インテリアライフスタイル2024が閉幕 約1万7000人が来場

メッセフランクフルトジャパンが主催するインテリア・デザインの国際見本市「インテリアライフスタイル」が、2024年6月12日から14日にかけて東京ビッグサイトの西展示棟およびアトリウムで開催された。

今年のインテリアライフスタイル展は、3日間合計で1万6577人の来場をみた。同展への来場者は、小売・専門店の関係者を中心に、コントラクト関係の来場者も多く訪れた。このほか、ライフスタイルショプや家具・雑貨専門店、百貨店などの小売関係者に加え、デザイン事務所や、設計事務所、建築・住宅関連、インテリアコーディネーターなどの関係者が最新アイテムを求めて来場した。なお、今回の出展社は合計で507社(国内:461社、海外:46 社)。

インテリアライフスタイル展の企画の一つ、次世代のインテリア・デザイン業界を担う若手を対象とした「Young Designer Award」では、今年はHANA TEXTILE DESIGN STUDIOの光井花氏が受賞した。副賞として2025年にドイツ・フランクフルトで開催する世界最大級の国際消費財見本市「アンビエンテ」に出展者として招待される。今回展示された「錯覚のテキスタイル‐久留米絣‐」は、糸のずれと錯覚効果を融合させたテキスタイルだ。

家具インテリア企業の出展では、前述の石巻工房(カリモク家具)に加え、モーダ・エン・カーサ、リビングハウス(KARE)、といった企業のほか、志岐や東馬、ユーカスなどの九州の企業、高山からは雉子舎が出展。同展の趣旨に合わせたインテリア・雑貨アイテムなどを数多く出品した。それぞれの企業によって、インテリアショップへの展開をねらう企業や、コントラクト・法人むけ案件の拡大をはかる企業など、販路開拓のターゲットは様々だ。国産材やアップサイクル素材の活用などとともに、木だけでなく異素材のスチールとの組み合わせを提案する企業もみられるなど、家具アイテムの出品は各社がそれぞれの強みを活かした製品提案を行った。また、ブークレ生地を採用したアイテムを出品した企業も多くみられるなど、昨今の流行を採り入れた展示も目立った。


この春にカリモク家具との業務提携を発表した石巻工房(宮城県石巻市)の特別展示。「Maker Made」の高品質でモダンな家具を生み出している石巻工房だが、樹種を限定せず、国産材をしっかりと活用していくことをコンセプトとした展示を行った。新たに発表した「Maker Pack」ラインは、カリモク家具の繋がりとリソースを活用しながら、シンプルなデザインを高度な製造技術に適応させており、国内だけでなく世界中に簡単に発送できることが特徴。カーボンフットプリントの削減にも寄与する。


東京をベースに、オリジナル及びデンマークブランドの家具・照明・ラグを扱うモーダ・エン・カーサ(東京都港区)は、同社のブランドDNAを最も表現できるようなコンセプトでブースを構成。新作メインの出品で、インテリアライフスタイル展に合わせた、ライフスタイル寄りの商品を中心にした。

商品は、異素材を組み合わせることによって新鮮な空間提案を図っているとし、国内のメーカーが取り組んでいないことに敢えて挑戦してアプローチを図っていると同社。海外の市場にある製品からインスパイアされたものを、サイズ感など日本の住宅仕様に改めて開発するなど、日本のインテリア市場に「面白さ」を与えるラインナップの拡大に努めている。


「インテリアになる知育家具。」をコンセプトに、リビングに子どもの自立心を育むテリトリーをつくるキッズ家具ブランド「MINORINO(みのりの)」を運営する㈱NEM(東京都葛飾区、志村千奈都代表)。今年のiFデザインアワード2024にも、「MINORINO」が受賞を果たした。

製作にあたっては、モンテッソーリ教育の国際モンテッソーリ資格をもつ清水美香氏の監修を受けており、幼児期の知育に貢献する設計となっている。体格に合うように椅子の高さを調整することで、集中力を切らすことがないようにするなど、細かな要素に配慮しているようだ。モンテッソーリ教育ではオープンタイプのシェルフを用いるが、チェストは小分けにし「カテゴリ収納」ができるようになっている。これは「おもちゃなどのカテゴリ別の仲間集め・仲間分け」といった概念形成について、日々の生活の中で思考のトレーニングができるように設計されているという。

