項目がありますから、そこを先進国のひとつのモデルとして、リーダーシップを取っていかなくちゃならない、という風に私は思っていますし、総理もそのように考えていると思います。

インタビュー時

長島 立国の精神をもう一度考え直す時に、太田先生がおられる公明党も与党の中で力を発揮して自民党と政権を担っていっていただきたい。こういう期待は国民に強いと思います。最近一般紙で「経世済民」という言葉がよく出てきます。さて、太田先生は京都大学で耐震工学を専攻された専門家です。国土という問題、国土強靭化は震災国に適した政策です。そこで今後の課題は社会変動、少子高齢化や過疎化対策です。さらには都市の肥大化、大都市への集中は止まっていません。そういったなかで国土の安心・安全、また経済的に豊かに、落ち着いて暮らせるような国民生活実現をどうお考えですか。

国土の安全・防災取り組みが急務

太田 国土のグランドデザイン2050というのを2014年7月に出させていただきました。日本は人口減少社会になる。高齢化は超スピードで進んでいく。少子化も進んでいます。北海道に台風が3つも直撃したように、最近の気象変動、災害、雨も集中化、局地化、激甚化しています。

それから世界の都市環境が非常に熾烈な形になってきている。急速度なICTの進行というものがあって、そういういろいろな問題があるなかで、日本がどういう国土を作っていくのか、そして国民が安心して暮らしていけるのか、ということが私は一番大事なことだと思っています。そしてこれからの都市は間違いなく、広がった都市をコンパクトシティにしていくべきです。

長島 そうせざるを得ない。

太田 そうです。以前にも長島さんがおっしゃったように、遠くに老人ホームができるのではなく、サ高住というような住施設を、特別養護老人ホームを含めて、できるだけ介護やサービスが付いている施設を街中に作って、歩いて暮らせるコンパクト都市にする。また高齢社会では医療・介護は都市づくりと一体になってやらないと無理なんですね。身体が悪くなったから病院に行くわけですが、慢性疾患ですね、そして病院をいくつか渡り歩いていくわけですよ。

だけど慢性化と急性の病気は違うから、その地域周辺で暮らしていくことが大事だし、地域産業地域の進出した産業もコンパクトにしなければいけません。その前提で「わが町はどういう特徴を持った町なのか」ということをキチッと作り上げていかなければなりませんね。

それは隣町もそうです。隣り合わせの町とがそれぞれの個性を持って、単独じゃ生きていけないから、そこに連携を取れるようにした3つと町が連携とれるようなコンパクトシティ、コラボシティです。こういうところで交通網の整備をし、一体化をしていく。インフラの設備もそうですね、総合的なデザインによる「対流促進型国土形成」が大事です。

長島 まさにそうですね、

太田 対流というのは違う価値同士がコラボするからこそ効果があります。温度差で対流するのと同じように、都市と都市と、個性ある都市どうしが対流を起こす。人が連携をとっていけるような、そういう街づくりをしなければいけないと思っています。

それで省エネで、太陽光を活用したり、屋内の家電製品も省エネタイプにしたりすると同時に、スマート住宅、スマート・ウェルネス住宅というものにしなくちゃいけない。それらが連結してコンパクトシティというものを作っていく、スマート・ウェルネス・シティ構想です。そう我々は考えています。

日本は人口が減ってきますから、もちろん少子高齢社会を脱皮するのは非常に大切で、少子化対策は大事なのですが、同時にやはり経済から考えると「交流人口」ですね。定住人口が減少傾向にあるとするならば交流人口を増やし、それが「対流促進」や「観光」にも繋がっていきます。そして経済活性化という観点に立つというのが私の基本的な考えですね。

長島 高齢化率の高まりと同時に、フランスベッドの池田社長にも話したんですが、池田さんの話を聞いているとベッド企業ではないんですね。それで私が「フランスベッドは人間の中古再生業だ」(笑)と。これは安倍さんが提唱する「一億総活性化時代」というのは、年寄りが元気になって活性化しなかったら一億にならない訳ですね(笑)。高齢者が一億のうちかなりを占めているわけです。

