【インタビュー2023】ケルンメッセ インターツムディレクター マイク・フィシャー氏 -Interzum Director Maik Fischer Interview-

コロナ乗り越え、4年ぶりにインターツム再開

――ウクライナ戦争や、物流問題、環境問題など世界を囲む諸問題、不確実性は今後も続く見込みですが、これらは家具産業にどう影響を与え、そしてインターツムはこれら問題へのソリューションとなりうるでしょうか。
マイク エネルギー問題は特にヨーロッパにおいて顕在化しております。そしてウクライナでの戦争や3,4年続くサプライチェーンの問題は、世界の家具産業、そしてサプライ企業に影響を与えるものに違いありません。しかし世界各国の出展企業からヒアリングする限りでは、彼らは非常に首尾よく諸問題に対応している印象を受けます。個別に国を見ていくと、問題に直面している場面ももちろんありますが、おしなべてみると彼らのビジネスは好調であるとみています。
なぜなら、ヨーロッパや北アメリカが特にそうですが、このような状況下においても家具の需要は底堅いからです。さらには、様々な国で政府による住宅支援施策が実行されており、このことが需要を加速しています。よって世界的な観点で見るとこの業界は現在よく議論されている諸問題にある程度対応できているという認識です。本展は家具のサプライ業界が主役ですが、彼らは日々、質問にあったような諸問題を常に念頭に入れ、イノベーションを盛り込んだ製品を家具メーカーに供給し続けています。それが結果的に、時代に合った新しい家具と新しい家具需要を生み出すことでしょう。


――インターツム2023で特になにを見ることができるでしょうか。
マイク インターツムはグローバルレベルで家具産業のサプライ製品を一度に見られる展示会です。この規模でここまで多彩な企業と製品が集まってくる展示会は、インターツムをおいて他にありません。メーカーやデザイナーの皆さまは必ずインスパイアされるものがあるとお約束します。
そして今年のインターツムはコロナの影響で実に4年ぶりの再開となり、大きく盛り上がることが期待されます。現在、60カ国以上、1,400社の出展企業が見込まれております。(3月時点)
前回の2019年は1,800社もの出展企業が集まりましたが、これは60年の歴史の中で最大の成果でした。さすがにこの水準には及びませんが、4年ものブランクがある中で既にこれほど集まっているのはサプライ産業からの力強いサポートと要望があるからにほかなりません。彼らに「インターツムは家具部材産業の中で最も重要な、情報収集及びコネクション醸成のプラットフォームだ」と認識してもらっていることは、我々にとって大きな原動力となるのです。
今年もまた、世界市場に出回る最新の家具部材がどのようなものなのか知りたいとしたら、それはインターツムでご覧になれる、そう胸を張ってお伝えします。最新のデザイン、トレンド、イノベーション、そして製品を通じて環境保護、気候変動の問題に企業がどう対応しているのか。プロダクトをよりサステナブルにつくっているか、どうサーキュラーエコノミーを実現しているか。これが今年のインターツムの注目のトピックスとなるでしょう。

――来場の目標値は具体的に決めていますか。コロナにより影響は出るのではないでしょうか。
マイク 来場者の人数はなかなか予測難しいですが、世界中の出展企業及び、過去の来場者様からヒアリングする限りではコロナを乗り越え、ケルンに戻ってくることを熱望されているという認識です。今年はとりわけ強い興味を持って頂いており、2017年水準の来場者になるのではないかと思います。最も革新的で、最も新しいものをインターツムにいって触れてくる、そしてかつてのように、出展社と実際に会える、会話でき、議論ができる。それはこの4年間、かつての来場者たちがずっと待ち望んでいたことなのです。
前回の2019年には、7万4千人が訪れましたが、これは史上最高の来場者数でした。今回は6万人以上を期待したいと思います。この数カ月、わが社で開催してきた大規模な国際展は復活しつつありますが、大なり小なり来場者数をコロナ前の水準に完全に戻すことはできていません。しかし、ショーのモチベーションを落とさぬためにも我々は購買の決定権者に注目し、このようなキーパーソンたちを積極的に動員、これに成功していると感じています。百万ユーロの購買を決定するのは、複数人ではなく、重要なキーパーソン1人であることを私たちは知っております。もちろん来場して何かを知って頂くだけでも有意義なことですが、強い購買権限を持った人を集中して呼ぶことの大切さもまた我々は充分承知しており、そのことを念頭においてトレードショーを運営しているとお伝えしておきます。

製造業者に加え、アーキテクト、デザイナーも必見の国際展
――インターツムは、「マテリアル・ネイチャー」、「ファンクション・コンポーネンツ」、「テキスタイル・マシーナリー」の3セグメントで構成されていますが、各セグメントでのトレンドを教えてください。
マイク 前述と重複するところもありますが、「デザイン」、「イノベーション」、「サステナビリティ」、この3要素はすべてのセグメントで注目のトレンドです。必ずこの3点は反映されるでしょう。
もう少し掘り下げると、マテリアル部門は新しい素材がたくさん出てくることが期待され、そのような素材がマーケットに対してどう受け止められるのか見ることができるでしょう、例えばリサイクル合板などです。我々が守るべき資源にどう向き合うかは1つの大きなテーマとなるでしょう。
コンポーネント部門について言えば、高機能性に注目が集まるでしょう。例えば、棚に内蔵するライティングのエネルギー消費効率や、キャビネットの組み立てやすさといったものです。テキスタイル部門はデザイン、そしてマットレス製造マシンの製造効率にも注目が集まりそうです。製造工程でのサステナビリティも外せません。リサイクルができるのかといった点も今年のテーマとなるでしょう。

――本展はどこのリージョンの来場者が多いのでしょうか。また、どのような業種の来場者に人気ですか。
マイク ヨーロッパと中国が多いです。全体の2/3はヨーロッパ全域から来られます。次いで多くの家具メーカーを抱える中国です。中国は海外への渡航制限も緩和しました。これまで数年にわたり、コロナの影響で事実上世界から切り離されたような状態になっていましたので、同地域からの来場者はかなり期待できます。残りの約1/4は南アメリカと他アジア地域、アフリカからが多いです。
来場の半分は、家具、キッチン、マットレスなどの製造関連です。また、デザイントレンドを感じて、インスピレーションを得る目的で、アーキテクトやデザイナーからの参加もどんどん増えてきております。

――日本の読者にメッセージを頂けますでしょうか。
マイク もちろん日本の製造関連の方々にも来場いただきたいですが、是非、アーキテクト(建築設計事務所)やデザイナーの方にも興味を持ってもらいたいと思います。私は日本のアーキテクトやデザイナーの間で、インターツムがどのようなイメージを持たれているのかわかりませんが、この展示会はインスピレーションを得るためにとても良い機会だと思っています。ヨーロッパをみても彼らの多くはまだインターツムに来場いただけていません。しかしひとたび訪れると、みな口をそろえて、「なぜもっと早く訪れなかったのだろう」と言います。インターツムはこのような人々にとって新しい気付きや発見を与えるのだと改めて認識しましたので、私たちも近年、こういった人々の動員に力を入れています。是非機会があれば訪れてほしいと思います。(聞き手 長澤記者)

インターツムの公式ホームページは以下のバナーより。