ヤマダホールディングスグループの秋田木工(秋田県湯沢市、風巻穣代表)は、2023年9月1日より、デザイナーの小林幹也氏新作家具コレクション「an」を発売開始した。これにあわせ、9月6日(水)にIDC OTSUKA有明ショールームにおいてプレスカンファレンスを開催。デザインを手掛けた小林幹也氏が製品について説明した。
小林氏は武蔵野美術大学在学時、同大学の名誉教授でもある椅子研究家の島崎信氏の講義などを聴き、木を曲げて作る「曲木」の技術を用いる秋田木工の製品について深く知ることになったという。
秋田木工が製作したスタッキングスツール(剣持勇氏デザイン)など、意匠的な曲木や、曲木に沿ってスタッキングができると機能が調和している点が、同氏を秋田木工の製品に惹き付けたポイントだった。
「一見すると地味かもしれないが、私は学生の頃からこのようなデザインが好きでした」とし、学生だった当時は、「いつか秋田木工の製品を手掛ける仕事ができたら」と考えていたという。
今回発表された「an(アン)」シリーズは、3年前に大塚家具(現、ヤマダデンキ大塚家具事業部)から小林氏が依頼を受け、秋田木工と取り組んできたプロジェクトだ。シリーズの特徴として、曲木を生かしたやわらかな形状・曲線を多く用いている。樹種はナラ材を使用。
秋田木工はブナを用いた製品などもコントラクト向けに提案しているが、「今回は家庭用を想定してデザインしたため、まずはナラで提案できればと考えた。シリーズにはテーブルもラインナップしており、その天板もナラの板目で作りたいと思っていた」と小林氏は語る。秋田木工では、コントラクトの案件などにおいて、ブナでのオーダーにも対応できるように検討しているようだ。
「曲木の技術によって、アームから笠木へ、そしてまたアームへとわたるチェアのデザインは、このサイズの製品では私の知る限り他社では見たことがない」と小林氏は話す。笠木の部分も三次元で曲がっているなど、木を使いながらやわらかな雰囲気を出すことは非常に難しく、高度な技術を要する。「an」は、秋田木工ならではの曲木の技術によって、その雰囲気を醸成することに成功している。
「an」シリーズには、小林氏のこだわりであるラタンが要所に用いられており、「an」にはインドネシア産のラタンを使用している。
ラタンは素材の管理が難しいため、ラタンを使用して家具を製作するメーカーは多くない。しかし秋田木工では、前述の剣持勇氏デザインのスタッキングスツールについても、ラタンを用いて製造したバリエーションがあった。
色や強度など、製品として理想的なクオリティのラタンを新たに仕入れた上で、今回の「an」シリーズでもチェア「AC-1および2」の座面や、チェア「AC-3,4」の背もたれ、ソファ「AS-1」の背面や、センターテーブル「AT-3」のラック部分などに用いられている。
広い面にラタンを使用することで、アイテムを空間に置いた際、軽快な印象を与える。小林氏は「曲木のやわらかさと、ラタンの軽快さを組み合わせ、”新しいたたずまい”を創れたらと考えた」と語る。製作工程などの要素を鑑みて、シリーズとしてまずは10アイテムをラインナップした。
インテリアのアクセントにもなる、ロッキングホース「AA-1」は、曲木のやわらかさと軽やかさが象徴的に表された。
「an」シリーズは今後、IDC OTSUKAの有明ショールーム、大阪南港ショールームを皮切りに、全国のIDC OTSUKA店舗で先行展示。その後、他の販売店への展開も予定している。
(佐藤敬広)