マルニ木工(広島市佐伯区、山中洋社長)は、2023 年10 月19日(木)~31 日(火)の間、ジャスパー・モリソンの新作発表に合わせ、「MARUNI COLLECTION 2023 / AUTUMN BY JASPER MORRISON」を開催した。
今回の新作展では、ジャスパー・モリソン氏がデザインしたLightwoodチェアに、新たに専用の座クッションをラインナップした。リバーシブルで使用可能なデザイン。
そして同じく、ジャスパー・モリソン氏デザインのT&Oより、T1タスクチェアを発表した。T1チェアに昇降機能やキャスター機能が備わっている。
今回の新作展開催時にはプロトタイプ(4本脚)を展示したが、これを5本脚にしたうえで、来春の発売にむけて準備が進めているとのことだ。
これらの新作のほか、ジャスパー・モリソン氏がMARUNI COLLECTIONのためにデザインしてきたアイテムの数々が会場に並べられた。
10月22日には、「ジャスパー・モリソンを通して見えてくる未来のデザイン」をテーマに、スキーマ建築計画代表の長坂 常氏、プロダクトデザイナーの熊野 亘氏、クリエイティブディレクター/デザイナーの狩野佑真氏によるトークイベントを開催。ジャスパー・モリソン氏が手掛ける家具について、それぞれの視点からそのデザインについて語った。
ブルーボトルコーヒーなどの店舗デザインなどを手掛ける長坂氏は、その内装にジャスパー・モリソン氏デザインの家具を用いることも多い。「建築を手掛けていると、基本的には空間からデザインした上で、最後に家具を選びます。その際、組み立ててきたデザインに調和しにくい家具と、馴染んでくれる家具にわけられるのです。不思議と、いまの名作家具と言われるものは、空間を支配してしまう奪う気配があるのですが、しかし良い意味で“見慣れた”デザインのものを採り入れると、空間を支配されません」と話す。ジャスパー・モリソン氏のデザインは、空間への溶け込みやすさという点で、“気配がない”ことがメリットになっている例もあるようだ。
長年、ジャスパー・モリソン氏に師事していた熊野氏は「彼は最初からシンプルなデザインを手掛けていたわけではなく、若いころは個性際立つデザインも多かったのです。有名になるまでは古本を売る商売もしていた時期があったようですが、その本からデザインや美術、文化を学んだようです。“0から作る”ということよりも。町中から既製品を見つけてきて、組み合わせて新たなデザインとし、メッセージ性を持たせるというやり方が若いころのスタイルでした」と話す。様々なアイテムを組み合わせながら新たなデザインを創出してくなかで、1988年に発表されたプライウッドチェアが、彼のデザインのターニングポイントとなったと同氏は語った。
一方で狩野氏は「私はプライウッドチェアと同い年ぐらいなのですが、今の日本の若いデザイナーは“いかに目立つか”を意識しながら、多くのデザインを手掛けている人が多いと思います。ジャスパー・モリソンさんも、若いころは現在のようなシンプルなデザインではなかったと知り、勇気づけられるものがありました」と語る。いかに目立ち、認知されるかが重要な昨今のデザイン業界において、巨匠と呼ばれるデザイナーの若年期の作風は、狩野氏のような若手デザイナーにとっても新鮮に映ったようだ。
三者それぞれから見たジャスパー・モリソン氏のデザインにまつわるトークに、来場者は熱心に聞き入った。