代表の志村氏も、現在3歳半の子どもを育てている。出産した当時はフリーランスだったため、早々に仕事に復帰して育児と仕事を両立していく中で、子どもと過ごす時間の少なさを感じたという。
「このままで良いのだろうかといったことや、子どもにYouTubeなどの動画を見させてしまうことなどにも罪悪感を感じていたのですが、その頃にモンテッソーリ教育と出会いました。モンテッソーリ教育は、”環境さえ整えれば子どもは自分で成長していく”という教育です。”子どもを育てる環境を整えるための家具を作ろう”と考え、『MINORINO』を企画・開発していくことになりました」と志村氏。

志村氏自身の課題解決が出発点となった「MINORINO」は、公式のオンラインストアで販売しているほか、BtoBでの引き合いも増えており、ファミリー向けのホテルの客室におもちゃを設置するための棚として採用されたケースもあるなど、徐々にその認知を拡大している。


志岐(福岡県柳川市)は、SHIKIの兄弟ブランドであるmoisture furniture(モイスチャー ファニチャー)の新商品「pombo(ポンボ)」を発表した。モイスチャー ファニチャーは、志岐とポルトガル・リスボンのデザインスタジオ「SATEREO」のコラボレーションブランドだ。「pombo」は、三次元曲面デザインと贅沢な無垢材削り出しの家具でありながら、使用シーンによって、場所、使い方を変えられることが特徴の一つ。また、形も鳩型とすることで、昨今の多様な家庭・住空間や過ごし方に合わせて、フレキシブルな使い方が可能となっている。ちなみに「鳩」をポルトガル語で「pombo」と呼ぶという。

キッズファニチャーの「totte」には、バリエーションにビーチ材を追加したほか、シリーズ初の追加アイテムとして、置き型時計「totte time」を発表した。


ユーカス(福岡県久留米市)は、国産ソファのオリジナルブランドである「NOUS PROJECTS(ヌースプロジェクツ)」を展開。2020年にスタートした同ブランドは、主にコントラクト市場に向けた製品提案として、ラウンジやオフィスなどでの使用を想定したデザインとしている。「チェアとソファの中間」のような製品だ。

インテリアライフスタイルでは、FULLSWING(東京都)の佐藤界氏がデザインした2タイプの新商品「TENT(テント)」と「TRAVERSE(トラヴァース)」、特大のオットマンなどを展示した。工場をもつメーカーとして、建築家やデザイナーが指定した張地でも用いることができるなど、別注対応も可能な点を強みとして訴求した。


クラスコファニチャー(宮城県仙台市)は、オーダーメイド家具などの製造を手掛けている。今回のインテリアライフスタイルではアトリウムにブースを設け、「SENDAI FORME(センダイ・フォルム)」ブランドの製品などを来場者に訴求。「センダイ・フォルム」は、国産広葉樹と地域素材に焦点をあてたプロジェクトで、国産広葉樹の有効活用と地域素材の生産背景を伝えている。今回は「シカガワスツール」など特徴的な製品を並べた。シカガワスツールは、害獣駆除された鹿の皮を使ったプロダクトを展開する岩手の「山ノ頂」とのコラボ製品。ここに、国産広葉樹の秋田県産イタヤカエデを組み合わせた。東北の作り手たちがタッグを組んで生み出された製品だ。


イタリア大使館貿易促進部の特別展示「Italian Design Day 2024」では、国内の代理店各社が取り扱うイタリアのカッシーナやモルテーニ、ジェルバゾーニといった各ブランドの製品を展示。戦後70年以上の歴史の中で培われた「イタリアンデザイン」を象徴するイタリア家具について、時代やマニファクチャー別に区分することなく混在させ、時間を超越した空間を実現。その原点と未来を見つめるきっかけを来場者に提供した。


なお、次回の「インテリア ライフスタイル」は2025年6月18日(水)~20日(金)に、東京ビッグサイト 東展示棟にて開催予定。

(佐藤敬広)