オープンハウスグループの暮らし提案 ボーダレス、可変性が求められる現代の住空間

 オープンハウスグループ(東京都千代田区、荒井正昭社長)のグループ会社であるオープンハウス・ディベロップメント名古屋支社が、新築分譲住宅として、家庭用サウナ付きコンセプトハウス「インドア派のためのアウトドア住宅」を2023年9月16日より販売開始した。室内のインテリアは、弘益(愛知県清須市、武藤茂樹社長)の協力のもと、同社が手掛ける「普段使いもできるおしゃれなアウトドアブランド」として人気を博している「HangOut」の製品を中心に取り入れている。昨今の新築住宅にはアウトドアリビングの概念のもと、外と中の空間をより一体化するような提案が目立つ。オープンハウスグループに、同社における室内外の空間づくりについて取材した。

 「最近の建物の傾向ではボーダレス化が図られています」と語るのは、オープンハウス・ディベロップメント建設事業部設計部 デザイン開発グループ上席課長の佐藤博純氏。インテリア全般もそうだが、建築でも敷地と建物、間取り、建物の形状にフォーカスをあてた建造物が数年前までは目立っていたが、昨今は”余った敷地の余白の空間”を、どのように建物に取り込むかという考え方が、徐々に発展してきたという。バルコニーと室内とのボーダレス化が進み、その空間をどのようにしてプランにしていくかといったことや、インテリアと協調させていくかといったことに、より重きが置かれてきている。

 「LDKという概念も崩れつつあると思います。昨今はダイニングルームではなくリビングで食事をとることも増えるなど、暮らしがボーダレス化しています。極端に言えば、バルコニーで仕事をするという意識も増えてきており、”仕切る”という概念が崩れてきている気がします」と佐藤氏。暮らし方の”イノベーション”が、この数年間で進んできていることを肌で感じているという。

 オープンハウスは、グループ全体で年間販売件数は戸建てが1万ほど。特に約6割が建売としてのもので、残りが注文住宅だ。建売の商品については、色や仕様、素材などを厳選し、一次取得層をターゲットにしている。なお、建売商品のインテリアには、家具は付帯していない。

 オプションの販売会は約2年前から毎月定期的に開催しており、ターゲットは建売商品の顧客だ。商品の規格などは、オープンハウスでも調整はしているが、基本的には協力会社に任せている。企業としては現状、土台となる不動産業をしっかりと手がけていくという方針のもと、アウトソーシングで数社に委託しているようだ。最近はインテリアコーディネーターを外部委託の形で発注しているという。同社の顧客層では、置き家具については新しく家具を購入したいという層よりも、引っ越し前に使用していた家具を持ち込むことを前提にしている。

 佐藤氏は、「業界として考えると、いわゆる置き家具”に特化しているので、そこのイノベーションが起こらないと大変なのかなという印象を受けます。外資の家具メーカーさんや建材メーカーさんなどもアウトドア系などの家具に参入していらっしゃりますし、ボーダレス化も含め、ファッション業界や、外にマーケットをのばしたいという企業が多いのだと思います」とし、「アウトドア系の家具は、耐久性の強度検査などについては、室内向け家具とは考え方が異なります」と語る。屋外に置けるようなソファでは、フランス製のアウトドア専用のファブリックを使用しているメーカーもある。

 ストックマーケット自体も増えてきており、リフォーム需要も増えてきているようだ。「家具を買う楽しさ、家が建つまでの小物やカーテンなど、コーディネーターとの打ち合わせなどを通しながら、お客様のモチベーションを保つことが、業界全体としてもサービスにとっては大事かと思います」(佐藤氏)。かつてガーデンデザイナーとしての職にも就いていた同氏は「ガーデンデザイナーとしての仕事のなかで、ガーデンとインテリア双方の相談をうけたりもしました。日本の縦割りの動きを合流させないと、お客様に対して不親切になっていくのではないか?と考えをもっていました」と述べた。

 今後の建築空間に対する志向性については「ボーダレス、可変性」をキーワードに挙げる。リビングで食事をとってくつろげるような空間であったり、昇降型のテーブルであったりといった”可変性”が大切になるだろうとし、「業界全体として家具のみならず、建材メーカーとコラボしてもいいのではないでしょうか。建材系と家具メーカーとが共同で商品開発したほうが、資材の仕入れなど様々な要素について、建材メーカーと家具メーカーが情報交換することも重要だと思います。大きな資本と組んだり、開発のノウハウやマーケットを共有したりといったことは大切ではないでしょうか。産業構造を変えるだけで、今の倍ほどのマーケット力はあると、個人的に思っています」と語る。

 ポストコロナの時代、働き方や暮らし方は非常に多様化し、まさに“ボーダレス”な社会になりつつある。そのような中で新たなニーズに応える企画等、オープンハウスではグループならではの連携をとった取組を進めている。今後の同社の新たな住まい提案の企画にも注目が集まる。

(佐藤敬広)