【インタビュー2023】フライミープロパートナーズ 代表取締役社長 山根大三郎 氏 -FLYMEe Pro Partners-

インテリア業界の「リテラシー」向上にむけて

 ――昨年、フライミーの子会社として新たに会社設立となりました。正式な発足はいつ頃でしたか。
 山根 登記は昨年3月の設立ですが、実際に青山に拠点を構えて実働開始したのは昨年8月です。
 設立の経緯については、大きく2つの背景があります。一つは私自身の業界に対しての思いです。私はこれまで、くろがね工作所、日本スチールケース社でのBtoB領域での家具販売、そこからBtoC商材のボーコンセプトでのBtoB事業立ち上げに従事してきました。オフィス業界に携わってきた者として、時代の変化に伴い働き方が変わり、使われる家具のニーズが変わってきている中で、メーカー1社が持っている商品のポートフォリオだと、変化するお客様のニーズに柔軟に応えきれないのではないかという思いが、ずっと私の中にありました。もう一つは、この業界は商流が複雑だという点です。
 したがって、商材も商流も限られるとなると、お客様に合った最適なサービスを提供することが難しい業界だと思っていました。それらの理由から、よりお客様のニーズに合った最適な提案を提供するべく独立を考えていたのです。
 そのような思いをもっていたところ、フライミー代表の坂本と会う機会があり、同社が運営するECを単なる購買というファンクションだけではなく、ブランドを横断できるプラットフォームとして拡大していくことで社会貢献や業界を改革していくといった理念に強く共感しました。そのような流れでフライミーグループとして、BtoB領域に特化した子会社を設立し、社名をフライミープロパートナーズとして事業を開始する運びとなりました。
 ――坂本社長とお会いされてから、設立までの期間はスピーディーに進んだのでしょうか。
 山根 とても速く、数ヶ月で設立に至りました。初めて話をしたのが2021年の年末で、坂本が捉えていた業界の課題や、このような面を変えていきたいといったところの私の思いと合致しました。その中で、せっかく独立を考えているのであれば、一事業部内のラインとしてではなく、一つの会社として組織を任せたいということを坂本から伝えられ、短期間での設立が実現しました。
 ――商流、サービスの制約により、エンドユーザー側で自由に選べる手段が限られている=業界発展につながらないという課題から脱却したという点が大きかったのですね。
 山根 やはりその要素が、フライミー及び我々プロパートナーズが業績的に伸びている背景だと思います。この業界においての一般的な商流は、例えば付き合いのあるA社やB社に依頼をした場合、そこが扱える商材の範囲内での家具提案となるのが、この業界のスタンダードだったと思います。
 しかしフライミーの場合は1000ブランドを超える家具の取り扱い、ECを介した透明性の高い情報提供、容易なブランド横断を実現していることで、お客様がインテリアに触れる機会が増え必然的に「インテリアへのリテラシー」が向上していると思います。
 我々は現在、1000ブランド、20000を超える種類の商材を扱っており、それを適切に、属人的にサービスを提供しています。その点で言いますと、家具インテリア業界のリテラシーを上げる、お客様のリテラシーを上げる、そして最終的に良いものをお客様に届けることができるという点について、最善の形でアプローチができているのではないかと思っています。
 ――1000ブランドを取り揃えているとのことですが、その提案方法について教えてください。
 山根 主に施主様向け、設計事務所様向けの二つがあります。施主様、オーナー様から直接依頼をいただいた場合は空間レイアウト、ゾーニングからお手伝いさせて頂き家具提案を行います。二つ目は、主に設計事務所様からのご依頼のケースです。こちらの方が多く依頼がありますね。設計事務所様が施主様の意向を組み込んで、我々に依頼をいただきます。そこで当社が差別化を図り、業界に変化をつけているポイントについてですが、今までは安いもの、納期が早いもの、耐久性が高いものといったところにぐっと絞られた商品群の中で、選定をされていた印象です。しかしオフィス業界の最近の傾向としては、ユーザーはあまりその要素に拘っておらず、実際に求めているのは「社員が社に戻りたくなる、居心地の良いスペース、雑談が加速するスペース」といったところを基準にされている事が多いのです。
 したがって、カラーパレットを考えてみたり、材質の一貫性を考えたり、部屋の特徴とはどういうものなのかという自宅のリビングで実施するようなインテリアコーディネートの要素を意識し、我々は家具提案をしております。一つ一つの縦割りの家具の提案ではなく、一つの空間として捉え、家具の組み合わせをコーディネートするというところが、心地よさ、働きやすさを体現する上で我々の提案力で求められているところではないかと思っています。
 ――設計事務所がフライミープロパートナーズにコンタクトを取って商談に入る場合、先方が何か青写真を持ってくるケースか、それともすべて任せられるというケースの方が多いのでしょうか。
 山根 その点についてはケースバイケースです。デザイナー様の方でディレクションされる場合、プロットされている家具に対して近いデザインの家具提案を依頼されることもありますし、家具プロット及び、トータルコーディネートを依頼される場合もありますので、それぞれパターンがありますね。今現在は、全てお任せしていただくケースの割合が多いです。我々としてもその方が、事業体のサービスとしてもマッチングするので、戦略的にそこを攻めています。部分的なご依頼ですと、なかなか差別化が難しいという面も出てきます。例えば、依頼主が「A、B、C」の商品をまず使いたいから、それに合った家具卸業者から選定する。実はこのようなケースは価格面だけの比較になってしまうのです。やはり我々としては、当社の提案力を支持いただけるクライアントに対して積極的にアプローチをかけているので、提案型の依頼ボリュームが多いというわけです。
 ――フライミープロパートナーズ側から設計事務所側に営業をかけている、というわけではなくて、設計事務所側からどんどんとアプローチが来るのでしょうか。
 山根 今後はまた変化するかもしれませんが、現在はちょうど半々の割合です。今の商流の特性上「販売機会は自分で見つけてこないと案件は取れない」のが典型的なパターンです。当社も毎日アポイントを取るなど人的な営業活動にももちろん取り組んでいます。ただ、冒頭でもお話したように、「フライミー」は、単なるECサイト、購買をするだけのサイトではなく、ブランドの情報など様々な情報を入手できるプラットフォームとして、プロユーザーの方に活用されています。したがってそこから直接、「家具をこの案件でこのぐらい使いたい」といった問い合わせが多く入ってくるのです。このように、ECサイトを介して受動的に対応していくところが半分。あとは、新規営業及び既存ユーザー様に対して営業をかけていくところが半分です。今後の持続可能な成長を考えると、フライミーというプラットフォームがあるという担保性は、とても大きいと思っています。グローバルで見ても欧米はフライミーのようなプラットフォーマーがBtoBの市場に対して絶大な影響力を持っており、そこを避けては、今後BtoB市場を攻略できなくなるのは明白でしょう。
 ――今後はオルガテック東京のような展示会にも出展されるといった計画はあるのでしょうか。
 山根 そのような場への出展は、今後も考えられないのではないかと思います。当社は家具のブランドではありませんから、中立であることが根底にあるのです。出展することで、意図的に推していきたいブランドのプロモーションを行い、そこでの誘致をするということはできるかもしれません。しかしそれでは、そもそものフライミーとしての考え方とは、かなりかけ離れたところに行きついてしまいます。あくまでフライミーは中立の立場で事業運営することを心がけています。

