ニトリ、良品計画 オルガテック東京に初出展

ニトリ 法人部門の躍進・攻勢の背景を訊く

ニトリ(札幌市北区 似鳥昭雄代表取締役会長兼社長)はこのたび、オルガテック東京2025に初出展を決定した。住宅向けのエンドユーザーへ直接販売するイメージが強い同社だが、ここにきて非住宅市場に向けた動きが活発になっている。今回出展に踏み切った背景には大別して3つの理由がありそうだ。

1つは、非住宅市場を担う「法人&リフォーム事業部門」のオフィス向け売上が拡大してきたことが要因としてある。ニトリグループ全体から見た同部門の売上構成比は2%弱だが、2024年度は160億円に達した。その内、「オフィス向け」の売上額は前年から1・5倍の伸びをみせ、寮のリフォーム等を対象とする「住環境向け」に次いで2番目の売上高に達した。今年度は、オフィス向けが部門内で最大シェアとなる可能性が高い。近年、同部門へ直接の問い合わせが増加し、オフィス市場向けの売上に結実してきたが、今後はニトリ側から提案を行う積極攻勢に転換、売上を拡大する狙いだ。

もう1つの理由は、国際ホテル・レストラン・ショーへの出展が契機だ。同社が非住宅市場に向け露出を高めたのはオルガテックが初めてではない。宿泊施設や飲食店の施主が集まる同展には、2024年から2年連続で出展を続けている。そこでは、造作対応や客室の什器を含めてアレンジできるというトータルコーディネート力に多くの評価、反応が集まった。オフィス市場に転じても、一定程度の受容が進むのではないかという期待感が理由だ。事実、現時点でも設計事務所等との打ち合わせで造作家具のリクエストを受けることがあるが、同社はこれに対応できることを訴求して好感触を得ているという。また、バックルームは価格を抑えた家具を入れ、費用をかけるべきエリアには意匠性の高い造作家具を提案するといった、同社ならではの価格レンジを活かした提案も好評だ。

これに伴い、オフィス市場にみられるタイトな納期リクエストにも対応が進む。出荷の多い製品は在庫対応が可能な一方、造作や独自の張地交換などのオーダー品については物件毎の工程把握、管理により納期から逆算して生産することでニーズに応える動きがはじまっている。

3つ目の理由はマーケティングだ。同社のオフィス市場でのビジネスモデルを固めるべく、オルガテックで施主、プロユーザーの反応を探る。自社へのイメージを再度把握し、また気づけていないニーズの掘り起こしにも期待を寄せている。来場者のフィードバックを受けて、将来的には需要に合致したソリューション提案に繋げたいとした。

今回は2小間の出展で、共用ラウンジ用ソファをメインとして展示する。執務スペース向けのデスクなどは画像等で見せる。同社マネジャーはインタビューに応じ、「他社もデスクやチェアは取り扱うでしょう。ニトリはありがたいことに多くの店舗を展開できていますので、私たちがデスクやチェアを扱っていることは皆さんご承知でしょう。ですので、今回はプランニング、内装工事含めたトータルコーディネートを訴求して参ります。来場者の皆様には是非、ニトリのトータル提案をご覧になって頂きたく考えます」と自信を見せた。家具業界の最大手が、変化を続けるオフィス市場にどのように躍り出るのか注目していきたい。


テーマは「愛着」 良品計画も非住宅市場拡大へ

良品計画(東京都文京区 清水智社長)も今年、オルガテック東京に初出展を決めた。

無印良品やIDEEショップなど一般消費者直販のイメージが強い同社だが、2022年に法人営業部門である空間設計部を立ち上げて以来、ホームページを経由した案件対応を中心に事業拡大を続けてきた。また、法人向け空間サービスのコンセプトを体感できるよう、デザイン事例と開発製品を集めた空間を本社ビルの1階、5~7階にオープンすることでライブオフィスも開始し、好反応を獲得している。このような自社呼び込み型のイベントに留まらず、オルガテック東京への出展を皮切りに対外活動を本格始動させ、コントラクト市場でのプレゼンスを高めていきたい狙いだ。空間設計部の営業担当坂井陽平氏は、「オフィスへの回帰が進む昨今、その空間で働く意義が問われています。従業員のエンゲージメントを高めていくことが求められている今日、お施主様、設計事務所様と一緒に空間創りを考えていきたく思います」と述べ、オフィス市場に向けて自信と意欲を見せた。

出展ブースは法人向けに開発された什器・家具・内装材を展示する「空間商材」エリアとすべて無印良品の製品で構築されたプランニングサービスを展示する「空間設計」エリアに分かれており、全体のテーマを「愛着」とした。オフィス空間における家具・什器に愛着をもって使ってもらうことを念頭においてのことだ。出展スペースは160平米で、下階の中で最大ブースとなる。

空間設計部はコントラクト市場に向けて、大別して4つのジャンルを展開している。ロッカーやチェア、スチールラック等の「什器・備品」、木の壁や床材、リネンの壁紙などの「内装材」、キッチン、洗面台といった「設備」、そして国産材、オークやウォルナットなど様々な樹種の集成材に代表される「素材」。いずれも会場に展示し、同社の可能性、提案の幅を訴求するが、今回は中でも「素材」にフォーカスし、「素材を活かしたボードシリーズ」を中心に展示する。もちろん無印良品やIDEEブランドのプロダクトも組み合わせて提案、納品も可能だ。また、同社内で特注什器の製品デザインも可能なため施主、設計事務所の要望に従い、造作対応ができる点についても訴求したいとした。

一方空間設計エリアでは、同社製品を組み合わせてつくるオフィス空間を見せることで、非住宅市場における空間ソリューション事例を来場者に向けて発信する。また、同社の非住宅市場へ向けたアプローチの一環として、無垢天板のオイル塗を施主と共に行う、など施主参加型のオフィスづくりを提供するサービスもある。オフィスへの愛着醸成を促す取り組みで、同エリアでは動画を通してプロセスの紹介がされる。

また、「空間商材」スペースと「空間設計」スペースを区切る木製の仕切りも見どころだ。シェルフとしても使えるアイテムで、展示会後の用途も考えながら設計した試作展示となる。それもまた、展示テーマの「愛着」に沿ったものだ。本製品は今年中の発売を目指している。

(長澤貴之)