【電通・鬼十訓に見る深意と深情】

――大きい仕事は人格と器を創る

 くどいようだが、鬼十訓は電通の社員に当てた吉田秀雄社長の人生訓、仕事上の箴言だった。大きな仕事とは、後世に残るような事業を創造せよ、ではない。よくある事例だが、いかなる商売の現場でも、また、事務管理職であっても、時に自分の手に余る、もしくは上司の許可、アドバイスを要するものが絶え間ない。その場合の多くは「私にはできない」「どうしたらいいか」という自己の限界を口にして、その任務を放棄することだ。
 実はここからその社員の「並みの人生が始まって」いる。特上、上、並みと食事区分にあるが、下手をすれば並みすら放棄する世の中になった。鬼十訓でなくとも、当然、雷の落下となるだろう。そういう社員に限って、自己所得の低さをぼやく。
 次元の低い話をかいたが、冨士登山なら頂点を目指して自分のベストを尽くして七合目が上出来だ。同時にスタートして裾野を二時間上って、よくやったと自己を慰めているものは一生三合目も上ることはできない。
 第三訓の箴言は「一を与えられたら三を、三を与えられたら五を、五なら十を目指しなさい。その努力と智慧が、貴方の一生に他の人の十倍、二十倍もの力と人格を身に付けて、そして与えられるだろう」という教えにほかならない。
(2021年3月15日号紙面より)

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