2017年 新春特別インタビュー:池田一実 氏

池田一実 氏
東京ベッド社長

池田一実

聞く人
本紙編集部

「眠り」に注力した製品開発

――池田社長から見て、2016年のベッド市場全体の景気はどうでしたか。

池田 最悪の一年でした。消費が落ち込んでいますから、得意先の家具販売店ももちろんそれほど売れてはいないですが、ベッドメーカーも煽りを受けています。他社も含め、落ち込んでいます。裏付けとして、我々日本ベッド工業会というベッドメーカーが集まった団体の売上げ数字を見ても落としています。非常に苦しい一年でした。特に6月以降がきつかったです。異業種の社長とお話しをする機会があったのですが、アパレル、食品などでも厳しい状況のようです。

――2017年のベッド市場の景気見通しは。

池田 良くなる材料がありません。しかし、唯一期待できるのは、為替が少し円安になってきているので、輸入家具との価格の差が縮まり、家具販売店の目が国内メーカーに対しても向くようになり、国内メーカーからも仕入れるのではないでしょうか。ただそれが売上げアップに繋がるところまでいくかどうかはわかりません。

――一般消費者のベッド購入に当たって、価格、機能など新しい動きはありますか。

池田 特に変わりません。11月に東京ベッドでは新作展示会を行いました。コンセプトは「原点回帰」です。初心に戻ろうということです。我々はベッドメーカーですが、知らず知らずのうちに価格競争に巻き込まれていました。本来のお客様のニーズであるお客様が良く眠る、気持よく眠るといった部分が弊社だけでなく、他のメーカーさんも含めておざなりになっていました。ですから、価格ではなく、ベッド本来の機能を追求した製品開発をし、展示会で披露しました。

――反応はいかがでしたか。

池田 おかげさまで、製品コンセプトがハッキリしているということで得意先から評価を得られました。年明けからの販売に期待ができると思います。

低価格でベッドを購入できるという市場の影響もあり、日本の家具市場の単価自体がすっと下がっていました。海外や低価格帯の販売店になんとか対抗するために、少しでも安いものを作ろうとする傾向がありました。なんとか乗り越えようとするなかで、消費者の睡眠が10年前のベッドと今のベッドとで本当に睡眠に対して上質なものを提供できていたのかと私の中で疑問が生れてきました。お客様のニーズ自体は変わっていないと思いますが、メーカサイドの都合で、市場の環境もあり、なんとなくいいものから安かろうになってしまっていたところを再度見直して、しっかり眠れることや腰も痛くならないといった数字的なデータ根拠をもとに製品開発をしていこうとしています。

――一般消費者は東京ベッドがフランスベッドの子会社であることを認知していますか。

池田 99%知らないのではないでしょうか。弊社としては特にフランスベッドと関係があることを一般消費者に知ってもらうべきだとも考えていません。

インタビュー時

――東京ベッドとフランスベッドとでは流通ルートの面で相違はありますか。

池田 現在は8割から9割が家具専門店とのお付き合いです。かつ地域は関東の商圏のみです。数年前から首都圏特化型でやっています。以前はコントラクト分野もやっていたのですが、2、3年前に千葉の工場で火災があり、全焼してしまいました。工場が一カ所のみですので、家具専門店にしか供給できない体制になり、縮小せざるを得なくなりました。現在も以前納入していたホテルの方から問い合わせがあります。火災前と設備が違いますので、製品によっては対応できず、お断りする場合もありますし、フランスベッドを紹介するなど対応させていただきます。

――狙う市場の面で相違はありますか。

池田 お互い家具専門店で同じ市場を狙っています。

価格面は、弊社はミドルの上からアッパー層ではないでしょうか。安い製品ですと生産や利益が追いつきません。近年は良いものをしっかり売っていこうという営業体制にしています。そのため、結果的にアッパー層になりました。フランスベッドは幅広い価格帯ですね。

――フランスベッドは医療、介護、ホテルなどのコントラクト分野に力を入れていますが、貴社はいかがですか。

池田 コントラクトにも注力したいのですが、できていません。ホテルは狙っています。弊社は主に首都圏に特化していいますので、地方より狭い住宅環境に対応できる製品作りに力を入れています。その中でも「跳ね上げ式」というベッドがあり、そのベッドフレームの中に収納できるベッドがあるのですが、価格的にも製品的にも評価をいただいており、一番売れています。都心は間取りも狭いので需要は高いです。個人のお客様のほかに、社員寮や学生寮などのコントラクト分野からも引き合いをいただいて、少しずつ納品しています。

グループ全体で海外市場開拓へ

――御社とフランスベッド間で開発、技術、生産といった面で提携あるいは交流はありますか。

池田 特に交流はありません。製品もサービス、物流なども独自で行っています。連携した方がメリットもあるかもしれませんが、個人的には交流しすぎてしまうと独自性が無くなると考えています。製品が似たり寄ったりになってしまい、弊社から買う必要もないでしょう。

マットレスの見た目は殆ど同じなのですが、中身が異なります。フランスベッドは一本の針金を使用した立体的な連続スプリングですが、弊社はポケットスプリングを使用しています。そうして、お互いが独自性を持って、やってきています。

製造面についても中の構造が異なるため、生産ラインが異なります。ただ、お互いの工場見学を行い、勉強しています。手前味噌ですが、フランスベッドよりも弊社製品の方が品質は良いと思っています。そこは自信を持っています。この間、東京都環境局の方に「東京ベッドのマットレスの方がガチガチにしっかり造ってあり、一番壊しにくい」と言われました。

――東京ベッドとして、海外市場開拓はどのように考えていますか。

池田 東京ベッドとしてではなく、フランスベッドホールディングスとしてグループ全体で、海外戦略に力を入れています。海外輸出を狙っています。フランスベッドという社名は、海外の方にとって、日本の会社だとわかりません。そのため、弊社の社名とブランドを使用して、展示会に出展しています。連携をとって、海外市場を開拓しています。

最近は海外の売上げが伸び悩んでいたので、ここ2、3年で海外の展示会に出品したり、営業をかけたりしていました。取引先も増えてきて、少しずつ芽が出始めています。

特にマットレスに力を入れています。タイの展示会にベッドを出品しました。ベッドフレームは国々の文化によって好みが異なりますので、木目のフレームはあまり反応がありませんでしたが、マットレスは反応が良かったです。根強い「メイドインジャパン」という品質の良さへの信頼に食いつきが良かったですね。ベトナムのダナン、モルディブといったリゾート地の人々から見積もりを求められました。その中で、台湾へマットレスの納入が初めて決定しました。

――2017年の経営方針は。

池田 「打って出る」です。11月の新作発表会がすごく反応が良く、それらを徹底的に販売していこうと考えています。他社との競合ではなく、独自路線で得意先、エンドユーザーに対して、訴求していく方針です。まず、眠りを体感していただく。どう眠りに良いのか営業担当者が説明できる製品となっています。消費者にとって、何が良いのかということを訴求していきます。


この記事は紙面の一部を抜粋しています

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