iF DESIGN AWARD2024 家具の受賞製品をみる

世界三大デザイン賞の一つであるドイツの国際デザイン賞「iF design award 2024」がこのほど発表された。同デザイン賞は、プロダクト、パッケージ、コミュニケーション、サービスデザイン、建築、インテリア/建築、プロフェッショナルコンセプトの7つのカテゴリから受賞製品を発表。今回は世界の72 カ国から合計1万点を超える応募をみた。日本企業の家具・インテリア関連製品における主な受賞製品は次のとおり。
▽コクヨ:タスクチェア「pallo(パロ)」(iFゴールドアワード)、ファニチャーシリーズ「Any way」、オフィスチェア「Liite」
▽オカムラ:オフィスチェア「Spectra(スペクトラ)」、ミーティングテーブル「Alette(アレッテ)」
▽イトーキ:ワークソファ「inSAIL(インセイル)」、オフィスチェア「torteU(トルテユーチェア)」
▽アダル:シェーズロング「SAKYU」
▽NEM:キッズ家具ブランド「MINORINO」

コクヨのタスクチェア「pallo(パロ)」は、今年のデザインアワードで「iFゴールドアワード」を受賞した製品。幾何学的なシンプルさと機能により、様々なオフィス空間にも柔軟に対応できること、フォルムも人間工学に基づいたニーズを満たしている点が評価された。

アダルの「SAKYU」は、国産い草を家具に用いたサステナブルブランド「 Look into Nature 」のコレクションの一つ。ドイツ人デザイナーのミヒャエル・ゲルトマッハがデザインし、特に「造形」「アイデア」「インパクト」の観点が評価された。

このほか、NEMが企画・開発したキッズ家具ブランド「MINORINO(みのりの)」は、モンテッソーリ教育への共感と尊敬から生まれた幼児向けの知育家具ブランド。幼児期の親子が共に長い時間を過ごすリビングに取り入れることで、子どもが自主的に創作活動や遊び、学習に取り組むことができる空間を、シリーズで創出する。同製品はインテリアになる知育家具として特に「アイデア」「機能」の項目で高い評価を得た。

このほか、海外からの受賞製品においても、特長的なアイテムが多く選出された。

イタリアブランドのミノッティからは、「Horizonte」シリーズが受賞。レザーやファブリックなどの素材の組み合わせや、ディテールへこだわった、モジュール式のファニチャーコレクション。

ドイツのベルリンを本拠とするPaket24社からはアウトドアファニチャーの「XXO」が受賞した。デザインはシンプルかつモダンで、クッションのコントラストのある縫い目は正方形のパターンで形成し、精密な職人技を表していることが評価された。

ブラジルのArtefacto社が開発したダイニングテーブル「VERSA」は、2つのテーブルが互いにフィットし合い補完する、「陰陽」をコンセプトに開発されており、軽さを強調する丸いディテールのエッジが特徴。

同じくブラジルのCentury Brazil社からは、「SUBLIME ARMCHAIRS」が受賞した。快適さと美しさの両方を優先したアームチェアは、ユニークなデザイン哲学で、部屋の雰囲気を上質なものへと変える一つの要素となることが評価された。

アジアからは、中国の広東省、仏山市に本拠を構えるWesion Furniture社の製品も受賞した。オフィスラウンジシリーズの「ELEPHANT」は、象のイメージをテーマとし、空間に活気のある親しみやすさや、安心感を与える。さまざまな公共スペースなどのニーズに対応するデザインが評価された。

なお同社はオフィスソファシリーズ「HOBBYHORSE」も受賞している。

同じく中国の仏山市にあるHigold Group社からは、屋外用家具シリーズ 「Armonia」が受賞した。主な素材は天然チークで、耐久性があり、あらゆる過酷な気象条件に耐えるうる製品であることも特徴だ。

中国・上海のWAITINGWOOOD社とShanghai Yuzhai Technology Development社によるキッズ家具「Newsstand picture book House」は、子どもの行動習慣の分析に基づいた基本機能と使用環境を兼ね備えた製品。 児童書の保管や陳列の機能を満たすだけでなく、使用用途に応じて製品を拡張し、子どもが良好な読書習慣を身につけるための好ましい読書スペースを構築できる点も評価の一つの要素として挙げられたようだ。

台湾のMu-dreamer社とSANTAI MINE社が共同開発した「Low-carbon furniture」は、台湾産の素材を使用した低炭素家具として受賞。かつて世界に誇る石材加工・輸出地域だった台湾は、現在でも高品質の石材を産出。この地元産の石材と木材を活用することで、輸入材料によって発生する廃棄物の低減につなげている点が評価された。

受賞作品をみると、製品のデザイン性そのものもさることながら、製品を配置することによる空間提案の実現という要素も、特にアジア各国の企業からの出展製品ではポイントとなっていることが見てとれる。日本の「MINORINO(みのりの)」と中国の「Newsstand picture book House」は子ども用家具としてそれぞれ受賞を果たしたが、アプローチは異なれども、いずれも子どもの保育・学習空間構築のためのアイテムだ。また、脱炭素を目的として台湾のメーカーが石材と木材とを合わせて製造した製品も受賞している。地域の特性を活かしながら脱炭素化に貢献し、空間づくりにフレキシブルに対応できる製品開発が、今後も求められることになりそうだ。