マルニ木工 セシリエ・マンツ氏の「EN」シリーズ、深澤直人氏の「HIROSHIMA」シリーズの新アイテムを発表 「MARUNI COLLECTION 2023」東京展

マルニ木工(広島市佐伯区、山中洋社長)は2023年5月25日(木)から6月30日にかけて「MARUNI COLLECTION 2023」新作展示会を、同社のmaruni tokyo(東京都中央区)で開催した。
今回の展示会では、新たなアイテムとして、セシリエ・マンツ氏が手がけた「EN」シリーズのチェアおよびテーブルの新色および板座のバリエーション、深澤直人氏デザインの「HIROSHIMA」シリーズのアームチェアに、アッシュ材モデルを追加、ジャスパー・モリソン氏の「Lightwood」シリーズでは、デスクとペーパーコードのチェアを追加した。

「EN」シリーズのニューカラー。左からマットダスティグリーン、マットラスティレッド、マットクレイホワイト、マットブラック

セシリエ・マンツ氏デザインの「EN」シリーズには、マットラスティレッド、マットダスティグリーン、マットブラック、マットクレイホワイトのカラーバリエーションが追加された。

特にマットラスティレッドとマットダスティグリーンは、マンツ氏が「この色を作り出してほしい」と要望したほど、こだわりのあるカラーだ。チェアは板座に加えて張座使用もラインナップしているが、マットラスティレッドおよびマットダスティグリーンの2色のチェアのファブリックについては、マットラスティレッドはTonus オレンジブラウンのみ、マットダスティグリーンはHallingdal ベージュのみ選択が可能。マンツ氏の「色」に対するこだわりが徹底されており、「EN」シリーズの中でもアーティスト色が特に色濃く表れた製品となっている。

新色は「EN」シリーズのテーブルの脚にも採用。ナチュラル天板とマットラスティレッドの脚といった組み合わせも可能だ。マンツ氏がMARUNI COLLECTIONのデザイナーに加わって以降、張地の色などについても、それまでマルニ木工では扱ってこなかったようなバリエーションが増えるなど、同社としても新たな発見が多くあったという。先日同社が出展したミラノサローネにおいても、来場者からはダスティーグリーンなどの「色」に対する評価が多くあり、好評だったとのことだ。

なお、会場1階では、マンツ氏の日本での初個展「TRANSPOSE 発想のめぐり」を開催。同個展はアートスペース「BaBaBa」(東京都新宿区)および、「maruni tokyo」の二か所で6月30日まで開催している。「maruni tokyo」では「05:A HINT OF COLOUR|色彩の意識」を展示。マンツ氏がどのような考えのもと創作しているか、マルニ木工のシリーズ「EN」のカラースキームなどの創作過程を垣間見ることができる個展となっている。詳細は以下のWEBページより。


「HIROSHIMA」シリーズのアームチェア(アッシュ)

先日開催されたG7広島サミットでも使用され話題となった、深澤直人氏デザイン「HIROSHIMA」シリーズのアームチェアには、アッシュ材を用いたモデルを新たに追加した。これにより、ビーチ、オーク、ウォールナット、アッシュの4つの樹種から選択可能となり、より幅広く訴求を図る。

カラーは左からナチュラルブラック、ダークブラウン、ナチュラルホワイト

新たに追加されたアッシュのカラーバリエーションは、ナチュラルブラック、ダークブラウン、ナチュラルホワイトの3色。


「Lightwood」シリーズ 「DESK120」

ジャスパー・モリソン氏デザインの「Lightwood」シリーズからは、デスクおよびペーパーコードチェアをラインナップに追加した。新たに追加された「DESK120」は当初、群馬県前橋市の白井屋ホテルが「JASPER MORRISON ROOM」として、モリソン氏の世界観を体現する一室を創り上げるために特注でオーダー。その特注品を商品化したものだ。ハの字型に取り付けられた脚が特徴となっている。正面からでも後方からでも、そのフォルムの美しさが際立つため、壁際に沿わせた配置のほか、受付カウンターのように配置することにも適するアイテムとして訴求する。

「Lightwood」シリーズ ペーパーコードチェア

ペーパーコードチェアは、見た目の優しい印象もさることながら、自然由来のペーパーコードを用いることで、脱炭素社会の推進にむけての取り組みになっている。使用を続ける中でたわんできた場合などには、修理なども入念に対応すると同社。環境負荷の小さいアイテムとして訴求する。新アイテムは、ハンス・J・ウェグナー作の名作チェア「Yチェア」と同じく、座面は封筒編みと呼ばれる手法で製作。やさしく少し沈み込むような座り心地が印象的な製品に仕上がっている。

