2017年 新春特別インタビュー:安井雄悟 氏

安井雄悟氏
安井家具株式会社常務取締役

安井雄悟

聞く人
本誌編集部

各方面の協力があっての2016年

――米国大統領選挙などもあり、政治や軍事などあらゆる面で、昨年は大きな変化が多く起きた年でした。昨年一年を振り返って、どのような一年だったとお考えでしょうか。

安井 本店のリニューアルオープンから1年を迎えましたが、1周年記念セールを行ったところ、多くのお客様にご来店いただきました。その間、大変多くのお取引先や協力会社様にもご協力いただきました。1周年を迎えた本店のみならず、社としても本当に多くの方々に支えていただいた1年となりました。

――会社の業績としては、いかがでしたでしょうか。

安井 愛知・岐阜・三重に店舗を展開していますが、10月までの当地区における住宅着工戸数は、昨年よりも若干ですが増加傾向にあると言えます。特に低金利になっているので、消費増税の反動があった昨年より、状況は改善されているとみていいでしょう。

それでも、依然としてお客様の買物に対する慎重な様子は、店頭でもうかがえます。

安井雄悟氏

――特にどういった商品が好評でしたか。

安井 特にこれが好調というものはありませんが、ベッドフェアなど、さまざまな企画を行ったところ、買い替えや新築住宅用に販売量が増加したということがありました。

――そういった企画は、今までに比べてどこか変化をつけられたのでしょうか。

安井 今までの企画としては例えば数量限定の目玉商品を打ち出したセールもありましたが、短期的には利益をもたらしても、「商品を安売りしている店」と企業イメージが固定化してしまう恐れがあります。

逆に長い目で見れば、良い商品、良いサービスを提供していれば、そこからイメージが生まれてきますので、そのイメージの実現に向けて方向転換を図っているところです。

――安い商品が主流になっている現在ですが、逆に高くて品質のいい商品も一定の需要を保っていますね。

安井 ですので、我々としてもお客様にいい商品を提供していく必要があると考えています。

例えば寝具にしても、使うことで健康を保てる商品をという声が高まっています。そうしたお客様に対しても受け身ではなく、寝具だけでなく室内照明も見直してみてはどうかというかたちで、寝具や関連商品の提案を行っています。そのようにして、前回のベッドフェアもご好評いただけました。これからは新生活のシーズンになりますが、新たに一人暮らしを始められるお客様に向けて、お部屋に必要なものをリーズナブルな価格でご提案できたらと考えております。

――種々の企画も時期やスタイルを見直したことで好評を得たということですね。

安井 先日も60歳代のあるお客様がいらっしゃったのですが、それまでベッドで寝ていたものの、腰が痛くなるということで、ソファで寝ていらっしゃるということでした。むろんベッドのおかげで病気が治るわけではありませんが、24時間のうち6、7時間を占める睡眠という行為の中で、より疲れをとっていただけるような商品をということで提案をさせていただいたことがあります。

モノは充足していますが、睡眠不良のみならずヘルニアなどお客様の様々な課題に対して解決策を提示することが我々には求められていると、考えています。

――ベッドひとつにしても、本来の睡眠という用途を超えて、これを使えばこうした生活が実現できると提案されたということですね。

安井 こうした提案を続けていくことでお客様と信頼関係が生まれてきますし、新たなお悩みも共有できるはずです。そうした継続的な信頼関係の構築に尽力していきたいです。

課題解決型の店舗企画の実践

――逆に今年一年で課題に感じた点はどういったものになりますか。

安井 課題は多いですが、来店されたお客様も、店内を回られて自由に試され、店員がご提案を行ったうえで、この人から買いたいと思われて購入されるケースもありますが、一方で他をあたりますというお客様もいらっしゃいます。我々としましても、研修等を通じてお客様にご満足いただける接客の実現を図ることが課題のひとつです。

私も研修担当として、ファニチャードームアカデミーで定期的な研修を行っており、商品知識をはじめ接客マナーなどを指導しておりますが、一人でも多くお客様に喜んでいただけるようなスタッフが生まれてくればという思いです。こうした研修には年間のべ約600人の社員・パートナーが参加しています。

ファニチャードーム本店・オリエンタルスタイル
ファニチャードーム本店・オリエンタルスタイル

――話は変わりますが、消費増税の延期や英国のEU離脱、米国大統領選挙で相場が上下した年でしたが、貴社にも何かしら影響はありましたか。

安井 前回の増税時には、駆け込み需要で多くのご注文を頂きましたが、配送がひっ迫するなど弊害も大きかったです。その後はやはり反動がありましたが、そのような大きな波を回避できたのは、当社にとっては好都合であったと思います。

ただ、実際に増税が行われると、家具のように経済に影響されやすい耐久消費財の売れ行きが落ち込むことが予想されます。ですので、顧客満足度の向上と同時に、ホームファッションやバス・トイレタリーといった雑貨類を強化していくことで、安定した営業活動ができるよう尽力してまいります。

