【インタビュー/オルガテック東京2023】ケルンメッセ日本法人 代表取締役社長  髙木誠 氏

テーマは「Shift Design」 働く空間、時間をデザインする時代を見据えて

――前回(初回)は業界全体に多くの反響がありました。これを受けて今回、どのようなことを発信していきたいかお考えを教えてください。
髙木 まず、前回展は70年近い、ドイツオルガテックの伝統を日本に持ってきて、日本のマーケット・プレイヤーに体感してもらいたいという狙いがありました。その試みは一定の成果を上げたものと感じています。そして今回の開催テーマは、「Shift Design」としました。そもそもデザインには様々な意味があります。日本では一般的に工業的なデザインの意味合いでとらえがちですが、空間や、時間軸でとらえるなど、デザインには本来多義的な側面があります。オルガテック東京を通じて、デザインの持っている力を訴えかけ、デザインによってワークスタイル、ワークプレイスをどのように変えていけるだろうかという問いかけをしていきます。来場者にはワークスペースやワークスタイルに関わるあらゆるデザインをワンランクアップさせる体験をして欲しいと思っています。

来場者は今、多様な就業環境にあると思います。在宅ワーク中心の人もいれば、出社の多い人もいるでしょう。自分たちの働いている空間や時間をどのように改善していけるか、そのヒントを彼らに与えられるようなイベントにしたいと思っているのです。


――2023年以降のオフィス家具市場の見通しをどうお考えでしょうか。
髙木 コロナがはじまって3年経ち、ようやくマスクが外せる状況になりました。この間オフィスマーケットもこの3年で大きく変化しました。自社ビルの売却や、オフィススペースの縮小といった動きと同時に、ホームオフィスにシフトする流れもあったと思います。コロナ直後は、家にいなければいけないとか、外出できないからこうしようというのが行動の前提にあり、否応なしにこのような働き方になっていましたが、これからは新しいワークスタイルを各々の会社が自らつくっていくというフェーズに入ったと思います。例えば経営者の中には、社員をオフィスに戻したいと考える人もいて、そのためには社員にとって働きやすい就業環境を整えられるかが問われています。労働者がついてこなければビジネスは動きだしません。会社に対しての新しい「求心力」が求められる時代になってきています。
日本のオフィスは、玄関は立派だけれども、スタッフが常駐する空間は「二の次」な会社がまだまだ多くあると思います。社員のウェルビーングという観点で見ると改善の余地があり、今後スタッフの就業環境にもっとフォーカスしていくトレンドは一層進むでしょう。
オフィスにも戻れるし、在宅もできるなど、選択肢が増え、より自由に働ける時代になってきました。企業は社員に対してどういったワークスタイルを提供すべきか考える時代になったとも言えます。個人が結束してチームとなり業績を上げていく上でも、また優秀な人材を集める上でも、どのように就業環境をデザインしていくのか、いよいよ多くの企業が本腰を入れ始めました。この胎動は、オフィス家具市場の拡大の余地を示していると私は考えます。
もちろん、紛争や原材料の高騰の問題等、ネガティブな要素もありますが、かつてなかったアイデアによって、さらに良いものを生み出していける市場環境状況にあると思います。


――20年近く前には見られなかった現象に思えます。経営層が労働環境に気を配りはじめたのは、人手不足も背景にあるのでしょうか。
髙木 人材をより大切にするマインドが高まったことが背景にあるのは間違いないと思います。人は一度いなくなると、いざ呼び戻すことは難しいものです。例えば外食産業や旅行業界はコロナの影響で人員削減をしました。しかしいざコロナが落ち着いたから人を増やそうとなっても、十分に職業訓練された人材は、削減時に離れてしまっており、再度確保するのが難しいという問題があります。経験者が流れ出るのは大きな損失であることが社会に広く認知されてきたのだと思います。オフィス環境や働きやすさに焦点が集まっているのは、現代の経営者がこのことに一層真剣になってきた証だと思います。


――家庭用家具メーカーがオフィス市場に注目しています。このことについてどう思いますか。
髙木 オフィスと自宅のワークスペースの垣根は、このコロナでかなり崩れたと思います。ですので、オフィス家具メーカーからも在宅で使えるようなプロダクトが多数出て来ました。家でも快適に仕事をしたいということで、新しい需要が創出されています。
一方オフィスを従来のスチール家具の空間から、もっと心地よく、快適な空間にしたいという要望は高まり、オフィスの空間そのものが変わってきているので需要が生まれている証拠だと思っています。


――オルガテックは海外出展社、来場者も多いですね。海外に向けてどのような発信が求められていると思いますか。
髙木 主催者側としては、情報発信をできるだけ英語でしていってほしいと感じています。
ドイツは10年程前に、IoT技術、ネットでの可視化に注力をしたインダストリー4.0を導入しましたが、当時の注目度程世界に波及していないのが現状です。理由の一つに、英語での情報発信があまりなかったというのがあります。トレードショーでも同じで、英語で発信していかなければ消費者まで届かないのです。日本語でまとめた情報を英語でも発信するというのは大前提だと思います。どんなにいい商品があっても理解してもらわなければスタートラインに立てません。
また、オルガテック東京ではデジタルプラットフォームを導入し「My ORGATEC TOKYO」と名付けました。これを大いに活用してほしいと思います。私たちが目指しているのは、このプラットフォームをつかってコミュニティを形成することです。展示会が終わっても、来場者と出展社が繋がり続けるというものです。これは来場者が来場登録をした後に使えるようになります。相手の担当にもタップ一つで繋がることができます。来場者のバッジにQRコードが印字されますので、名刺代わりに情報スキャンをし、クラウド上でつながりをキープすることも可能です。また、出展者が同日のうちに来場のお礼や翌日のイベントの情報を配信することもできます。こういったツールを積極活用して、海外発信にも役立てて頂きたいと考えます。


――設計事務所、デザイナーが来場者として多いとのことでしたが、今後狙いたい他の動員先はありますか。
髙木 できるだけ若手に働きかけをしたいなと思っています。若手のデザイナーもそうなのですが、設計の勉強をしている学生も巻き込んでいきたいと思っています。これから社会に出てくる世代は、私たちと考え方や価値観が良い意味でも異なると思っています。そういう人たちの意見も取り込んでいきたいと思っていました。本当は今年、各大学に向けて提案をしたいと思っていたのですが、思った以上に出展スペースが足りなくなったため、2024年に実施したいと計画しています。


――その他、セミナーも計画されていると伺っています。
髙木 実は今回、主催者セミナーは内容の充実度は維持しながら、数は減らす予定です。前回は(主催者セミナーを)6回開催しました。しかし想定外なことに、来場者は皆、つくりこまれたブースに魅せられ注目していて、ひとたび担当者と会話が始まると内容の濃いディスカッションが長時間にわたり行われている場面が数多く見かけました。よって今年は、主催者セミナーに関しては思い切って3つに絞りました。もちろん、出展者セミナーは別枠でご用意しておりますので、こちらも期待していただきたいと思います。セミナーの詳細については、オルガテックの公式サイト、並びに先述の「My ORGATEC TOKYO」にて順次更新して参ります。


――髙木社長、貴重なインタビューをありがとうございました。第二回開催の成功を応援しております。(聞き手 長澤記者)

オルガテック2023 WEBサイト:https://www.orgatec-tokyo.jp/

ケルンメッセ日本法人 WEBサイト:https://www.koelnmesse.jp/