Home Furniture社はベトナム企業で、国内で全面的に生産している。VIFA ASEANでは、アップサイクルを徹底的に追求した家具を展示した。同社社長のスイス人でもあるステファン・メインハルト氏は、長年インテリアデザインや製品の仕入れ、調達の仕事に従事してきた。フランス、カナダ、アメリカなどの顧客と長年取り引きをしてきたが、当時からリサイクルやサステナビリティについての取り組みに強い関心があったという。
しかし、家具業界ではそうした取り組みに関心が薄く、自ら起業したと理由を語った。起業したのは2年半前。ベトナムで、廃棄ゼロを標榜した家具づくりを行ってきた。例えば使用した靴のレザーを再利用してソファなどを製造する。クッションのウレタンはじめすべてリサイクルしたものだ。また、レザーやフォームはベトナム国内で収集したものを使用している。
他国に比べてベトナムには高品質な製品を生み出す工場が多く集まっているため、不要となった部材、素材にも比較的良質の材料が集められる。ファブリックについては、中国に100%リサイクルの製品を生産する企業が存在して、そこから取り寄せている。
会社は創業歴2年半と若いが、既にカナダ、アメリカ、デンマークに顧客ができた。今は中東向けの大型リゾート案件を進めており、製品デザインの打ち合わせを行うなど、多忙な事業状況を送っているという。製品に手ごたえを感じて、VIFAASEANに出展したが、同氏はアジア地域、特に日本の市場に注目している。
製品のデザインやサイズはヨーロッパやアメリカ向けではあるが、アジアの中でも、日本や韓国はサステナビリティへの取り組みが比較的先進的で、またこのようなパッチワークを施したデザインは、日本の市場にとっても受け入れられるはずだと確信している。
「ソファに使用しているレザーの見本帖を日本に持って帰って頂ければいいのだが」と メインハルト氏は前置きをし「残念ながらそれはできない。なぜなら、私たちは切れ端を文字通り余すことなく使うからだ」とそばに展示されていたサイドテーブルを示した。
テーブルには1平方㌢程度のレザーの切れ端がちりばめられたデザインを持ち、レジン(樹脂)とコンクリートで製造された、環境配慮型の製品があった。レザーの切れ端、木材のチップさえ、デザインに取り込めるのは、長年にわたるプロダクトデザインの経験が活きたようだ。
このようなリサイクル品を基調とする製品は、「素材の調達量に限界はないか。クライアントにより大量に注文があった場合、どう対応するのか」という筆者の質問には、ベトナムの工場から排出される余剰素材は、想像以上に多い。受注枠として1カ月に3コンテナ程度ならば、供給に問題はないとした。
価格にたいする競争力も強みだという。元来、廃棄してきた素材を有効利用して作った製品の最大の長所は、価格を落とせる点だ。例えばパッチワークのソファは、580ドル(約85,000円)。レジンのテーブルは198ドル(約29,000円)となっていた。
メインハルト氏は、製品を通じてアップサイクル、リサイクルについて世界中の人々を啓蒙していきたい、モノをつくって捨てる時代はもはや終わった、と語った。なお、同社の製品や取り組みについて紹介するウェブサイトは10月にオープンする予定だという。
続く (長澤貴之)