サンゲツ(名古屋市、近藤康正社長執行役員)は、槌屋(名古屋市)およびグループ会社の槌屋ティスコ(愛知県知立市)と組み、布そのものが音を出す「音の出るファブリック」の商品化に向けた共同開発に着手した。国立研究開発法人 産業技術総合研究所(産総研)が開発した布状スピーカー技術のライセンスを槌屋側が取得しており、これをサンゲツのカーテン・椅子張り・その他インテリアファブリックに組み込むことで、内装と音響を一体で提案できる新カテゴリーの創出を狙う。
サンゲツは2025年度にイノベーション戦略室を新設しており、今回の取り組みはその第一弾的位置づけ。従来は「見せる」ことが中心だった内装材に「聴かせる」機能を加え、店舗・ホテル・オフィス・展示空間などで空間価値を高めることを目指す。
今回採用する布状スピーカーは、特殊フィルムと電極シートを布に組み込む構造が特徴で、布全面に多数の小さな発音体が分散している。これにより、音源が一点に偏らず、布全体から音が出るような聴こえ方になり、特に中高音域が自然に広がる。天井から垂らしたファブリックや長尺カーテンを通路に設置すれば、人が歩く動線に沿って音が追随してくるようなインタラクティブ演出も可能で、デジタルサイネージやミュージアム、体験型ショールームでの利用が想定される。
サンゲツ側は「カーテンやパネルを張るタイミングで音響設備を仕込めるようになれば、設計や施工の手間を抑えつつ空間の差別化ができる」とみており、従来のスピーカーボックスや天井埋め込みに比べて意匠性を損なわない点を強みとする。一方で、槌屋・槌屋ティスコは従来から繊維加工や工業用テキスタイルで培った技術を持ち、産総研の基盤技術を量産可能な布製品へ展開する役回りを担う。
サンゲツは近年、「スペースクリエーション企業」への転換を掲げ、壁装・床材の卸にとどまらない空間ソリューションを強化している。今回の“音が出る内装材”はその方向性に沿うもので、今後はホテルラウンジ向けのサウンドカーテン、オフィスのゾーニングと連動した音響パーティション、店舗の季節演出に合わせた着せ替えファブリックなど、用途ごとの応用展開を想定。まずは商品化に向けた性能評価と安全性確認、接続機器とのインターフェース整備を進める方針だ。
空間演出においては、照明・香り・音を一体で制御する需要が高まっており、従来の内装材メーカーがどこまで音響領域に踏み込めるかが業界の新たな焦点になりつつある。今回の共同開発は、内装材の既存販路を持つサンゲツが前面に立ち、技術を持つ素材・加工企業と組んで市場をつくるモデルで、完成すればインテリア分野における“音付きファブリック”の普及に弾みがつきそうだ。





