2017年 新春特別インタビュー:加藤正俊 氏

加藤正俊 氏
カリモク家具社長

加藤正俊

聞く人
本紙編集部

高価格帯製品の需要を喚起

――米国大統領選挙や英国のEU離脱など、2016年は大きな変化が多く起きた年でした。今振り返ってみると、どのような一年であったとお考えでしょうか。

加藤 期待をして始まった一年ですが、終わってみると見事にその期待が裏切られた一年でした。いろんな意味で予測を裏切られましたし、我々の予測も甘かったように思います。

具体的には消費税ですね。消費税が上がるという前提で予算を組んでいましたが、世界情勢の変化に合わせて増税も延期になりましたので、本来予想していた駆け込み需要がなくなってしまったという結果になりました。

――販売の現場からは、実際どのような声が上がっていましたか。

加藤 私どもが把握している限りでは、客足が昨年に比べて落ちているということ、購買単価も減少しているということがあります。

――そういった厳しい現実の中で、なにか好材料はありましたか。

加藤 今年、香川の高松にショールームを開設しましたが、そこまで大きな期待を持っていなかったものの、想像以上の業績を上げています。

――その好調の背景にはどういったものがあるのでしょうか。

加藤 端的にお話しすると、需要が創造できたことがあります。低価格の製品はホームセンターなど様々な販売店で扱われていますが、高価格帯の家具を扱うお店は限られています。今までの実績から見ていると、やはり弊社のショールームには高価格帯の製品を求めるお客様が多くいらっしゃっています。

ですので、高松の場合も高価格の製品を扱うお店が少なかったからこそ、高価格帯の家具を求めるお客様にご好評頂けているのだと思います。

こうした路線は、今後も継続していければと考えています。

――お客様の年代は

加藤 一概には言えないのですが、地方の例を見ていると50歳代〜60歳代の方々が多いと聞いています。

ただ、催事には30歳代のファミリー層も多くいらっしゃっています。

加藤正俊 氏

――新店舗が比較的好調ということでしたが、既存店ではいかがでしょうか。

加藤 既存店もそこまで悪くはなかったという印象です。

特に高齢者の方の増加を踏まえて、毎年トイレのリニューアルやLED照明の導入などの改修を行っていますが、そうした点で評価をいただくことも多かったと思います。

――なるほど。特に今年力を入れた製品というのはありましたか。

加藤 ここ数年はリクライニングソファに力を入れていますが、昨年から高単価のベッドを展開しており、多くのお客様にご愛用いただいております。

――他の販売店を見ても比較的ベッドは好調な売れ行きとなっているところが多いですが、貴社の場合はいかがでしょうか。

加藤 私どもとしては、ベッドよりは、ダイニングやテレビボード、学習机やソファといった主力製品の売上額のほうが高いです。

現状ベッドの売上額はそこまで大きくないですが、逆にこれがチャンスになると考え、ベッドの充実に至りました。

――ダイニングやソファの売上が大きいとのことですが、それは新しく家を建てたり、引越をしたお客様が購入にくるということでしょうか。

加藤 もちろんそれもありますが、最近は買い替え目的で購入されるお客様も増えてきています。低価格のものを使ってはみたものの、やはり質は悪いという声をいただくようになってきています。

「カリモクギャラリー」とマイスター制度に注力

――マーケティング面で注力された点はありますか。

加藤 私どももここ2年ほど力を入れていますが、店頭に「カリモクギャラリー」として我々の家具を配置して、我々ができることをしっかりお客様に示すことと、ショールームを中心とした販売促進のひとつとして、カリモクのショールームパートナーという共同販促のシステムを構築しております。

この2つに加えて、パートナー店の皆様に、当社の製品知識を当社社員と同等に習得いただくマイスター制度というものも展開しています。これ自体は一定の成果を出していますし、その強化のためにも情報システムの整備も急務だと感じております。

――そうした取り組みを始めた背景は何でしょうか。

加藤 一つは、実際に成功例があったということです。ある店舗で、カリモクギャラリーに近いことをトライアルで行ったことがありましたが、非常に坪当たりの売上も好調でしたし、これならできそうだということでより具体的な施策とさせていただきました。

ショールームでの共同販促につきましても、我々の商品が中心にはなってしまいますが、年間の売上が倍増しているパートナー店様も多く出ています。こういった成功例を踏まえて、さらにほかのお店様にも展開しております。

2016年カリモク家具新作展より
2016年カリモク家具新作展より①

――現在、製品開発で力を入れている分野は。

加藤 今年のIFFTでも出展しましたが、新しい食器棚を発売しました。今後は製品の開発だけでなく、新築需要の減少も踏まえて、我々なりにリフォームやコントラクト家具にも対応していけたらと考えています。

ハウスメーカー様とも取引はさせていただいていますが、家を建てるタイミングで我々も入っていければまた違うのではないかと思います。ただ、住宅産業は大手から地場まですそ野が広い産業なので、我々もすべてを網羅しているとはいいがたいです。

――現在加藤社長が「課題」と感じられている点はどういったものですか。

加藤 社内と社外の2面がありまして、社内では新卒採用の展開で、ある程度の数の人材は確保できるようになりましたが、若手とトップマネジメントの間の中堅社員が少ないことがネックとなっています。

社外では、お得意先となる販売店様の勢いが落ちてきていることが課題となっています。私が入社したころは、人口10万人の街であれば、面積3000m²で約10億円の年商の家具店が必ず存在していたのですが、今では都道府県庁所在地でもなければ存在しません。販売店だけでなく、お客様にとっても課題だと思います。