――多くの企業がホームファッションを展開していますが、貴社のホームファッションの特徴というのは、どのようなものになりますか。

安井 家具というのは、同じものを7、8年近く使うものですが、カーペットやキッチン用品など、季節や好みに応じて生活の中に変化をつけて楽しむことができる商品をホームファッションと位置付けています。

――家具ももちろんですが、生活雑貨の方にも注力されているという認識でよろしいでしょうか。

安井 はい。店舗によっては家具と半々、標準的な店舗だと家具と比して3対2程度の割合で扱っていますので、平日はじめ、年末や春の新生活の時期には売上構成も高くなります。

――昨今原材料の高騰も起きているかと思いますが、影響はありましたか。

安井 販売価格自体はそこまで変化していませんが、為替が円高になったため、輸入はしやすくなりました。ただ他のコストが増えてしまっているので、販売価格に反映するまでには至りませんでした。

今は円安に振れていますが、最近は日本はじめアジアの国々の境目が低くなってきています。特に中国や東南アジアなどといった国々は日本から距離も近いため、日本に限らずそうした国々に生産拠点を設けてお客様の満足のいく商品を作っていこうという動きはしばらく続くことでしょう。

――特にアジアの国々は日本に勝るとも劣らぬ品質の製品を製造するようになってきています。

安井 昨年もベトナムや中国などの展示会や工場を回る機会がありましたが、価格優位性の高いアジアの家具も、日本の消費者の使いやすさや品質に合致したものも多く見受けられます。従来の安さだけではなく、より品質の高いものを作る方向にシフトしているといえるでしょう。

我々としても国内・海外のお取引先様と協力して、より高品質で求めやすい価格の商品を提供できるよう最善を尽くしていきます。

――ちなみに貴社は海外に拠点を持たれているのでしょうか。

安井 出店はしてみたいとは思いますが、なかなかできないでいます。

GMSや百貨店、アパレル、均一価格ショップなどの小売店が進出されていますが、アジアの国々はこれからかつての日本のように中間所得層が増え、購買力も強力になっていくものと見ています。それゆえ、日本の小売業としても、出店する価値はあるといえるでしょう。

――家具業界で実際に進出している企業はまだ少ないですが、それだけにチャンスはまだ多いですし、進出すれば難易度に見合うものが得られるということでしょう。

安井 海外に進出した日本の飲食店も現地で好評を得ています。かつては自動車や電化製品といった日本のメーカーが海外に進出して日本ブランドの構築に寄与していましたが、今後は小売業やサービス業の進出も求められてくることでしょう。

より信頼される店舗作りを推進

――ここまで、2016年の振り返りが多かったですが、今年一年はどういった年にしていきたいとお考えでしょうか。

安井 本店も開店から3年目を数える年になりますが、これまでの路線を踏襲しつつも新たな企画にも挑戦し、中部地区のお客様により信頼される店舗作りを目指していく所存です。

新たに始めた事業としては、デザインセンターにおけるリフォーム・造作家具、コントラクト家具への対応があります。従来のお客様をお店で待つスタイルから脱却し、お客様の住空間を変えていけるような事業分野に踏み込んでいき、実績を積んでいきたいと考えております。

――既製品ではなく、よりお客様のご要望に合致するようにということでそういった事業に挑まれるということですね。

安井 施工を含めてお客様の思いをかなえられるようなインテリアの提案ができるよう、我々としても進化を遂げていく所存です。

――リフォームについてもお話しされていましたが、これは協力会社と展開していくのでしょうか。

安井 そうですね。協力会社様と共同で商品を展開したり、実際の施工をお願いする形になります。

お客様には、お店で実際に施工例をご覧頂けるようになっております。

――そういった中で貴社が窓口となって、工程管理等を行うということですね。

安井 そうですね。今現在は収納や窓周りなど、比較的低予算でできるインテリアリフォームの展開に注力しております。まずは家具に近いところから入っていって、家具も含めてリフォームいただければという思いです。

――基本的にリフォームは一戸建てを想定していますか。

安井 マンションでも収納の補強や、中古マンションのオーナー様がリフォームをしたいということでご相談を受けることもあります。

――店舗の拡大はご検討されていますか。

安井 2017年の4月に本店がある金城ふ頭にレゴランドがオープンします。年間200万人の方が来場されるという予想が出ていますので、本店としましても、お子様連れの方の来店を想定して、子供向けのインテリア商品の充実や地元で生産された商品の販売などを行う準備を進めております。そのようにお客様に喜んでいただけるお店作りを目指します。

――本店での取り組みが他店舗にも波及するということも期待できそうですね。

安井 基本的に本店のファニチャードームは30歳代〜40歳代のご家族連れのお客様をメインのターゲットとしていますが、こうした若い方々に向けたスタイル売場も展開していけたらと思います。今ですとアメリカンビンテージの売り場が好評ですね。

