クラフトシップス(東京都港区、森川義仁社長)は2026年1月8日、石巻工房の代表作の一つ「AA LOW STOOL」に、京都の黒箔、福井・鯖江に受け継がれる拭漆、吹付塗装の3技法を施した特別仕様の限定モデルを発表した。色は多色展開を行わず黒に統一し、同一造形の一部に加工を加える構成とすることで、艶の質、黒の深度、木目の現れ方、触感の違いを技法ごとに可視化する狙いを示した。
ベースとなる「AA LOW STOOL」は、東日本大震災後の復興過程で生まれたスツールで、TORAFU ARCHITECTSの鈴野浩一氏がデザインした。横から見るとアルファベットの「A」に見える造形を特徴とし、分割して横方向にスタッキングできる設計とする。ばらして天板を載せ、ディスプレイ用途に転用するなど、使い方を限定しない点も強調した。
仕上げのうち黒箔は、金属の化学変化を制御して奥行きのある黒を表現し、光の当たり方で陰影が揺らぐ表情を持たせる技法として位置付ける。拭漆は、漆を塗って拭き取る工程を重ね、木目を生かしながら黒を定着させる手法で、厚塗りでは得にくい落ち着いた艶と、使い込みに伴う風合いの深化、日常使用に耐える耐久性の両立をうたう。吹付塗装は、越前漆器の生産現場で培われた均一性と再現性を強みとし、下地処理から研磨、顔料ステイン、黒顔料を含む塗膜形成、仕上げ磨きまで複数工程を重ね、鏡面に近い艶と奥行きを表現するとしている。
企画背景として同社は、地域ごとに育まれてきた職人技術が、量産化や均質な仕上がりの志向の中で、暮らしの中で意識されにくくなっている点を挙げる。装飾として技法を重ねるのではなく、素材と向き合う過程で生まれる差異を、日常の家具を通して体感できる形にすることを企画の起点とした。色を増やさず「黒」という共通条件を置くことで、技法がもたらす差を輪郭化し、使用を重ねる中で触感や経年変化を通じて違いに気づく体験を価値として提示する。
展示・販売は、銀座三越 新館7階 催物会場で開催される「CRAFTED CONNECTIONS」で行う。会期は2026年1月14日から1月19日まで、営業時間は10時から20時(最終日は18時閉場)。受注生産品として扱う。




