ゼロリノベ デンマーク「FDBモブラー」との共同サービススタート 家具を軸としたリノベーション・コーディネート提案

 不動産仲介・リノベーション設計・工事のワンストップリノベーションサービス「ゼロリノベ」を手がけるgroove agent(東京都港区、鰭沼悟代表)は、北欧デンマークの家具ブランド「FDB MOBLER(FDBモブラー)」との共同サービスを2023年9月1日より開始した。

 2011年創業の同社は、これまでもインテリアを大切に考え、ワンストップリノベーションを手がけてきた。顧客の9割は一般ユーザーのマンションリノベ案件だが、戸建てのリノベ案件も請け負っている。「大人を自由にする住まい」をコンセプトに、資金計画から物件探し、施工からアフターサービスまで一気通貫で行える点を同社は訴求しており、今回の共同サービス開始にあたり、家具を軸に間取りや仕上げなどのプランニングを行っている。料金プランは物件購入価格+リノベーション価格(設計・施工で3タイプ)+家具代。対象のエリアは物件探しからの場合は東京・神奈川・埼玉・千葉限定だが、リノベーション設計施工のみの場合は全国対応だ。

サービスの流れ

 

 過去にgroove agentは、一時期において家具のコーディネートを含めた提案もしていたが、一旦は家具の提案を休止していた。しかしながら、リノベーションを手掛けた物件を完成後に訪問した際「家具のコーディネーションが上手くいかない」という相談を受けることもあった。リノベーションの内装のみにこだわっても、家具にはあまり手をかけられないといったユーザーも一定数あったという。「引っ越す前の家から運んできたもの」をそのまま使用することで、壁や床などをリノベーションした空間の良さが引き出せていない、といったケースがあったことなどがきっかけで、再び家具を含めたリノベ提案を行うこととなった。

 同社が手掛ける案件では、スケルトンリノベーションの割合が多い。スケルトンリノベーションとは、床や壁、天井を取り払い、躯体のみの状態から、間取りなどを造り直すリノベ―ションを指す。内装については「人が触れる順」を大切にすると良いと、同社取締役の西村一宏氏は話す。その点においては、壁や天井などよりも、家具は最も「人が触れる」ものだ。

 本サービスでは、プランニングの途中で家具のコーディネートが可能。例えば、大型のソファを空間内に入れたいという要望があった場合、それに応じて間取りなども設計しなおす、といったことも可能だ。ソファなどのファブリックの色に合わせて、壁の色もコーディネートして提案するなど、「家具」を軸としたリノベーション・コーディネート提案を行うのが本サービスの特徴ともいえるだろう。

 西村取締役は「人の手の触れる順に、リノベーションする要素に資金・手をかけることが、人の幸せにもよりつながるのではないかと考えている。したがって、家具は我々にとっても非常に大切な要素だ」と語る。「無垢の木から得られる情報量はとても多い。子供は無垢の木に触れること、例えばフローリングなどで寝転がるなどで、のびのびと過ごすことができる。これは、今後の教育などにでも生きてくる要素ではないか」(西村氏)。空間(箱)を重視することも大切だが、より生活の中で最も体に触れる「家具」についても意識を高められるようサービスを提案していくことが大切になるのではないかと同氏は話す。

正規代理店のグリニッチがコーディネートを担当する

 今回、groove agentがFDBモブラーとの共同サービスを開始したきっかけは、同社が横浜に事務所を設立し、FDBモブラーのチェアを事務所内に導入することになり、FDBモブラーの総代理店を務めるグリニッチ(東京都渋谷区、今田憲一代表)とかかわりをもったことが契機だった。グリニッチ側も、家具以外の分野で協業できる企業を探していたことから、今回のゼロリノベとの取り組みがスタートすることとなった。共同サービスでは、グリニッチのコーディネーターがコーディネートする。それにより、家具も北欧ブランドの約30社から選択できる。これまでのゼロリノベのサービスにおいても、北欧家具の需要は高かったといい、このサービス開始によってより幅広いラインナップでコーディネートが可能になる点が強みとなる。

 北欧系デザインのアイテムは、サービス開始以来人気は高く、同社がリノベーションの上で提案する家具の中でも本流とも呼べるべき存在のようだ。北欧のデザインが日本人に好まれる理由に、「北欧は日本人と感覚が似ている」という要素を西村氏は挙げる。「北欧のクラフトマンシップは、日本でいう”民藝”と近しいのではないか。自分の名を売るのではなく、良いものを作り、大切に使い継ぐという文化・気質が、DNAに組み込まれている」とし、「北欧の方々も、日本人をリスペクトしてくださっていることが多々ある。日本の民藝や工芸品は、現地でも評価が高いようだ。北欧の家具はシンプルで使いやすく、耐久性がある。これは、日本人が目指しているところと似ているのではないか」と同氏は話す。

 北欧の暮らしは、外にいる時間が日本と比べて短い。税金も高いため、会食などの機会も外の飲食店ではなく、自宅などで行うことが多い。したがって、家の中で過ごす時間と、その空間が重要となる。インテリアの成熟度は、北欧と日本では差があるといってよいだろう。「成熟度を上げるためには”家に人を招くこと”が第1のステップになるのではないだろうか。そのためにも、当社の一気通貫のサービスによって、よりよいリノベーションと確かな品質の家具を提供していきたい」と西村氏。おもてなしの感覚や文化の再興が、インテリア産業界にとっての一つの鍵となりそうだ。

(佐藤敬広)