――若いお客様も、ホームファッションをお求めの方が多いのでしょうか。

安井 特にカーテンやカーペットは多いかもしれないですね。例えば新しく一人暮らしをされるのでカーテンを購入しに来た方や、お子様がいるので洗えるカーペットをという方も多いです。

――そういった中で、特にラインナップを強化していきたい商品はありますか。

安井 先ほどもお話ししたように、当社もホームファッションに力を入れておりますが、競合店舗の増加も考えて、商品ラインナップだけでなく、販売管理や接客など、総合的に強化することで、より選んでいただける売場作りを推進していきたいです。

特に販売のための商品やコーディネート知識ですとか、季節を踏まえてどのように商品を入れ替え、売場を展開していくかということがまだ販売の現場に立つ従業員には十分に浸透していないと思いますので、社員教育も引き続き強化できたらと思います。

――特に販売サイドでのお考えを中心に伺いましたが、一人の生活人として、安井さんは今後我々のライフスタイルがどのようなものになっていくとお考えでしょうか。

安井 少し関係のない話になるかもしれませんが、私はランニングが好きで、先日雑誌を読んでいたら、モニターにコースの風景が映って、走ると景色が変わっていったり、離れた場所にいる他の仲間と一緒に走ることもできるランニングマシンがあるということを知りました。特に体を動かすのが好きな人に好評になるのでしょうが、最近はあまりものを持たない代わりに、体を動かしたり、友人など人と集まることにお金を使う人が増えているように感じます。

我々も商品ありきで商売をしがちですが、我々の商品がお客様や、そのお客様のもとに来た別の人を楽しませるようになるのだと思います。先ほどアメリカンビンテージという話もありましたが、例えばサーフィンが好きな人に向けてサーフボードを飾った部屋を提案し、部屋の中なのに海の近くにいるような気持ちになってもらうなど、単に座るとか寝るといった機能だけでなく、お客様がより楽しんでいただけるようなライフスタイル構築のお手伝いができたらという思いです。

――ハロウィンになると渋谷に多くのコスプレをした若い方々が集まりますが、そうした風潮は確実に生きているのかもしれないですね。

安井 我々の店舗でもハロウィンのシーズンになると、ハロウィンコーナーを設けてカボチャを飾ったり、近づくと動きながら声を出す魔女の人形をディスプレイしています。また、子供のお客様に向けて、店内でカボチャのバッジを付けたスタッフを見つけ出しカードをもらい、全て集めるとお菓子をプレゼントしたり、ハロウィンの衣装を着て写真撮影ができるブースを設置するなどの企画を行っています。

ファニチャードーム本店・2階のフロア展示
ファニチャードーム本店・2階のフロア展示

――商品を買った後はもちろん、買う前にも楽しんでいただけるということですね。

安井 インターネットショッピングでは味わえないような経験を、お客様にも味わっていただければと思います。

こういった企画も若手の従業員がどうしたらお客様を楽しませることができるかと企画してくれるもので、時期によって様々な企画が行われています。

インテリアを通じてお客様の生活を豊かに

――お客様にとって非常に魅力ある店舗づくりをされているのが伝わってきますが、逆にこれからの1年で課題に感じられている点はどういったものでしょうか。

安井 これだけインターネットやスマートフォンの利用が増えている中で、当社としても販路の拡大や店舗における買物を補完する意味でもEC(電子商取り引き)サイトの必要性を感じ、開設の準備を進めております。

ただ、そうなると店舗においては、実際に商品の使い心地を試すことができる売場作りやコーディネートなどの専門知識を持った販売スタッフの教育など、来店して頂くだけの価値を提供できるよう今まで以上の努力が必要となります。

――服などと同じく、家具も実際に使い心地を試さなければわからないことも多いですね。

安井 お客様は、スマートフォンを使って商品仕様や価格を比較する事が簡単に出来るようになっています。

ですので、品質の良いオリジナル商品を開発し、増やしていくことも必要だと思います。店舗とECサイトを結びつけ、お客様にとって便利で利用しやすい環境を作っていくことが課題です。

また、ECサイトのみならず、住宅購入と併せて家具を購入されるお客様も多く、販売チャネルも多様化しています。

そんな中でも、店頭でよりお客様に近い立場で販売し、店舗にいらしたことで楽しんでいただけるような販売体制の構築は重要といえるでしょう。

――最後の質問になりますが、2017年のさらにその先を見据えて、貴社をどういった企業にしていきたいとお考えでしょうか。

安井 もともと愛知県でタンスの製造から始まった当社ですが、変わらないのは地域のお客様の住生活をより豊かにしていくという使命です。近年はお客様が各人の好みに応じてお部屋を作っていく時代になってきていますので、我々としても、そうしたお部屋づくりのお手伝いをするために、置き家具だけでなく、リフォームやオーダー家具など新たな分野も強化していければと思います。加えて季節や気分に応じて変えていけるホームファッションも充実させていくことで、よりお客様に選ばれる企業になっていければと考えます。

――本日は誠にありがとうございます。


この記事は紙面の一部を抜粋しています

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