アルテジャパン ガラス+異素材家具にも注力 家具店への再展開はあるのか

アルテジャパン(東京都新宿区 坂義臣社長)はミラーを扱うメーカーのイメージだが、もともとはガラスを中心とした異素材家具の製造・販売が同社の出発点であった。42年前より、オーダーミラーの展開強化に成功して以来、売り上げの40%以上を占めるに至ったが、異素材家具の展開にも変わらず注力している。

前社長の矢野廣文氏は1970年代、異素材家具であるスチールの脚部にガラス天板のテーブルを持って日本全国の家具店をまわった。当時ガラス天板の家具は珍しく、大いに売れたという。モダンなデザインと、視界を遮らず、限られた空間に圧迫感を与えない点が評価された。しかし近年、ガラステーブルはこのような家具店に対して出荷が伸び悩んでいるという。10年以上前に問題となった強化ガラステーブルの暴発事故以降、バイヤーは敬遠しがちなのではないかと坂社長は分析する。当時、海外製の強化ガラスを使った家具の暴発事故が日本全国で起こった。消費生活センターへ相談が殺到し、ガラステーブルのイメージは落ち込んだ。

強化ガラスは、高温で熱して焼きを入れ、冷ますことで強度を得る。ちょうど刀を鍛える工程とよく似ている。その工程に不備があると、気泡や異物が混ざり、経年や環境により暴発する恐れが出る。そのため、製造工程の最終段階での試験は必須であるという。一部の海外メーカーでは、この工程や試験が不十分だったことから事故が連発したのではないか、と坂氏は語る。

事故以降、販売店から同社のもとへも多くの問い合わせが寄せられた。同社製品は強化ガラスを使っていないため暴発することはなかったが、安全性を訴求する説明に追われた。強化ガラスは、薄くて面に対して強いという利点があるが、小口、すなわち側面部分からの衝撃に弱い。同社のガラステーブルは小口が露出するデザインが多いため、強化ガラスは採用されていない。代わりに、ガラスに厚みを持たせることで強度を確保している。説明に努めてきたが、イメージダウンや、購買マインドの冷え込みは避けられなかったという。

流通チャネルでは逆風が吹くが、消費者の反応はもう少しポジティブだと同氏は語る。
「ハウスメーカーのインテリアフェアなどに出展すると、明らかにエンドユーザーの目を引きます。探している人の潜在数は多いと感じます。」

同社はオーダーミラーのイメージが強いため、業界のプレイヤーもミラーの提案から入るが、ショールームを訪れて異素材家具のラインナップに皆驚くようだ。スチールや大理石、フィリピンのマクタンストーンなどとガラス天板を組み合わせたものをとり揃え、今後新たな素材での開発にも意欲を示す。
西洋と異なり、木造の住宅が多い我が国では木製家具が中心に採用されがちだ。しかしライフスタイルが多様化するに従い、同社のような異素材家具がどのように市場に再評価されていくか、注目が集まりそうだ。

(長澤貴之)