これは是非先生にも課題として考えていただきたのですが、各省庁の問題になりますが、我々の家具インテリア産業は「人間産業」という括りに入ると思うんです。それは住生活のコアを構成し、育児から健康、睡眠、くつろぎとあらゆる要素が我々の産業分野なんですね。

太田 熊本地震が昨年4月にあり、鳥取でもありましたね。もう日本列島どこでも地震が起きうる、やはり首都直下型地震と、東海、東南海、南海地震が懸念されています。とにかく巨大地震は「間違いなく来る」とされています。私は耐震工学の専攻で、専門家でもあるんだけど、間違いなく私とか長島さんが生きているうちに、どっちかが来る可能性が大きいということですね。

長島 で、専門家として、また政治家の立場から、これを防ぐのは難しいけれども、少しでも被害を少なくするという、対策・対応というのはどのように考えられますか。

太田 地震ということでは、何といっても「建物の倒壊と火災」です。で海岸部といったら「津波」。そういう点では「ここは津波」が想定されるとか、例えば高知県の黒潮町では想定対策をしっかりやっている。それぞれの住民の一軒一軒が「私は地震が起きた瞬間に、何処に逃げ込むか」ということを、子供も含めて練習をしておくことです。現実にそういう逃げ込む場所があるということにきちんと体制を組んで、各家、家庭が全てシミュレーションをしています。

山を削ってそこに人が行けるようにする。そこを「命の山」と名付けで作るというような丘も造成していたり、例えば静岡の吉田町は逃げるところがない。時間もなかなかないから「歩道橋の高さならいい」といって、歩道橋を幅広くしています。そこに上がれば何とか命が助かるというようなかなり広い歩道橋を造っています。

長島 それは津波対策ですか。

太田 そうです。津波タワーを作ったところもあります。津波ビルというところもあるし、それぞれ移転したところもある。相当対策はこの5年間で進んできました。高速道路などに逃げ込むような階段を作ったりね。避難できるように高速道路に、階段駆け上ってこの二車線の外に逃げ込む場所を作ったり、それぞれの土地に即して津波対策避難についてやってます。大都市ではやはり火災と建物の倒壊ですから、何といっても耐震性のある建物という面からかなり進んできて、少なくとも学校の耐震化はほぼ完了しました。そんなことでいろいろな形で進んでいます。

コンパクトシティで地域の交流と経済振興推進

長島 やはり先ほどのコンパクトシティというか、地域の問題ですが、一極集中という面では東京ですね。一番危ないんじゃないでしょうか。インフラについていうと、今までのように効率化、あるいはスピード化、あるいは何とか化よりも、安全化をどう図るかという観点ですね。

太田 リダンダンシーというんですが、圏央道の完成で高速道が繋がってきました。交通の選択肢が多くなり、ここをやられたらこちらから通れるという便利さだけではなく、リダンダンシーという代替の道路ができるという風に、これもかなり進みました。経済ということでいうと、渋滞解消というのも非常に大きなことなんですね。たとえば東京でも大橋ジャンクションと大井まで中央環状ができたおかげで、都心部は5%交通量が減って、渋滞が50%なくなりました。来年の3月までには圏央道が成田の方まで行きますから。だから埼玉県の人たちや茨城県の人は成田までバッと行けるようになりますよ。

長島 従来とかく財政投融資のインフラ事業は、特定業種の権益のように捉えられてきました。

太田 日本はとかく「公共事業悪玉論」なんかでね、もう道路はいらないとかいろいろなこと言いますが、いま言った圏央道ができると、そこに新しい倉庫とか物流とか工場が建つんですね。それで北陸新幹線ができると、人の流れがものすごくなって、地域の仕事も繁盛する。工場の立地も変わってきます。

