東洋クオリティワン フォーム材「mou‐bio」開発 環境配慮型素材の新たな選択肢へ -TQ‐1-

東洋クオリティワン(TQ‐1:埼玉県川越市、関俊明社長)はこのほど環境に優しいバイオマスフォーム「mou-bio(ムービオ)」を開発、発表した。バイオマスフォームとしては高水準のバイオマス度を達成している。環境配慮型製品が盛んに発表されているなか、マットレスへの展開をメインに新たな選択肢として市場に投入していく。
日本政府は2020年10月に「2050年カーボンニュートラル宣言」を発表。2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラルを目指すことを宣言した。これは二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスが排出される量を植林、森林管理などによる吸収量を差し引いて合計を実質的にゼロにすることを意味している。また、世界をみても120以上もの国と地域が「2050年カーボンニュートラル」という目標を掲げている。
さらに2015年の国連サミットで2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標である「持続可能な開発目標(SDGs)」が定められた流れもあり、企業もサステナビリティやカーボンニュートラルに対応する必要性が高まっていくことが予想される。

寝具製品にウレタンフォームを多様に展開してきた

同社はこれまでポリウレタンフォームを中心とした各種フォームの総合メーカーとして新素材を積極的に開発してきた。基礎研究から製品開発に至る一貫した開発体制により、顧客のニーズに合った新素材の開発を進めている。十数年以上前から同社ではバイオマスウレタンの開発を手がけていた。環境への意識が高まるなか、環境に配慮した新たなフォームの開発がスタートし、mou-bioが誕生した。
フランス語で「やわらかい」を意味する「mou(ムー)」と英語の「バイオ資源」を名前の由来とするmou-bio。TQ‐1は、同製品で環境配慮型のフォーム材においてポリウレタンフォーム業界の先頭を切っていく。同製品の特徴として、大きく4つの特性が挙げられる。①SDGs対応、②バイオマス度60%以上、③優れた体圧分散性、④しっとりやわらか高触感――と従来の石油由来のフォーム材と比較しても劣らない商品性を持つ。
SDGsへの対策として、「ゴール12 つくる責任 つかう責任」、「ゴール13 気候変動に具体的な対策を」を見据える。ゴール12では持続可能なバイオマス資源の利用、ゴール13では石油由来の原料使用時よりもCO2の排出量を大幅に削減していく。
同製品に使用するバイオマス原料は、トウダイグサ科の非可食植物である「ヒマ」。種子から油を抽出し、ウレタン樹脂の原料であるポリオールを組成する。
使用原料に対するバイオマス度は60%以上を占める。一部原料はバイオマス非対応の素材しかないため、石油系素材を使わざるを得ないというが、そうしたなかでもポリオール中のバイオマス度を限りなく上げている。国内最高水準のバイオマス度となっているという。なお、フォーム材として日本有機資源協会のバイオマス認定マークを取得済みだ。バイオマスマークは生物由来の資源を活用し、品質や安全性が関連する法規、基準、規格などに適合している環境製品の目印となる。

暮らしのさまざまなシーンで使用されている東洋クオリティワンのポリウレタンフォーム

バイオ素材を使用することで、カーボンニュートラルに貢献していく。石油系のウレタンフォームの場合、製造時や輸送時、焼却時と各場面でCO2が発生してしまう。一方、バイオ素材を使用した同製品は、原料が植物のヒマであるため、ヒマ生育時にCO2を吸収。フォーム焼却時に発生するCO2が相殺され、石油由来のウレタンフォームよりも大きくCO2を削減することが可能だ。
こうした環境に配慮した製品ではあるものの、マットレス用途での機能性は石油由来の製品と劣らない。同社社内評価で体圧分散性を確認したところ、優れた体圧分散性を発揮していることが分かった。
また、一般的なウレタンの評価方法と同様にJIS規格に沿って測定し、硬さの変化が少ないという結果を得ている。初期のタッチがゆるやかなため、高触感で座屈感が無い。これは多様な領域と歴史の中で蓄積してきた同社が持つ原料配合のノウハウにより生まれたものだ。同社の強みがバイオマス素材でもこうした特徴を寝具で表現することに成功した。
低反発ライクな触感ではあるが、mou-bioは独特のしっとりとした高反発にも低反発にもない「良(りょう)反発」な触感が楽しめる。
その他の物性として、耐久性の高さがある。定荷重繰返し圧縮試験ではJIS規格圧縮回数の2倍となる圧縮(16万回)でもS相当クラスの耐久性を維持している。過酷な条件に耐えられることが見込まれる。
揮発性有機化合物(VOC)測定では、安全な基準だったことを確認した。規格が厳しいとされる車室内における規格と比較してもシートパッドの規格を満足する。ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドなどの発揮量は少なかった。また、環境負荷物質(SOC)に関しても非含有であった。人にも環境にも優しい。
耐加水性能評価も問題ないという評価が出ていることから、睡眠時の寝汗に対応できることが想定される。また、温度依存性が低いため、1年を通じて扱いやすい。通常の低反発フォームの場合、気温が低いと硬くなる性質があるが、mou-bioは、気温が下がっても硬さを感じにくいという。さらに難燃性、吸音性といった機能を確認している。

車両や産業資材分野でも製品を開発

こうした特徴は「バイオ素材を使用しているからと言っても、高いお金を払って購入する消費者の目線に立ったら、商品の価値がないと購入しないだろう。バイオマス度が高く、CO2排出量を下げて商品性の良いものが開発できた。石油系に負けないような感触、物性がある」と同社技術部 製品開発課長の荒川秀治氏は語る。同製品に対する企業の反応は良く、興味を示す取引先も多いという。
バイオ素材を使用した製品はコストが高くなる傾向があるが、同社ではチップフォームを積層することで、費用を下げることが出来る提案も行う。体圧分散性と柔らかい寝心地が特徴のmou-bioと組み合わせた環境配慮型マットレスを提案していく。バイオフォームとチップフォームを組み合わせ、コスト削減とエネルギー削減に加え、より環境の負荷低減になるとしている。環境に配慮しながら、上質な寝心地を実現する。
mou-bio第二弾製品の開発も進行中だ。mou-bioの技術を応用し、様々なニーズに応えられるよう、バリエーション拡充を進めている。(磯野)