――設備面ではどのような取り組みをされているのでしょうか。

加藤 工場側でも生産効率を向上させるための投資は検討しております。

また販売面では、おかげ様でショールームは25カ所、営業所は28カ所を数えるようになりました。よって、残り3カ所を営業所付きのショールームにしていけたらと考えております。直営店についても、条件が合う場所があれば1、2店舗出店していきたいと考えています。

――昨今、原材料の高騰も起きているかと思いますが、その影響はありましたか。

加藤 今年は為替の変動が著しかったです。原価に合わなくなれば価格改定も考えなければなりませんが、短期的な相場だけではなかなか決められません。為替の予想ができるわけではありませんが、自分たちで対策を立てていければと思います。

技術を生かして異分野へ進出

――今年発売した製品で、特にこだわった点というのはどのような点でしょうか。

加藤 ダイニングにつきましては、軽量化と座り心地の向上に努めましたが、いずれも好評でした。

また、これまでナラ材を使っていたものの新たにウォルナットなど、お客様の好みで材質が選べる製品も導入しました。こうした製品であれば、売場のスペースの節減にもつながります。よって、ショールームの出店スピードを上げていくことが可能になると考えます。

2016年カリモク家具新作展より
2016年カリモク家具新作展より②

――デザイン面で拘った点はありますか。

加藤 特定のデザインにこだわって作るということはありませんが、20年前は社内でデザインまでしていましたが、最近は外部デザイナーとの協業も増えています。幅広い製品ラインナップを担保していきたいため、デザインの幅も広くとっていけたらと考えています。

――海外市場の開拓についてお聞かせください。

加藤 東アジアが中心ですが、昨年は韓国法人を設立し、韓国の方を採用しました。

物流面での優位性や経済の状況を考えるとアジアが主となりますが、今後も高い収益が見込まれる地域であれば展開を検討しています。

――最近では、特に中国で物価の上昇が著しく、主要都市の家賃が東京の3倍以上ということも珍しくないようです。

加藤 確かに中国ではその分お金は入ってくるでしょうが、土地を持っている人は幸せでも、持ってない人にとっては結婚して子どもをもって家庭を築くという幸せをつかむことができなくなっています。この点はバブル経済が崩壊した日本も同じです。

ただ、日本の場合は共働きが多いですから、高い家具であっても奮発すれば購入することができます。確かに日本も家賃は高いかもしれませんが、遊休不動産も増えていますので、自分たちの身の丈に合ったものは見つかるかもしれません。

――今年はどのような年にしていきたいですか。

加藤 いい年にしていくために努力していきますが、多少なりとも先行き不透明な感じは出てきています。政治や経済を見ていても2017年がどのような年になるのかを今から予測するのは困難ですので、慎重に見ていきたいと思っています。

それでも、自分たちが目標としているマーケットがなくなるということは考えづらいので、多少は背伸びした目標を組みますが、社を挙げて達成できればと思います。

――目標達成に向けて、どういった点を強化しようとお考えですか。

加藤 先ほどもお話ししたカリモクギャラリーとショールームパートナーの強化が必須です。

そのほかにも、家具販売店以外の販売チャネルも無視できないところがあり、例えば仏壇屋さん向けに仏壇を作っていますが、好調な売上を上げています。また、電子ピアノの外板も製造しています。

このように、生産設備を用いて他社と協業できる家具以外のものも作っていけたらと感じております。

――家具以外ということですと、建材分野への進出は検討されているのでしょうか。

加藤 そういった声も上がってきますが、そこまで考えていません。あくまで自分たちの木工技術やブランド力を生かせる分野に入っていければという考えです。特に先ほどの電子ピアノにも、我々のロゴが入っております。これによって、我々のブランド価値の向上も期待できるというわけです。

――今年新しく始めようと考えているものはなにかありますか。

加藤 今年に限って何かを始めるということはないです。ショールームも1、2カ所開設できたらと思っていますが、過去積み上げてきたものがあるので、それを踏襲する考えです。

いずれにしても、お客様の生活が変えられる何かを提案していくことが、ビジネスチャンスにつながると考えています。

家具を通じて顧客の嗜好を表現

――貴社が思い描く「良い暮らし」とはどういったものになるのでしょうか。

加藤 お客様各人のこだわりが生活に反映されていることだと考えます。

食にこだわる人もいれば、映画にこだわる人もいるでしょうし、これからの時代は特に若い方になればなるほどいろいろな経験をしている方も増えてきているので、お客様の思い描く生活を、家具を通じて提案できればというのが我々の思いです。

――断捨離といった言葉が現れ、最近では「持たない暮らし」を実践される方も増えてきています。そういった方々に対してはどのようにアプローチしていきますか。

加藤 10年ほど前からそうした風潮も見られるようになりましたが、しっかりとしたブランドを確立していけばついてくる顧客は存在するというのが、我々の経験からは読み取れます。

確かに服や車を持たない方は増えてはいますが、家具に興味を抱く方は逆に増えているように思えます。部屋を着飾ることによって快適な生活をするという話を聞くことは実際に増えています。それゆえ、我々の業界はチャンスがあると感じております。

こうしたものを切り口にしたSNSというものもあって、若い方がたくさん投稿されているのを見ると、長い目で見れば、そうした方々が年を召せば購買単価もより高くなることが考えられます。

――ありがとうございました。


この記事は紙面の一部を抜粋しています

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