ブルム総代理店デニカ社、新ショールームを開設 家具、住設製品の新たなひらめきを与える場に

オーストリアに本社を構える家具金物の大手メーカー、ブルムの日本総代理店であるデニカ(千葉県船橋市 八田和之社長)は、今年8月、「ブルム・インスピレーション」と題したコンセプトのもと、ショールームをリニューアルオープンした。中には、収納やソファ、テーブル、キッチンなどが展示されており、いずれもブルムの金具を使うことで、どのような付加価値や新機能を付与できるかを展示しており、プロユーザーをはじめとしてエンドユーザーに製品、ならびにライフスタイルのインスピレーションを与える空間となった。

ブルムは、年間3000億円を超える売上高をもつ世界的な家具金物メーカー。2000を超える特許を有し、世界中の暮らしについて研究を進め、生活動線や人間工学に基づくアプローチで製品開発を行っている。

新ショールームは、ロングランの製品と新製品を中心に取り入れており、キッチンなどの住設メーカーをはじめ、家具メーカー、木工屋、建築家、デザイナー、そしてエンドユーザーといったあらゆる層に対して、自社金具の持つポテンシャルを訴求していきたい考えだ。

スペース活かす収納、狭小化進む都市部を意識

ショールームの入り口左手には、玄関を想定した収納が設置された。スペースの限られた居住空間を想定した提案で、例えば、靴やハンガーをかけるレールはスライド式になっており、必要に応じて収納スペースから外部へ引っ張り出せるようになっている。収納スペースの容量を減らすことのできる工夫だ。また、収納の最下段には、「スペースステップ」と同社が名付ける機能も盛り込まれていた。

スペースステップとは、高所の収納スペースにアクセスするための踏み台で、収納の最下部に設置、必要に応じて引き出して使う。さらには、踏み台は上蓋の役割も担っているため、その下にも物を収納することができる。また、この玄関収納には特殊な「155度ヒンジ」が用いられ、収納内部のスペースに扉が干渉しない構造になっており、これにより収納の容積効率を最大限高めることができる。

我が国においても、原料資材の高騰により建築コストが上昇し、都市部を中心として住宅価格の上昇や、居住スペースの狭小化がみられるようになった。この現象は日本だけでなく、世界各地の都市部で見られるトレンドでもある。ブルム社は自社の金具を用いて、この問題にソリューション提案を図る狙いだ。

一方、ショールーム入って右手には「クリスタロヒンジ」が使われた洗面化粧台が展示された。クリスタロヒンジは、UV接着剤を使うことで据え付けが可能なヒンジ。ヒンジは穴をあけて金物を通して両側から取り付けるのが一般的だが、扉の表裏両面を鏡面にしたい場合や、ガラス扉の場合は穴を開けることができない。そのようなケースを想定した製品だ。海外では、意匠性の高い収納に本品が採用される事例が多くみられるという。

また、「スペースツイン」と同社が呼ぶ、幅の狭い引き出しも洗面化粧台に組み込まれた。これも前述の省スペース提案の一環で、収納の幅が狭いために引き出しを2段にし、各段にたすき掛けのようにレールを装着することで、容量を確保した引き出しが実現できることを提案したものだ。

洗面化粧台の隣には、大型のキャビネットが展示されており、ここには今年発売したばかりの新製品、「アベントスHKi(エイチケーアイ)」を搭載したガラス扉の収納も見ることができる。アベントスHKiは、収納の扉を上方開閉させるための金具だ。金具を筐体に組み込み、外にほとんど露出させないため、収納の意匠を最大限引き出せるのが訴求ポイント。同品の組み込みには、側板が16ミリ以上あることが条件だ。