封筒編みの座面

ペーパーコードの張り具合調整にも高い技術を要する同アイテムは、一脚の編み込み所要時間が約3時間から4時間ほどだといい、マルニ木工の製造スタッフが一脚一脚手編みで仕上げている。


開催初日の5月25日にはレセプションが開かれ、多くの来場者でにぎわう中、「MARUNI COLLECTION」のデザインを手がける深澤直人氏とセシリエ・マンツ氏が冒頭で挨拶した。以下、深澤氏とマンツ氏の話。

深澤直人氏

▽深澤直人氏の話
 みなさんこんばんは。このような会も4年ぶりの開催ということで、先ほどセシリエさんとも話していたのですが、「あまり長い期間、間が開いていたという感じはしないね」ということで、去年もやったような感覚でいます。コロナ禍の影響でミラノサローネも開催がずっと止まっていましたが、やっと1年前から開放し始めました。今日のこのように皆さんが集まれて、このような会を催せたことを、とてもうれしく思います。今日は来ていただいて本当にありがとうございました。
 2008年から私も「MARUNI COLLECTION」へと加わったのですが、今は世界を代表する木工メーカーとしてナンバーワンになりました。その当時はミラノサローネといっても、セシリエさんの出身のような北欧・デンマークなどは木製家具の聖地だったんですけれども、それ以外の地域というものは別の素材を使っている家具がほとんどだったのです。

 我々がこのような「MARUNI COLLECTION」の仕事を始めたのが2008年ですが、それ以降、新作をミラノで発表し始めてから、また木製家具のブームが戻ってきたということで、今は結構たくさんの企業が木製家具を作っているという時代になりました。それは、加工技術が高まったということで、通常はここにあるような椅子は一品製作、手作りで造らないとできないようなものなんです。

 しかしそれを工業化するために、手作りの感じを損なわずに工業化するという技術に、マルニ木工がチャレンジして成功しました。マルニ木工自体は90年の歴史がありますが、その中で培ってきた昔からの西洋家具の作り方を、マシンで製造するということを応用して、北欧のテイスト・作り方の難しいような家具を量産できるようなりました。したがって、毎年毎年丁寧に新作を発表しています。この「MARUNI COLLECTION」は、最初は私が入って、その後ジャスパー・モリソンさんが加わって、そして昨年セシリエ・マンツさんが加わりました。セシリエさんと一緒にやりましょうというのは、私とジャスパーさんとマルニ木工のみなさんとよく相談して決まりました。

G7広島サミットでは、マルニ木工が多くの家具製作を手掛けた。
ワーキングランチで首脳陣が座っているのが「HIROSHIMA」アームチェア。

 もうひとつ。数日前にG7の広島サミットが終了しました。首脳会議で家具が話題になるのはたぶん初めてだと思うのですが、「なんで『HIROSHIMA』という名前をつけたのですか」とインタビューで聞かれると思っていたんです。もし、その通りに聞かれたら、「いずれこのような日が来ると思っていたし、世界の平和に貢献するためだ」みたいなことを言わなきゃいけないのかな、と思っていたんですが…実際のインタビューでは「『HIROSHIMA』という名前は、誰でも知っているし、色々な思いがこめられているから、名前としてはふさわしいんじゃないですか」といった感じで答えました。そうするとやはり「平和を願っていたのですか」と聞かれたので、「まあ、そうですね」と。そうしたら記事の見出しには「平和を願う椅子」という風に書かれていて…ストーリーについては書かれていなかったのですが、まあ、相手が望むような見出しになりました。実際のサミットでも、和やかなワーキングランチの場で使われたので、とても嬉しかったですね。


 これからもマルニ木工をよろしくお願いします。今日はセシリエさんの日だから(笑)、私はこれぐらいで。ありがとうございました。

セシリエ・マンツ氏

▽セシリエ・マンツ氏の話
 日本は私にとって、とても特別な場所です。そして今回、私の作品の製作の過程を個展として見せられることをとても嬉しく思っています。「BaBaBa」および、「maruni tokyo」といいう、一つだけではなく二つの場所で見せることができるということも喜びです。「BaBaBa」では私のプロジェクトや、事務所の様子がご覧いただけます。そして「maruni tokyo」の1階では、私のワークプロセス、色に着目した展示がご覧いただけます。

 このような展示会を可能にしてくださったマルニ木工に感謝いたします。そして一緒にコラボレーションを行うことができているのは、何よりも喜びです。

 まだ1階の個展をご覧になられていない方は、是非ご覧いただければと思います。ありがとうございました。

(佐藤敬広)