2017年 新春特別インタビュー:中田裕人 氏

中田裕人 氏
国土交通省 土地・建設産業局不動産業課長

中田裕人

聞く人
長島貴好(本紙社長)

都市環境と国民の暮らしなど総合開発行政

長島 不動産業課は、土地の行政を担われるのか、また開発など総合的都市環境、生活環境を含む総合とも思われます。土地政策。日本は活火山が列島を走っていて「住めるところ」が少ないですね。そうした国土面積で不動産は貴重財です。そこで中田課長さんが取り組まれている現状と、今後志向する政策課題についてお話しください。

中田 私どもの担当する不動産業課ですが、デベロッパーとして不動産開発をされる方々、宅地建物取引として流通に携われる方々、ビル等の管理をされるような方々など、幅広い方々が関係します。非常に事業基盤が大きく、我が国経済の基盤となる産業です。不動産業は就業人口でいうと約3%ですが、GDPでは約12%を占めていて、我が国にとって大変重要な産業です。

特に最近は不動産投資の分野が活発です。Jリート(J-REIT)の市場も広がっていますし、不動産業は今後の成長が強く期待される分野かと思います。私は昨年7月の異動で担当課長になりましたが、不動産業は裾野の広い、この国の基盤産業の一つ。日本の経済をどういうふうに強化していくか、あるいは地域の活性化をどうして進めていくかを考えた時に、欠かせない産業だと思っています。

インタビュー時

地域と経済を元気にする「場」の産業となることを目指して、日々の仕事に取り組んでいます。不動産という「場」を核に、いろいろなサービスが展開されることで、経済を強くし、国民生活の向上に繋げられるよう、取組を進めています。

長島 財団法人に日本専門新聞協会の役員仲間に不動産経済研究所の役員がいて、施策の一端は伺ってきました。

中田 最近の大きな話題に、既存住宅流通市場の活性化があります。既存住宅を売買するときに、宅建業者が仕事されるんですが、例えば、買い主が「本当にこの不動産は大丈夫か」と不安になることがあります。

安心なお取引を確保することが大事なことから、2016年の通常国会で宅建業法の改正が行われ、インスペクション(建物状況調査)に関する手続が導入されました。媒介契約時における宅地建物取引業者から売り主等へのインスペクション業者のあっせん、インスペクションを実施した場合の重要事項説明などが定められています。安心して不動産をご購入いただくことが可能となりますし、その後の適切な維持管理や的確な資産評価などが行われるようになることで、流通市場が一層活性化し、資産の有効活用に繋がると考えております。

長島 政策の流れというか、現状は分かりました。だいぶ見えてきました。我々家具インテリア業界でいうとコントラクト、ホームユースがあります。商業施設、介護や養老施設、また行政施設などいろいろありますが、都市開発の場合は、片一方では森ビルが大きな総合開発の建築物を建てるとか、また東京五輪の有明の施設などがあります。

一方、細かいことではマンション管理、集合住宅、戸建て、これを包括した話がありますね。しかし、究極は住居の話になりますね。

中田 今のは住宅の話なんですが都市で言うと、コンパクト化の中で都市の機能をどう向上させるか、都市力をどうアップして人を呼び込むのかという大きな課題があります。例えば街の再開発等を進める際に、私どもの方は税制上の優遇措置を制度や予算的な支援を行う、全体のまちづくりを見据えながら取り組んでいくというのが、不動産業のひとつのテーマになります。

長島 今までいろんなところで見えなかったところとや不安だったところ、そして不動産流通の信用の裏付けがなかったところを不動産業課が施策カバーされているわけですね。

不動産関連業と家具業界の連携を

中田 透明化だけではなくて、安定的で安心な流通システムが大事かと思います。また、開発については、売買等の流通とは若干取り組みが違いますが、官・民連携し、まちづくりを進めることになろうかと思います。官は今の時代に沿った街づくりの後押しをする、そういうことに力を入れているということです。

長島 我々の業界に関わってくることで、アメリカでは家を購入して何年住むか分かりませんが、聞いた話では「一生の間に7回住み替える」というのがありました。その場合、いままで住んできた家を購入価格よりもいかに高くして売るかと工夫がされるということです。

すると平素の手入れから始まって「アメリカのような不動産売買、住宅売買が、中古市場で行われれば、我々家具業界も活性化する」と業界人が口にしていました。日本の場合だと国交省、住宅局、あるいは不動産業課の中田課長さんのところでも最初のそもそもが「供給論」ですね。いかに入手し易い価格設定で、住まいの価値を普遍化させていくかというテーマです。