なお、アベントスHKiは「アベントスシリーズ」の最新製品で、同シリーズはそれぞれ動作やサイズが異なるものの、全て収納の扉を上方に開閉するべく作動する機構を指す。「ヨーロッパではこのような上方開閉のデザインは人気です。一般的な開き扉は横に開閉しますが、上下で開閉する場合、比較的大きな扉を据え付けられるという利点があります。また、キッチンで作業する際に、横開閉ですと頭をぶつけてしまう恐れもありますが、アベントスではその恐れがありません。」とデニカ社営業部長の佐藤信明氏は語る。 

なお、同社ショールームに展示されている住設製品や家具には、エンドユーザー間でも認知が進む「ブルモーション」もしくは、「チップオンブルモーション」を実現する金具が搭載されている。ブルモーションとは、引き出しの動き、スピードに応じて、優しく静かに、そして自動で閉じるようになる機能のこと。一方、チップオンブルモーションとは、同社の特殊な金具で、これを搭載することで収納は、取手を使わずプッシュオープン(押すだけで収納が開く)で開閉が可能になる。閉める時も、ブルモーションが作動し静かに閉まる。いずれもブルム社が開発した特別なダンパーにシリコンオイルを組み合わせることで実現するものだ。

また、先述のキャビネットには、「棚板引き出し用ロック」も搭載された。これにより、最大60キロの荷重をかけても棚板をしっかりロックすることが可能だ。電子レンジや炊飯器の設置スペースや、オフィス等の机にも搭載が可能な機構だ。

キッチンやリビング家具の新機能提案が充実

ショールーム内では、「スペースツイン付ソファ」や「コーヒーテーブル」、「オフィス・タワー」といった家具のインスピレーション展示も行われた。3シーターのソファアームには、タッチすることで飛び出す収納スペースが設けられた。そこにはワインやグラスを収納でき、また、簡易なドリンクホルダーも設けられていた。リビングテーブルもまた、同社の機構を活用した収納の仕掛けが盛り込まれた。テーブルの天板は左右に開閉し、中にリモコンなどを収納できるようになっていた。

このようなソファやテーブルは販売中の商品として存在するわけではない。ブルムの金具を使うことで様々な新機能や、高付加価値製品を生み出すこともできる、という来場者にインスピレーションを与えるものだ。

佐藤氏は、「このように金具を使った新しい付加価値提案を是非体感頂きたいと思っています。家具メーカーの皆様から、是非製品開発についてご相談頂ければ嬉しく思います。」と意気込みを語った。

ポケットシステム「レベゴ」閉扉時

ショールーム左手奥には、ポケットシステム「REVEGO(レベゴ)」の展示が行われた。レベゴは、お気に入りのデザインの大型の化粧扉を使用する、いわゆる垂直収納扉システム。間仕切り用途ではなく、家具や家電などを隠す用途で設置される。このような居住スペースの一部を隠すニーズは年々高まっており、同社もこれを捉えた提案をショールームに盛り込んだ。

レベゴ開扉時

同社製品の場合は、ブルムならではの、簡単な操作で、素早く快適に開閉でき、幅15cm(2枚扉の場合)または10 cm(2枚扉の場合)のポケットキャビネットに折りたたんで、コンパクトに収納することができる。ポケットキャビネットは、家具メーカーの工場で製造し、現場で設置固定するので、正確な製造と現場施工も省力化が期待できる。キッチンボードやキャビネットだけでなく、最近ではホームオフィススペースを隠すニーズも高まっているという。

レベゴと隣接して設置されていたのは大型のキッチンボードで、ここには主に前述のアベントスシリーズを中心とした収納扉の他、スペースステップ、そしてブルモーションなど、同社の製品をふんだんに盛り込んだ展示構成となった。特に、上部開閉のできるアベントスシリーズの一部には、通電して、開閉のオートメーション化を実現する「サーボドライブ」も搭載された。

「ブルム・インスピレーション」をテーマとしたデニカ新ショールームは、家具を含めた住設商材の様々なアイデアを体感できる場だ。新商品開発に新しいひらめきや、情報収集を求めているプロユーザーは、一度訪れてみてはどうか。