【2024夏学習机特集(3)】浜本工芸 リビング学習、ダイニング兼用 それでいいのか? 学習机は数十年使える家具

浜本工芸(広島市南区、浜本洋平社長)の売上に占める学習机の割合は少なくない。学習机市場で商品訴求をするためには何が必要か、新宿OZONEの同社ショールームを取材した。東京ショールーム統括の東海林康之氏によれば、学習机の市場は縮小するが、まだ同社が、そして業界はやるべきことがあるという。

近年、少子化や景況感により学習机の市場は逆風にある。また、小学生の子供をリビングで学習させる「リビング学習」の普及も学習机の買い控え要因の一つだ。親としても、ダイニングテーブルと兼用することで学習机の購入費用を抑えられるだけでなく、子供の学習を見守ることができるため近年取り入れる家庭が増加している。

リビング学習を後押しした要因のもう1つに、しばしばベストセラー本である「東大理三に3男1女を合格させた母親が教える東大に入るお金と時間の使い方」(佐藤亮子著 ダイアモンド社)も挙げられる。同著には、東大理三に4人の子供を合格させた秘訣とし、その一節にリビング学習を実施していたとする下りがある。小学校の教師が保護者に紹介するケースもあるそうだ。

しかし東海林氏は、「リビング学習」という言葉が先行する現状に対して警鐘を鳴らす。「テレビを見ながら、或いは誰かが話をしているリビング環境では子供が勉強に集中するのは難しいものです。親にできることは、監視してあげること。そして集中する環境を整え、勉強の癖付けを教えることなのです。その最適な空間が著者の方の場合はリビングだったというだけなのです。」

また同氏は、リビング学習が定着して、ダイニングテーブルと兼用して学習机を買い控える風潮について、「それは結果として、子供たちに適切な道具を与えていないことと同じです。例えば野球をするときに、バットやグローブを与えず、代用品だけで上達するでしょうか。同様に、これから約20年、人によってはそれ以上勉強するという時に、道具を買い与えない風潮があるのは大変疑問です。これは業界全体で取り組みの必要な問題でもあるのです。メーカーも、販売店も、インテリアコーディネーターも、ハウスメーカーの担当者も、自分たちが小さなころから皆、学習してきたはずなのです。今一度思い出して頂き、そのための環境、そのための道具を用意しなければならない、そういった啓発を皆で行わなければいけないのではないでしょうか。」と学習机のありかた、価値に向き合うための問題提起を行った。

No.09

長く使う道具という言葉に象徴されるように、同社の学習机はそのための性能、機能を備えたものだった。ベストセラーの学習机「No.09」は、デスクの前足が斜めになっていることが最大の特長だ。付属の椅子は、体重がかかることでキャスターがロックする機能がある。そのため、いちいち椅子を動かさず離着席ができるべく、脚を斜めに傾け、身体が出入るできるスペースを持つ設計だ。オーク材で作られた大人も使えるシンプルなデザインで、標準価格は12万3200円 [W110]。

No.28

売れ行き2番手は「No.28」。奥行きが浅く、子供だけでなく大人にも使いやすいコンパクトなモデル。標準価格も7万3700円 [W90]とエントリーモデルとして手を出しやすい。

部品を付け替えることで高さを調節できる「No.17」(標準価格12万8700円 [W110])も好調だ。当該モデルは、未就学児を連れた若年層の夫婦を対象に百貨店及びECを中心として出荷が進んでいるという。

同社のデスクはすべて両面UV塗装が施され、油性ペンの汚れを拭き取ることが可能。熱にも強く、熱いコーヒーを入れたカップを置くことでできるような、カップのしみもつきにくい。そのため、デスクマットを敷かずに使うことも可能だ。また、デスクを買い替えるきっかけは引き出しの底が抜けるケースがほとんどだが、引き出しはしっかり組んで底板をしつらえるため丈夫につくられている点も訴求ポイントだ。

製品の紹介を終え、東海林氏は、現代の子供がひと昔前の世代と決定的に違う点は、自分の使っているデスクがもしかすると将来、在宅ワークなどで仕事にも使う可能性があるということだと指摘した。デスクは家具の中でも非常に耐久性が高く、数十年持つこともしばしばある。将来仕事で使うことも視野に入れて質の良い学習机を選ぶべきだとした。浜本工芸のパンフレットには、親子2代、もしくは3代で使ったというキャッチフレーズが並ぶ。今後は、自身で40年使った、というフレーズが載る日も来るかもしれない。

(長澤貴之)