【インタビュー2023】日本家具産業振興会 IFFT委員長/冨士ファニチア 取締役会長 布川徹 氏

ホームユースの垣根を超えた国際展へ 海外バイヤーの招致に注力

 ――先々月の6月から、次回の東京国際家具見本市(以下、IFFT)の出展を開始されました。前回の3月開催は初めて日本経済新聞社(以下、日経)との共催ということで、手ごたえを感じた点や、改善点などを踏まえたうえで、次回開催へむけた布川委員長の考えや思いをお聞かせいただきたいと思います。まず一つ目の質問ですが、来年開催のIFFTは、前回展とどのような違いをつけて開催し、進化するのでしょうか。
 布川 IFFTは、もともと「インターナショナルファニチャーフェア東京」の略です。この展示会を始めた当初は、「輸入」の海外ブランドを日本の市場に紹介するという展示会だったと思うのです。それに合わせて、我々も国内メーカーとして、全国の様々な家具専門店や百貨店などのバイヤーさまに向けた、製品のお披露目の場としてスタートしました。その後時代は円高となり、輸入は開催当初の目論見どおり、輸入家具がどんどん日本の市場に入ってきました。
 コロナ禍を経た上で我々が意図していたのは、久々のIFFTをどのような形で開催するかということでした。市場も変化し、国内メーカーは家具を海外に輸出していきたいとなり、新たに日経さんと組ませていただいきスタートの段階では、そのような「輸出」も見据えて展示会の開催に至りました。もちろん、コントラクト市場を含め、建築設計事務所やデザイナー、インテリアコーディネーターの方々など、幅広く手掛けていこうという考えでしたが、コロナがまだまだ終息していない段階で、海外からバイヤーの方々が来ることはなかなか難しい。そのため、前回開催では海外のバイヤーさまや海外からの出展社は全くといってよいほど無かったのです。
 そのような中で、ジャパンプレミアムファニチャー・コレクションやデザイナーズギャラリー、そして各種セミナーを開催したわけですが、いずれの催しも非常に評価していただいたと私は思っています。ただ、先ほども申した通り、コロナ禍が終息していない状態の中で、海外バイヤーの方々に来場していただけなかったこと。そして、出展された各メーカーさんの中には、昨年の出展募集の段階では「まだ展示会の開催は難しいのではないか」という考えでいらっしゃったところもあったと思います。海外バイヤーの数と、国内メーカーの出展社数がいま一つだった、というところが、反省点として挙げられるところではないかと私は考えています。
 日経さんと組む前は、メッセフランクフルトさんと2008年から2021年までご一緒に開催させていただいていました。その時代の展示会はというと、「メッセフランクフルトさんにおまかせ」していた要素が強かった展示会だったと思います。しかし、「このままではいけないのではないか、自分たちの展示会なのだから、きちんと自分たちでやろう」ということで、3月での日経さんとの共催展では、IFFT委員会としてメーカーが集まって協議を重ねました。家具専門店以外の新しいルートを開拓したいということで、先ほど申した建築設計事務所やハウスメーカーさまなどに声をかけ、新たな市場開拓という点では、出展されたメーカーさまにとっても成果があったのではないかとみています。
 来年についてですが、2024年のIFFTも大切な開催になります。「IFFT東京国際家具見本市」という冠をあげているわけですから、やはり海外のバイヤーさまおよび海外の出展社に、来場もしくは出展していただける形になることを希望しています。今は海外のバイヤーさまを呼ぶにあたり、どのようなアプローチをすればよいのかなどを、委員会で揉んでいるところです。
 ――次回は、海外のバイヤーについても、一定数来場する可能性が高いということでしょうか。
 布川 それを目指すため、勧誘するために動いていかなければいけません。すでにジェトロさんなどとコンタクトをとって、招へいに向けての作業も行っています。展示会全体として、東南アジア・欧米と継続的な取引ができるようにしていきたいですね。


 ――次の質問ですが、IFFTとしては今回もコントラクト向けの出展案内を前面に押し出されています。
 布川 まず、出展されているメーカーは、ホームユースを主軸に手掛けてきています。しかしこれからの時代はホームユースの製品に限らず多方面に展開していきたい。ということで、メーカーは設計事務所やデザイナーといったコントラクトなど新しいルートを模索していく必要があります。
 昨今の日本は、海外からの来日客にとっては魅力的な場所になっており、特に富裕層の方がどんどんと来られるわけですが、そうした方向けに商業施設やホテルなどにも、プレミアム感がないといけないと私は思っています。その点でいうと、今の商業施設やホテルは、とてもいい家具を使われているところが多いです。ただ、コントラクト市場の家具は格差も大きいですし、全体のレベルでいうと水準としてはまだまだだろうと私は思います。
 ――まだそのような「良い家具」が整っていない商業施設などのインテリアのレベルを引き上げるためにも、IFFTには意義があるということですね。来場者は前年にも増して、コントラクト関係の層が多くなりそうですか。
 布川 建築設計事務所の市場もそうですが、テレビ番組などの影響もあってか、こだわりの家を建てるユーザーが増えてきました。そのような住居に入る家具、そしてそれを選んでいただけるように、建築設計事務所やデザイナーに見てもらうこと。デザイナーの方々でも、国内の家具メーカーの商品をご覧になられていない、国内のメーカーのことをよく知らないという人は、割といらっしゃると思うのです。全国の家具メーカーの製品が一堂に会するIFFTの場ですから、そういった意味でも出展社、来場者の双方に有効に活用していただけると考えています。
 ――日家振として、来年開催の出展テーマなどの検討はされていますか。
 布川 ものづくり(デザイン・技術・環境配慮)といったことがテーマになるかとは思いますが、それをもう少しわかりやすい文言にしようということで協議しており、8月中には決まる予定です。しかし、必ずそのテーマに沿って出展してほしい、ということにはならないでしょう。最終的には各メーカーがIFFTにかける思いが、ブースに表れることになるでしょう。
 ――企画展示のジャパンプレミアムファニチャー・コレクションは、来年も行う予定でしょうか。
 布川 前回はかなり気合を入れながら、インテリア産業協会さんのご協力を頂いたおかげで大いに賑わいましたので、是非次回も行えれば、と思っている段階です。
 ――前回展では、デザイナーズギャラリー、アルチザンギャラリーといった企画展も行われ、若手などの発掘・成長の場が設けられていました。
 布川 地方で、まだメジャーになっていないようなデザイナーの方などのための場ですね。次回もそのような機会を設けることができれば良いなと、検討しています。
 ――同時併催展との恩恵などはありますか。
 布川 会期中に我々家具メーカーも、「建築建材展」などに出展している企業ブースを視察し、新しい材料を見つけるといったように、出展している企業同士のコラボというものは必ず生まれます。建築建材展はやはり建築設計事務所やデザイナーの方々が見に来られますし、ライティングフェアも同様です。我々IFFTのブースにも来ていただくことで、こんなメーカーや家具があるんだ、と認識していただくことができると思います。
 ――最後に、次回の開催にむけて、ひとことお願いします。
 布川 全国の方々が集まりやすい日本の首都である東京で、全国の家具メーカーが集まって展示会を行うということに、IFFTには大きな意義があります。そして、それに関係する方々が集まってくるというのは、絶対的な魅力だと私は考えています。ぜひ、東京ビッグサイトに集まって、日本の家具というものを日本全国、そして世界に向けて発信いきたいと考えています。

(聞き手 長澤貴之)