【物流企業特集 2024年問題を問う③】TAKADA

家具物流企業向けプラットフォーム構築で業務効率化を

 物流業界をとりまく2024年問題は主に、長距離輸送を担う企業が中心で、TAKADA(さいたま市見沼区、髙田輝成社長)のようにラストワンマイル配送を中心とする企業は年間残業時間960時間に到達することは稀ではあるようだが、同社は業界全体に向けた物流ITの推進を通じて、問題の解決を提唱している。なおラストワンマイルとは特定範囲の地域で、家具販売店やエンドユーザー宅などに製品を運び、家具の設置まで請け負う企業を指す。

 髙田社長は2024年問題の根幹には3つの要因があるとした。1つは、運送会社と荷主の職務範囲の棲み分けが曖昧になりがちなこと、もう1つは、積み荷待ち、荷下ろし待ちといったロスタイムがあるということ、そして最後は、IT化が不十分であり、情報の整理がされてないことによるロスが多いことだという。

 職務範囲の棲み分けの曖昧さとは、例えば荷物の積み込み時、ドライバーは荷主の倉庫に入って積み込みを要望される、或いは、もともとバラバラになっているものから選別して積み込みを要求されるなど、本来であれば荷主側の職務範囲である業務を要望されることを指している。古くからの慣習で、そういった要求を受け入れてしまう運び手側も一定数いるようだ。しかしこれからはドライバーの数も不足していき、そのような商習慣も自ずと消えていくと髙田氏は語る。

 積み荷待ち、荷下ろし待ちのロスタイムとは、荷を積む・おろすまでに待機を命じられることによる時間のロスである。この問題はドライバーが現在どこを走っていて、何時何分に到着するかという情報把握が相互で進んでいないことが大きな要因で、IT化が進展するにつれて解消が可能だという。

 現在、多くの物流関連企業では積載率や積み荷情報、荷下ろし先情報は個別企業内での把握にとどまり、これを関連プレイヤー間で広範囲に共有する仕組みづくりが出来ていない。そのような情報を横断的に閲覧できるプラットフォームをつくることができれば、積み荷待ちや荷下ろし待ちのロスタイムを軽減するだけでなく、物流にまつわる諸問題の解決に大きく貢献すると髙田氏は語る。

 そのようなプラットフォームを構築すべく、伊藤忠テクノソリューションズと共に立ち上げたのがTriValue株式会社だ。プラットフォームが浸透すれば、例えば産地から各地方都市に家具製品を輸送する際、高効率の共同配送も実現するという。現状は、産地ごとに製品を集める仕組みはできているが、メーカーがそれぞれ独自に配送を依頼することも多いという。トラックの運行ルートや積載量を可視化することで、製品の混載も容易になる。一つの大型トラックにあらゆるメーカーの家具を混載できれば、メーカーがそれぞれトラックを依頼する必要もなくなる。結果的に物流企業の人的資源も効率的に活用され、通行車も最低限となり、CO2の削減にも繋がるという仕組みだ。髙田氏は、「物流業界の人材問題だけでなく、家具業界のコスト削減も実現できる。各社とも足並みをそろえ、業界全体で推し進めていくべきことです」と語る。

 しかし実現に向けて課題も山積する。主要都市および地方各都市に、参画する物流企業各社が積み替え等に使用できる共同の「バス停」を設け、バス停の状況含め、物流、そして製品の流れをITで可視化する必要がある。 

 ひとたび実現すれば、中継輸送等も容易化し、将来的にAIの高度化により高レベルの自動運転が達成されたとき、プラットフォームを通じて技術を最大限に活用することも期待できる。

 現段階では、受発注と荷物追跡までは構築が完了している程度で、プラットフォーム自体が実用段階に至るまでにはまだ時間を要するようだ。家具メーカーからは、今から実現を待望する声も多いという。原材料費、物流費ともに価格上昇の圧力が強まる中、ITによる効率化は歓迎すべき流れだ。また、家具は高額な商品が多く、輸送中に破損の恐れもある。スペースも多く取る。そのため家具を熟知する物流企業が集まるプラットフォームの構築は、業界の利益にもかなう。物流の進化が家具産業に大きな影響を与える時代になりつつあるのかもしれない。

(長澤貴之)