インタビュー時

中田 昔の土地神話のように「土地を持っていたら上がる」とか、そういう時代では今はなくなっています。したがってその土地をどう活用するかという視点で、例えば不動産投資の世界では、土地等を資産として保有するために投資するのではなくて、当該賃貸ビルの収益状況を見て、利回り等を考えて投資する。バブル時のようなキャピタルゲインだけを狙ったものではなくなっています。

空き家とか空き店舗がある中で、「今ある資産」をどれだけ有効に活用することができるか、それが大事になっています。

長島 いま頭に浮かんだんですが、中田課長さんのキャリアですが、い私がご縁を得たのち3つのセクションを歩んで来られました。課の名称からみても繋がっていて、つまり「安心居住推進課」からはじまって、「不動産市場課」では不動産のマーケット行政の話になって、今度は「不動産業課」です。川上というか(笑)上流に向かわれている。

中田 いずれも密接に関連する分野なので、私的にはすごく勉強にもなりますし、やり甲斐も感じます。いろいろな方々に教えていただきながら、皆さまのお役に立てるよう、自分なりにできるワールドを広げていければと思います。

長島 ひとつ教えていただきたいのですが、不動産業の世界も、家具業界のようなどっちかというと業際的な生産・販売・卸、あるいは資材とか機械とか、縦割りの業界区分があるのでしょうか。

中田 一口に不動産業といっても、さきほどの都市開発等を主なビジネス分野とされるような大手デベロッパーの世界もあれば、不動産の仲介等をされる宅地建物取引業、不動産の管理を行う管理業など、幅広いビジネスを展開されています。

不動産に関連して、今は多くのサービスのニーズもあります。例えば、地域の宅建業者さんのところへ不動産を探しにこられたお客さんは、例えばどこかいい介護支援サービスの事業所が近くにないか、子育支援の保育所はどうかなど、いろいろなご質問をされます。

私どもは、不動産業が、地域のなかで不動産関連の各種サービスで頼りにされるような、そういう地域の「場」の産業という形で活躍の場を広げていただくことが、地域と経済を元気にする産業として発展につながると思っています。先に家具の話がありましたが、住空間に置かれる家具が生活を豊かにするように、不動産を仲介する際にも各種サービスをご案内できるようになればと思います。

家具販売業者さんがその地域にあったら、そこと同地域の不動産屋さんと連携することによって、地域の皆さんによりよい情報とサービスが提供できる。食べ物や日用品を販売するコンビニにように、不動産まわりの総合サービスができるようになれば面白いと思います。

そうなれば地域の方々に愛されるでしょうし、業界の方々も地域に貢献してビジネスを展開できる、そうした好循環で発展していくのではないかと思います。

長島 端的に言うと経団連じゃないけど、やっぱり「暮らす」とか「住まう」とかいう視点で総合的にグランドの結集をする必要があります。問題は国民の住生活とか日々の暮らし、コンパクトシティならコンパクトシティを目的とする、快適な住まい易さ、暮らしやすさですね。子育てもあります。そういう面でもう少し見やすい行政、トータルで効果的な行政の場、民の事業グランドを結集したものが必要ですね。現実には我々自体もまとまらないんですが。

中田 日々のビジネスで皆さま大変だと思うんですが、そういう方向を向いて一歩二歩変えていくことが大事だと思います。少子高齢化で人口が減って大変だと言う方もいますが、実は高齢化の中で元気な高齢者の方も増えています。一説によると20歳から60歳の余暇時間と、60歳から80歳の余暇時間って一緒なんです。

10万時間くらいあると言われています。そうした時間で、元気な高齢者の方で仕事をされる方もいらっしゃいますし、自分の趣味とか、いままで出来なかったことに取り組まれる方もいらっしゃいます。そういうことに上手く応えられるような産業というか、環境をつくっていくことで、より人々の活動も広がるし、経済的にもGDPの向上に繋がっていくのではないでしょうか。自分自身もそうですが、「こういうことしてみよう」ということで人生も豊かになりますね。「ああ日本に生まれて良かったな」って、思っていただける方が一人でも多くなるということが、私の仕事的にも大事だし、個人的にも嬉しい。前向きにいろんな取り組みを進めたいと思っています。