オフィス動向の変化

 ――オフィスに限らず、コーディネートは飲食店や病院、教育施設など様々なケースを引き受けていらっしゃりますが、現状で最も割合が多いのはどのようなジャンルになるのでしょうか。
 山根 オフィスの割合が非常に多いです。それは私のバックグラウンドや、中途で入社したセールススタッフの経歴がオフィス家具業界であった、という面が大きいです。ただやはり、コロナの影響で働き方が大きく変わりました。冒頭でもお話しましたが、使われる製品もソファ、ダイニングテーブル、リビングチェア等ホームの要素が強い商材が多く使われるようになってきています。求められる商材が大きく変わってきていますので、ここは我々からするとチャンスであると思っています。我々の得意分野の商材を積極的にトレンドに合わせて組み込めるため、オフィス分野との相性がよく結果的に売上の過半数を占めています。その次にホテルです。コロナ禍が明けてインバウンドも増え、回復傾向にあることと、照明等小物の相性も良い分野なので積極的にアプローチをかけています。次に教育、そして商業施設という割合です。
 ――求められる提案の内容や家具の内容について、大きな変化を感じるのは、オフィスですか。
 山根 そうですね。今まで、9対1ないし8対2ほどの割合で、割合の大部分がデスクとそれに合わせる椅子と収納庫。そして残りの約1割が、お客様を迎えるためのレセプションエリアで用いられる家具や、休憩のスペースに使われる家具でした。しかし、今ではこの割合が大幅に変わり、5対5程度の割合でコミュニケーションスペースが増えています。完全に商材の動向は変わっていると思います。
 ――オフィスでも、企業によって要求される空間は異なると思います。企業の業種による傾向などはどのようなものがあるでしょうか。
 山根 例えば、会計事務所や弁護士事務所などのオフィスは固定席が多く、コミュニケーションエリアはあまり多くありません。しかし全体的な傾向としては、コミュニケーションスペース、カフェスペース等の社員間の交流を促すようなスペースがかなり増えています。特にベンチャー企業などでは顕著かもしれません。人の採用を加速させなければいけない業界は、従来に見られた固定席が圧倒的に少なく、目的に合わせた働き方が実現可能なスペース、居心地の良いスペース、交流が加速するスペースを意識的に増やしている傾向にあると思います。
 この傾向は今後も変わらないとは思いますが、これからの時代は企業のオフィスだけでなく、家庭やシェアオフィス、ホテル等といった、働く場所が増えていきます。したがって、家庭向け、コントラクト向けのどちらのメーカーであっても販売機会が増えるのではないかと感じています。
 ――オフィスに来たときは、自宅ではできないダイレクトなコミュニケーションのニーズが増えています。提案されている中でそのようなニーズを感じるでしょうか。
 山根 それは感じています。リモートワークが増えることは、企業への帰属意識に関わってきます。リモートワークでは、必要最低限以外のコミュニケーションが完全に遮断されますが、オフィス出社時は、予定がない時間を使ってカジュアルな話の中からプロジェクトの話になるケースもあります。しかしそれを感じる機会が失われているので、そのようなところを担保するために、コミュニケーションスペースを増やして偶発的な出会いを加速させるような場作りが求められるようになっています。

