住友林業(東京都千代田区、光吉敏郎社長)は、特定非営利活動法人キッズデザイン協議会が主催した「第17回キッズデザイン賞」において、同社が開発したウッドデッキ「暮らしをひろげるウッドデッキ」が受賞したことを発表した。
「暮らしをひろげるウッドデッキ」は、住友林業およびグループ会社の住友林業緑化(東京都中野区、神谷豊社長)が開発したもの。屋内のLDK空間から、屋外につながる大きなウッドデッキだ。「”観る”から”過ごす”へ。”過ごす”ことで”つなぐ”庭」をコンセプトに設計。所々に段差を設けて空間を区切りつつ、回遊できる設計となっている。一段低い位置に作ったピットを中心に、焚火台を囲んでおうちキャンプ、木漏れ日の中で楽しむピクニックのようなランチタイム、育てる楽しみを知る家庭菜園など、多様なシーンを生み出す仕掛けも備える。ウッドデッキの表面はビスを無くし、経年によるささくれを防ぐなど安全面にも配慮。ヒノキ材を使用し、三面上小節とよばれる節が少なめのプレーンな材を選抜して用いている。
「これまでエクステリアは、安全性や機能性、デザイン性の3点が大きな要素を占めてきた」と、開発に携わった住友林業緑化住宅事業部設計品質推進部の東巧専任マネージャーは話す。子どもに特化して開発を手掛けているわけではなく、コロナ禍を経て暮らしの様式が多様化してきた。宅配ボックスやカーポートなどのハード面を充実させてきたというのが従来までのエクステリアの設計思想だったが、それを意匠として無理にまとめてしまっているのが今の業界だと同氏は指摘する。
東氏は、これからの時代はハード面に加えてソフトの面もしっかりと充実させていかなければならないとし、「外空間全体、ファザードや庭などに外の居場所をつくり、それがさまざまな場所から目に見えて分かるようにするべきだと思っている」と語る。意匠だけでの外空間ではなく、外空間の“使い方”や“使う姿”が見えるように外で座る場所があれば、室内のリビング・ダイニングの“座る場所”とセットで“内と外がつながった感覚”で過ごすことができるだろうとの考えのもと、「暮らしをひろげるウッドデッキ」を生み出したという。ファサードに人の気配をつくり出すことで、人と人、人と街につながりが生まれ防犯性が向上し、安心の暮らしをサポートできる。
海外では、外に大きなソファやラウンドテーブルなどを置く家庭も多いといい、日本の住空間とは様相が異なる。意匠のみならず「暮らしの中にどのような効果を生み出すのか」といった観点も重要であり、日本ではまだまだこれからのようだ。「暮らしに与える効果の意味というものを、きちんとお客様にお伝えすることによって初めて、本当に幸せな暮らし方や過ごし方の提案ができると思っている」と東氏。
コロナ禍によって家の中で過ごす時間が増えた際、”外の空間があること”で室内空間がより豊かに過ごせるという意識が特にハイエンドユーザーを中心に高まりつつあり、ユーザーのニーズは多様化しつつある。そのため、室内から”外で過ごす空間”が見え、内外がつながることの重要性は今後もますます求められるだろう。同社でもインテリアや、屋外の家具も含めて提案しており、家の中および外のアイテムについても重視している。一方で現状では屋外用の家具は”収納”の手間がかかるアイテムが多く、収納場所やカバーなどの提案も必要になることが、提案する上での課題になっているという。
エクステリアのソフト面が充実していくことによって、屋外に向けた提案もより充実していくのではないかと同社。インテリアの付加価値の向上のためには、内外含めた暮らしの在り方提案が問われることになる。需要に合わせた製品開発・提案ではなく、”豊かな暮らし”を企業から発信・提案していくことが重要となりそうだ。
(佐藤敬広)