長島 志向する政策課題というのは、いま言われた様に「国民がいかに幸せになっていくか」ということですね。もとより千差万別はありますが。共通するニーズに応えられることです。

中田 いま生き方も多様化していると言われていますので、それにちゃんと応えられるような、そういう国づくりと国民生活への取り組みを進めたいですね。

インタビュー時

長島 GDPの向上につながるような、いい面での個人消費の向上です。そうしたマーケットに対して住生活産業が対応していくことです。次に私からのテーマは、家具製品を作って販売することから「暮らしをより快適にすること」ことです。こういう視点は前の国交大臣太田昭宏衆議院議員もコンパクトシティに関連してよく話をされます。中田課長さんも何回か我々新住生活研究会など話を伺ってきました。実際に行政の立場からみられて、家具インテリア業界はもうちょっとこういう方向に動き出したらどうかという点はありませんか。

観光客へ民泊など和の暮らし文化を発信

中田 業界の皆さまもいろいろお考えだし、取り組みもされているので、いまおっしゃったようなところを、どんどん進めていくことだろうと思います。私は2年ほど前に「サ高住」の担当をさせて頂いてますが、いまは「民泊」の担当でもあります。

それで、例えば外国人観光客がいっぱい来られてますけど、昨年度で2000万人超えて、2020年には4000万人という目標を掲げているんですね。こういったことへの対応の中で、実際でホテルもどんどん数が増えていますし、それだけではまかなえないところもあるので民泊という話が出ています。

サ高住の時もそうでしたけれど、サ高住にお住まいいただく際に必要な家具インテリアという話もあります。同様に、今までの住宅を民泊にして宿泊者に提供する際には、やっぱり備え付けの家具とか、備品とかが必要になると思います。それ一つとっても、家具インテリア業界と、住宅業界、不動産業界とが上手く連携していくことで、宿泊者にとっての魅力も高まりますし、地域の経済的な潤いにもなります。

そして、新しい街づくりにもつながる。家具インテリア業界さんと、不動産業界、これから一層つながりが深まっていくのではないかと思います。そういう意味で非常に期待をしています。

長島 いまお話を聞いいていて、我々の業界はどうかというと、それぞれ大手が個別に案件に見合った担当者を置きながら、コントラクト関係で、細かい対応をしてきました。実は業界としていうと、真ん中に森挟んで、向こうを透かして見て、ただただ声が掛かってくるのを待つという図式でしょうか。

中田 私が思いますのは、例えば、訪日外国人向けに、日本の伝統的な雰囲気を楽しめる木製の家具を備えた部屋にしようとする経営者もおられます。最近「古民家」などを改装して旅館にし、外国人の方の利用が増えているとの話も聞きます。古民家や空き店舗等の再生に目を向ける方も増えています。

そういうところで、単に安い、出来合いのものを置くというのはなく、やはり伝統がある和風の家具とか、そういうニーズもどんどんと増えていくると思います。我々の仕事というのは、不動産がらみなので、そういう古民家の再生だったり、空き家、空き店舗の再生だったり、こういったところにどういう手立てを行うかということを考えています。予算的な支援、制度的な枠組みづくりなどをさせていただいています。

住生活ニーズに対応して家具需要を拡大

長島 住宅流通、デベロッパ関係、旅館・ホテルとか、さらには住設関係とかですね。そうした関係の5業界くらいで、パネルディスカッションやったら面白いと思いますね。

中田 そうですね。街の付加価値であり、建物の付加価値であり、部屋の、空間の付加価値であるという、それを相互に関係業界が連携することで、チグハグ感がなくなって、より全体の付加価値を高めることにもつながりますね。

長島 いまお話を聞いていてヒントを得たんだけど、ギアが噛むように、今までは別ギアだったのを噛み合わせてたら大変な動力になると思います。

中田 同じように地域の振興や住生活環境の向上でも、マイナーチェンジではないですが、ちょっとしたカスタマイズを加えることで、各地域にふさわしい形で発展できる可能性があります。各地域の個性が光り、豊かなサービスを受けられる、そういう素敵な住環境の国になりますね。

長島 不動産業課というところに、いろいろな要素、栄養剤を注ぎ込んだらいいですね。お忙しい所を有意義な話を伺いました。有り難うございました。


この記事は紙面の一部を抜粋しています

国土交通省

ホームリビング/寝装ジャーナル 購読に関するお問い合わせはこちらから