メーカーの知名度向上と販売力強化をサポート

 ――少し話は変わりますが、取り扱われている家具のジャンルでオフィスおよびホームファニチャーの割合はどれぐらいなのでしょうか。
 山根 いわゆるオフィスファニチャーと呼ばれるものは2、3割ほどで、ホームファニチャーが圧倒的に多いです。ただ、昨今ではオフィスファニチャーとホームファニチャーの垣根がなくなってきています。またプロの方も、ブランドの情報を取得してアップデートする機会が少なく、海外の著名ブランドでも知られていないことが多くあります。これも商流がきちんと整備されていないことが原因だと考えています。
 今は、各メーカーにとっても良い意味で転機かと思います。知名度と販売力をどう上げるか。これらはメーカーが最も取り組まなければならない点ですが、知名度をどう上げるかは非常に難しい点です。我々フライミーのサイトは、ホームファニチャーブランド、コントラクトブランドを横断でき、更に日本全国から色々な方に、プラットフォームとして活用していただいているので、最善、最短のブランド認知拡大が可能です。
 販売力については、特にBtoBの領域ですと、家具業界は良くも悪くも属人的です。故に戦略的に各セグメントに合ったセールスを採用、配置することで属人的な販売力を担保しています。メーカーの各製品がECサイトに載ることで知名度が上がり、結果的に属人的な販売力も向上するものと考えます。知名度と販売力の二つを解決できる点が、我々のフライミーグループならではだと自負しています。
 ――最後にお伺いしますが、家具インテリア業界をより魅力的なものにする、つまり若手がそこで働きたいと感じる、あるいはエンドユーザーの消費関心がそこに向きやすくするためには、どのような取り組みが必要だと考えますか。
 山根 先ほども申した「インテリア業界全体のリテラシーを上げる」ことが一番だと思います。今は「何をどこで選べばよいのかわからない」といったように、情報がかなり不透明なことや、よい商材でもデザインの悪いサイトに陳列されていることで購買意欲然り、業界の魅力を低下させてしまっているように思います。また、家具やインテリアを選ぶ際に、気になったメーカーのサイトへそれぞれ入って単品で探していくことには、限界があります。したがって、フライミーのように、高感度層にも支持されるデザインされたサイトで、ブランドだけでなくテイストや価格帯も横断して見ることができるサイトの存在が重要になってきます。まずはそのような透明性のあるサービス、情報をいかに我々が発信していけるかが鍵となるのではないでしょうか。
 BtoB、BtoCユーザーともに、様々なブランドをミックスして用途、コンセプトに合った空間を作りたいと思っています。メーカーによる個別のブランド戦略ももちろん大切だとは思うのですが、更なる業界発展のためには、メーカー毎の戦略に適した販売チャネルの選択、外部サイトを活用したブランド認知拡大といった事が必要なのではないのでしょうか。インテリアはやはり「組み合わせ」だと思うので、それを、まとめて見ることができる情報サイトでもあるフライミーのサービスがより発展していくことが、業界のリテラシー向上に直結するのではないかと思います。
 ――お忙しい中、多岐にわたってお話いただきました。業界の活性化、リテラシー向上にむけ、ますますの活躍を期待しております。

(聞き手 長澤記者)