【物流企業特集 2024年問題を問う②】柳川合同 -YANAGAWA GODO-

自主基準で年間残業720時間未満に

 柳川合同(福岡県柳川市 荒巻哲也社長)は長距離幹線輸送を主な事業とする物流企業。売上の7割は長距離輸送が占め、毎月10トン車で約60台分の製品を柳川市から他エリアに配送、そのうち家具は約3割を占め、製品カテゴリとしては家電などをおさえて最も多いという。

 2024年問題では、2024年4月までに年間残業時間を960時間未満にすることが義務付けられており、各社とも対応を迫られている。九州から関東へ商品を運ぶような長距離輸送ビジネスでは、拘束時間は長時間になりがちだ。柳川合同に取り組みを取材したところ、同社では2009年から年間残業時間を720時間未満にするという自主基準を設けて取り組みを行っているという。同社が国の定める基準よりも低い値を設定するのは当時、長時間労働を原因とした事故が背景にあるという。荒巻社長によれば、事故再発防止、コンプライアンスの遵守を主眼として設けた自主基準であったが、車両の故障率も低下するといった副次効果もあったという。

フェリー輸送で残業時間削減すすむも、コストアップも

 多くの同業他社が2024年問題に備えてモーダルシフトに取り組みをはじめている。モーダルシフトとは、輸送手段をトラック等の車両から鉄道や船舶等に切り替えること。社員の労働時間を削減するだけでなく、環境負荷の低減効果も期待できる。その中でも同社はフェリーを積極活用しているようだ。具体的には、トラックごとフェリーに乗り入れ、北九州の苅田を中心に、大阪、神戸、有明、横須賀など全国各地に製品を運んでいる。ドライバーが同乗することもあれば、到着地でドライバーが乗り込んで残りの距離を走るケースもあるという。いずれのケースでもフェリー利用中は拘束時間とみなされず、残業時間の削減に繋がっているという。一方、コストという観点で見ると車両のみで移動するよりはずっと割高になる。同業他社もフェリーへのシフトが進んできており、物流コストの上昇は避けられなさそうだ。

中継輸送は今後の課題

 区間ごとに分離させて自社または協力会社と配送を行う「中継輸送」にも注目が集まる。フェリー輸送にも利用枠の上限があり、必要な輸送量のすべてを賄うことはできず、残りの部分を中継輸送でカバーするという狙い。同社でも関東から関西、そして関西から九州へ配送する中継輸送を試験的に行っているが、課題もあるという。中継輸送には様々な方式がある。例えば中継地点で荷物の積み替えをして、次のトラックに託す「貨物積み替え方式」があるが、家具がデリケートな製品であることもあって、現実的ではない。同社で検討しているのは特定の中継点でドライバーが交代する、「ドライバー交代方式」だ。この場合、ドライバーは中継点で次のドライバーに自分の乗ってきたトラックを引き継ぎ、当人は相手のトラックを乗って自分の拠点に戻っていく。しかしこれには、2つの便が定期運航していなければ実現しにくいという問題もある。
 例えば九州から関西まで家具製品を運び、関西から九州に家電製品を運ぶ便が定期的に存在し、その中間距離にあたるとある中継地点でトラックを交代する、ということが定期的で定時的に実現する必要がある。そうでなければ、ドライバーはスムーズに自分の拠点に帰れないし、なにより自分が託したトラックがいつ帰ってくるかわからないということにもなる。

 2024年問題で想定される大きな変化の1つは、コストアップだ。フェリーのコストは陸送に比べてかなり割高であるため、同社も2024年以降、約7%の値上げを予定しているという。家具メーカーへ価格改定の理解を得られるよう説明を続けているが、今のところ6割程度の企業から了承を取り付けた。2024年問題への認知が広まっていることも要因として大きいようだ。「労働問題に対応しきれず、この2~3年で長距離輸送をやめた企業も増えました。今後確実に物流に影響は出てくるでしょう」と関東柳川合同運送の大峰慎平氏は語る。物流問題は一時の問題にはとどまらなそうだ。

 物流をとりまく環境の変化は激しく、物流企業各社にもこれまでとは異なる動きもみられている。
例えば同社では、家具・インテリア等の展示会への搬入搬出事業や修理事業へ業容を拡大させているという。埼玉県の杉戸町に修理拠点を設け、関家具の椅子を中心に修理を行っているが、コールセンターも設け、椅子に関して他社にはない修理技術を培ってきた、と大峰氏は自信を見せる。今後は取り扱いメーカーを増やし、一層拡大に向けて舵を切っていくという。

(長澤貴之)