僕はそれを「ストック効果」って言うんですけど、公共事業にお金をかけてそれを「バラマキだ」っていうんじゃなくて、効果のあるところに、渋滞が解消された、高速を通し、新幹線を通すことによって工場が建ち、経済成長をもたらした。

そうした「ストックの効果」が出るという、そういう「効果のでる公共事業」というものを狙い定めて打っていくというのが大事だということを、私は強く言ってきました。だんだんそうなってきたと思います。

インタビュー時

長島 そうだと思います。地場の雇用も生まれますしね、それからインバイダー、外国人の観光客がまた押し寄せるとか、様々な活性化をするんですね。「点」での活性化になりますけれども、そのことを考えると、安全も含めて、やっぱりもっと公共投資というか、そういったいわゆる再開発。それからコンパクトシティの進行、推進を、やっていかないといけませんね。ちっちゃな島国で一極集中して、巨大震災がきたら「もう終わり」というんじゃしょうがない。そのへんが一番重要なことでしょうね。

我々の家具産業にまた戻るんですが、基本的には人間産業なんです。そこでやっぱり国民経済、中小企業経済、地場経済、こういうことを踏まえて、やっていっていただきたい。それを国土計画のグランドデザインの中に落とし込んでいっていただきたいと役所を回っていつも思っています。

木を重視した安穏の住生活を形成

太田 だから「安全」と「安心」って言うけど、僕は「安全」、「安心」、「安穏」というね。

長島 そう安穏ですね。国民生活の基本です。

太田 この「安寧」とか「安穏」という「安」がね、非常に大事です。穏やかに暮らせる、気持ち良く暮らせる、こういうことで例えば、木造の5階建の老人ホームが、足立区で初めてできたんです。一階はRCでね、しっかり固めますけど、上は全部木造なんです。木をふんだんに使うと、やっぱり老人ホームに入ってる人たちも違うんですね。おそらくこれは住みやすいだろうなあという、暖かさを感じます。「安寧」とか「安穏」とか、豊かさとかいうことの大切さです。だから木材の建物にする。木材は非常に大事なんですね。

長島 木は生きてるんですよ。

太田 木材っていうのは強くて穏やかなんです。そういう木材が注目されてきてますけど、2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けて、日本の木材というのを、もう一段と世界の人に知ってもらう。まあヨーロッパなんかではCLTっていう直交板で、10何階っていうビルが建ったりしますけどね。日本も、CLTも、あるいは学校の3階建てもできるようにとか、いろいろな法律改正をしたりね、耐火実験とかもしっかりやったりとかして、いよいよ木造を本格的に、伸ばしていこうという動きになっていますね。

長島 これは非常に重要なことです。デザイナーの喜多俊之さんが、秋田でひとつのプロジェクトをやっています。県産の杉を使って家具の開発をして世界に発信する。杉という木は日本にしかないんですね。今の先生の話が非常に重要なのは、国土を守る、CO2の規制や温暖化を守るというなかで、木が果たす役割は非常に大事なことであるし、それから白神山脈に世界に名だたるブナ山林がありますね。いま聞いた5階建てのビル、木造で五層の城が建つのかって、これは感銘しました。

さて今年の課題ですが「新しい年からこういう時代が幕開けるから、家具インテリア産業も目を向けなさいよ」と、何かあったら教えていただけませんか。

太田 木材というのは非常に大事だというのがまずあり、そこを大きく推進したいということです。大臣時代からいろんな出来事や事故で追われてきました。いまもドキっとします。この安全という点と「安穏」「安心」ということからも考え方が変わってきました。それは技術というものは非常に大きな価値があって、「良いものにはそれなりの価格というのが生ずる」ということ。「良いものを大事に使う」と当たり前のことです。今日の世の中の「安ければ良い」という流れを変えなくてはいけないというふうに思うんですよ。

長島 本日はありがとうございました。今後も家具インテリア産業へのご意見をいただきたいと思います。新年のご活躍を祈念します。


この記事は紙面の一部を抜粋しています

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