リビングハウス 事業戦略発表会開催 「家具屋から人生価値拡張業へ」 -LIVING HOUSE-

リビングハウス(大阪市中央区、北村甲介社長)は2月27日、Polygon表参道(東京都渋谷区神宮前5-9-15 トータルアートワークスクエアB2)において、同社が取り組む地方の家具店および百貨店の事業再生事業(BtoB)に関する事業戦略発表会を開催した。同社の北村社長に加え、ゲストとして徳島市の内藤佐和子市長とジョイアーバン(鳥取県米子市)の本田修司副社長が登壇。それぞれ徳島市との包括連携協定締結およびJU米子タカシマヤ再生についての事例説明を行った。

当日は同社の80周年記念ムービー上映ののち、北村氏による会社説明及び今期の決算予測の報告と来期以降の方針が示された。同社の今年度の売上高は約52億円で着地予定とし、来期は売上高60億円、そして株式上場を目指すとしている。

説明を行うリビングハウスの北村甲介社長

同社は「『家具屋』から『人生価値拡張業』へ」をテーマに、日本を「空間時間価値」の先進国とするべく、様々なベンチャー企業と連携して新領域での価値を生み出し続けている。その中でも、「自社の存在価値を顕在化」するため、インテリアショップ運営などが主の「くらしデザイン領域」と、商品を用いた空間プロデュース、地方企業の店舗活性化支援、パートナー企業のプロモーション支援「共創デザイン領域」の2領域を展開し、それぞれノウハウを活かし、ブランド価値を高める役割を果たしている。今回の発表会のテーマでもある「共創デザイン領域」では、未体験キュレーションブランド「LIVING X」を告知。異業種コラボによるユーザーへの「未知案内」の拡大、リビングハウスに来ると何か新しい発見があるというブランドイメージ醸成、そして店舗の坪効率の向上を主な目的としたブランド展開を図ることが示された。また、5月に提供開始予定の顧客向け有料会員サービス「LIVING α」も発表。同サービスは月額税込798円で、同社と提携する企業が手掛けるサービスや、限定クーポン、お買物券の配布、そして家具のプラス2年の延長保証を受けることができるというもので、「未知案内のパスポート」として、より豊かな暮らしをユーザーへ訴求するというプランが語られた。

北村社長と、徳島市の内藤佐和子市長

続いて、北村社長と徳島市長の内藤佐和子氏によるトークセッションに移った。徳島は木工産地、藍染めでも知られる街だが、藍は化学繊維に取って代わられ産業が衰退。また、内藤氏が市長に就任した2020年に、県内唯一の百貨店だったそごうが撤退した。その後昨年12月に「amico徳島」としてリニューアルオープンした館内に、リビングハウスも出店した。内藤市長は「木工製品や藍染め製品を、リビングハウスのような潜在顧客がいる店舗で売っていただければ、徳島市にとってメリットが大きいということで、連携協定の話をさせていただいた。藍染めなどの産業についても『どのようなものが求められているか』を職人にフィードバックすることが大切。顧客目線でも、そのような面でリビングハウスに期待している」と語る。

リビングハウスとの包括連携協定の経緯について語る、徳島市の内藤佐和子市長。

市長室には藍染の装飾品が飾られているが、それを見た北村社長はじめ同社社員がその芸術性を高く評価。北村氏は「内藤市長とお話しするまでは出店を決めていなかったが、お話を進めるなかでその意気込み、熱意を感じ、出店を通じて徳島市に貢献できるという思いをもった。今は藍染の職人の方々とも話し合いを進めながら商品開発を手伝ったり、既存製品も当社店舗で広めたりしようとしている入口にある」とし、地方創生の観点から地方で働くという点にも触れ「新規出店した徳島店の店長は、徳島出身の従業員だ。日本全体を見ると、地方は働く場がない。自分がしたいような仕事がない、若い女性が都会に行ってしまうという声も聞いている。当社が出店することで徳島に若者も残っていただければとも考える。また、徳島にかける思いを当社の店長が発信していくことで、地元で働くという回帰にも繋がればと思っている。社員にとってもやりがいのあるビジネスの在り方ではないだろうか」と語った。

北村社長と、ジョイアーバンの本田修司取締役副社長

続いて、ジョイアーバン 取締役副社長の本田修司氏が登壇。同社が展開するJU米子タカシマヤは、民間会社が大手百貨店の地方子会社を買収した日本初の取り組みとして注目を集めている。店舗の最上階をリビングハウスが全面プロデュースして改装し、1月26日にパートナーショップをオープンした。本田氏は北村氏から「百貨ではなく『二貨』など、シンプルでいいのではないか」などの意見を受けながら、リビングハウスに1フロア全面プロデュースを依頼。設計事務所などと連携して2年ほどの構想をかけたという。パートナーショップオープン後は、それまで百貨店には訪れることがなかったような顧客層が足を運び、ショップの業績は好調のようだ。

JU米子タカシマヤの取り組みについて語る、ジョイアーバンの本田修司取締役副社長

「リビングハウスには、お客様の様々なニーズを聞いて、それを受け入れていっていただくことを期待したい。まだ百貨店全体へのシャワー効果はあまり出ていないが、下の階で扱っている商品もより注目していただけるよう、今後も同社と共に可能性を追求していきたい」と本田氏。また北村氏は「スマホなどの活用によって、地方と都会の方々と『得ている情報』に差はない。しかし、地方の方々は様々な家具・商品を『リアルで見る』機会は少ない。やはり実物には必ず需要があると感じており、実際同店には広域からお客様が集まってきている」と述べた。

左から北村氏、本田氏、内藤氏

説明会後の質疑応答において北村氏は、経営における重点要素などについて説明。「既存店売上高、特に昨対比の数字は大事。新規出店するため増収はするが、しかし既存店の売上高が落ちると本末転倒であり、それが落ちないようにどのようにしていくかがポイントだ」とし、今後の事業展開として家具のリユースを絡めたCtoCの仕組み構築や、株式上場後は地方の著名な家具店と連携する可能性についても触れた。(佐藤)

LIVING HOUSE 企業WEBサイト:https://www.livinghouse.co.jp/

ジョイアーバン 企業WEBサイト:https://joyurban.jp/

徳島市 ホームページ:https://www.city.tokushima.tokushima.jp/