【物流企業特集 2024年問題を問う①】パパネッツ -PAPANETS-

適正運賃に理解を。業界全体の協力なくして解決難しい

 パパネッツ(埼玉県越谷市 伊藤裕昭社長)は不動産サポート事業と家具配送を主な事業とし、その内家具配送は全体の売り上げの2割を占めるという。全国約50社に及ぶ協力会社に委託し、ツーマン配送でエンドユーザーやオフィス向けに、配送から組み立て、設置までを担う。

 同社は、配送協力会社の荷主としての側面もあるため、2024年問題についても敏感だ。「一緒になって取り組みを進めていく必要がある」と山﨑マネージャーは語る。来年度に向けて協力会社と協議を進めていく上で、値上げや遅い時間対の配送中止、時間指定の制限など、様々な制約が生まれつつある。これまでと同水準の物流サービスを維持するのは、簡単なことではないと感じているという。

 同社はラストワンマイルだけでなく、長距離輸送も行っている。この2年でJR貨物を利用した長距離輸送も手掛け始めた。現在も北海道の旭川から関西方面に向けた試験輸送が行われており、幹線輸送からラストワンマイルまですべて自社管轄で取り組むことで、輸送中の破損などのトラブルやリスクを低減させる狙い。JRの貨物輸送は短距離ではコスト高となるが、遠方地になればなるほどコスト面でも優位であるという。2024年問題の影響もあり、車両で輸送する場合、中継輸送等で度々積み替えが必要になるからだ。コストが増えるだけでなく、製品破損のリスクも高まる。2年間の取り組みを通して、外装クレームが減るなど輸送品質の高まりを感じているという。

 2024年問題の解決に向けて、物流企業だけでなく業界全体での理解、協力が必要という側面と、人材確保の2つが重要だと松橋参事は語る。社会問題として認知されるにしたがって、家具業界でも理解が進んできたようだ。積み荷、荷下ろしの際の待機時間を削減するために、従来の順番待ち制から時間予約制に切り替えたメーカーもいるという。待機時間も人件費としてのしかかる。残業時間の制約があるので、顧客の協力なくしてこの問題は解決が難しい。

 また、適正運賃に関する理解を求める交渉も始まっている。顧客各社の反応は様々だ。半数の顧客は値上げに一定の理解を示している一方、原材料の高騰もあり、配送費の値上げに強い抵抗感を示す企業も少なくないようだ。ひと昔前は、同業者による運賃の「くぐりあい」も頻繁に起き、本来受けるべき額より2割から3割安いことはよくあることだったという。しかし、燃料費や物価の高騰により、ひと昔前の相場では人を雇うことも難しくなる。

 事実、物流業界は人手不足が深刻で、特に若い労働者が集まりにくいとされている。時代と共に、業界が変化したことが要因として大きい。ひと昔前は、「稼ぐのに手っ取り早いのはトラックの運転手だ」という考えも浸透していたが、現在はそれほど高い報酬を出せるわけでもなくなった。長距離ドライバーは一度遠方に出ると、一週間は帰れないこともある。十分な報酬と良好な労働環境を提供できず、若手が集まりにくいという構図だ。「このままでは近い将来、運べるキャパシティは大きく減少するでしょう。人材を確保するためには、賃金アップが必須です」と山﨑マネージャーは語る。

 人手不足の影響は、業界全体に表面化しはじめている。長距離輸送をメインとする物流企業の廃業が増えているという。燃料費が高騰しているところに、2024年問題が追い打ちをかけた格好だ。このままでは2030年には、人口減少と2024年問題により今の物流のキャパシティの3分の2程度になるという予測もあるという。今と同じ水準のサービスを望む場合は、より多くの料金がかかる、従来の金額の場合、届くまでに日にちがかかるという時代がくるかもしれない。物流の問題は物流業界だけでなく、そこにかかわる業界全体の理解が、かつてなく求められているようだ。

(長澤貴之)