2023 飛騨の家具®フェスティバル 10月21日~25日開催 「人がつくる」をテーマに、メーカーの叡智が集う

 家具生産地高山で、国内市場が期待する恒例の「飛騨の家具フェスティバル」が、飛騨の家具フェスティバル実行委員会、協同組合飛騨木工連合会(岐阜県高山市 白川勝規代表理事)の主催により、2023年10月21日から25日の5日間、飛騨・世界生活文化センターをはじめ各社のショールーム、特設会場などで開催される。

 飛騨デザイン憲章第2条「人がつくる~人がつくり、人をつくり、人とある~」が今年のテーマだ。木の個性と向き合い、個性を活かしたモノづくりを通じて作り手自身も成長する。人と自然の相互作用がビジョンにある。メイン会場となる飛騨・世界生活文化センターでは、こうしたテーマが各メーカーによって展開される。

 建築家のtamari architectsと飛騨の森でクマは踊るとの協業によるテーマブースも大きな見どころの一つだ。地域の連帯をモチーフとし、各メーカーから提供された端材を集めて屋根の構成材とした。すでにこれらの内容は今年8月末に東京渋谷でキックオフイベントを開催し、事前に周知活動をしてきた。
新製品の開発は各社とも積極的に取り組み、ポストコロナ市場へ向けて、ホームユース、コントラクトと幅広いチャレンジを指向した。メイン会場に加え各社ショールームでも企業特性を前面に製品を創出、市場ニーズへ向けた姿勢を強めた。大手メーカーのなかには、工場見学にも力を注ぎ、従来の見学時間を拡げ、製品幅、加工の技能力などをアピールする。

 例えば柏木工ではこれまで30分の見学コースを用意していたが、今年は倍の1時間にわたり工場を案内、技能、製造工程への信頼を強め、取引の拡大につなげたい考えだ。「私たちがどういう想いを込めて作っているのか、来場客にしっかりお伝えしたい」と代表取締役社長の関ひろみ氏は語る。

 昨年に引き続き、10月24日18時より「ふれあいパーティ」を開催する。全国の小売店をはじめ家具メーカー、商社、ハウスメーカー及びインテリアコーディネーターなどを招待し、出展メーカー各社と来場客が情報交換や懇親を深める場としている。会場は飛騨・世界生活文化センターで、高山駅の西口から無料のシャトルバスが運行予定。参加は飛騨の家具フェスティバルのホームページから予約が必要(下記リンクを参照)で、参加費は千円。

 メイン会場では各日異なるテーマでトークショーや勉強会を開催。「人がつくる」をテーマに、様々なゲストを招いてトークイベントを企画している。高山市長の田中明氏、高山市議会議員の戸田柳平氏を招いて、モノづくりが人及び町をつくるといったテーマに沿った座談会や、高山地域の家具メーカーと異業種メーカーによる対談「サーキュラーエコノミーの観点からこれからの工業製品のあり方を考える」など、14のイベントを開催する。

 開催初日、二日目にあたる土日では、市民向けに「飛騨作り手市」も開催する。飛騨高山中心に活動している作家が出展し、クラフト品の展示、販売を行う。ガラス、小物、彫刻やアクセサリーといった、空間コーディネートにも活用できる飛騨産のホームファニシングがメイン会場に並ぶ。

低迷する消費、ルート多様化で打開求めるメーカー

 昨年は展示会時期に、飛騨高山地域においてもコロナやウクライナ問題の影響で木材価格が上昇、各メーカーとも値上げを迫られる状況にあった。そこから1年が経過し、現在は脱コロナによるエンドユーザーの消費性向の変化や、昨年から続く原料高、物価高を背景に、主に家具販売店が売り上げ減に悩んできた。

 当然、家具販売店との取り引きが売り上げの大半を占めるメーカーは出荷額が減少、飛騨高山のメーカーも例外ではなかった。特に今年度の上半期に前年割れのメーカーが出た一方、大手ハウスメーカー合同による販売会の再開や、自前の技術を活かした特注家具提案で、コントラクト市場での受注を果たし、徐々に巻き返しを図る企業など明るい傾向も出てきている。このような市場の状況を受けて、各社の取り組みも多様化している。

 飛驒産業は、昨年秋、高山市に直営店をリニューアルオープンした。アウトレット館の2階のスペースに、コントラクト向け提案エリアも新たに設置した。コントラクトの占める売り上げの割合は、今や全体売り上げの2割を超えるという。フェスティバルに向けて同エリアも改装を進める。具体的には、今年の4月に出展したオルガテック東京のブースをこのスペースに再現するという。住宅とのボーダーレス化が進展するオフィス市場の需要を取り込む狙いだ。また、非住宅市場向け納入事例の冊子配布も行う。一方、直営店での販売比率も堅調に推移しているという。多角的なアプローチで、自社家具の良さを周知する取り組みが功を奏してきた。

 シラカワも特注家具の提案に注力し、レストランからの受注を進めるなど、下期は好調なスタートを切った。上期の不調を取り戻すべく、チャンネルの拡大も含めて営業強化している。ハウスメーカーの販売会も再開したため、止まっていた新築納入需要の取り込みも復活した。

 一方、同地域ではパナソニックハウジングソリューションズと協力し、経年変化を意図的に進める技術を家具に応用することで材の色合いを変化させ、これまで使われてこなかったイエローポプラや、ホオノキを活用するなどし、他業種の技術を取り入れるといった飛騨高山の若手経営層ならではの挑戦的な取り組みも進む。

 その他、飛騨を代表する他のメーカーも、販路拡大への模索は続く。特に売上比率が家具販売店に大きく依存する企業にとって、他の販売ルート開拓は喫緊の課題ともいえる。だが、一方ではハウスメーカーへの営業、スペックイン活動には相当な人員を必要とするなど、人手不足により活動できないジレンマもある。コントラクトも同様だが、飛騨の家具フェスティバルには、多様なルートの関係者が年に一度、集結する。参加出展する各社ともに新規チャンネル、新規顧客を得て、商機に結び付けられる祭典が始まろうとしている。

(長澤貴之)