スイスの家具メーカーであるヴィトラは、2024年4月5日(金)~7日(日)の3日間、新作チェア「ミカド」の日本発表イベント 「Mikado – The Art of Hosting」 をLIGHT BOX ATELIER / SEMPRE(東京都港区南青山6丁目13-1-2F)で開催した。
柔らかな生地に包まれた美しいフォルムの「ミカド」は、座面下に隠された、座る人の動きに合わせて背もたれが動くメカニズムを採り入れている。4月5日より、ヴィトラのオンラインショップおよび取り扱い販売店で販売を開始している。
新作のチェア「ミカド」は、イギリスのエドワード・バーバー&ジェイ・オズガビーがデザインを手掛けた。
製品の名称は、ヨーロッパの子どもが遊ぶ、竹ひごを使ったテーブルゲーム「ミカド」に由来する。そのため、チェアの脚部分はテーブルゲーム「ミカド」に使われる竹ひごをモチーフとしたもののようだ。
ヴィトラはオフィス空間用の家具や、環境のリサーチなども手掛けているが、昨今はライフスタイルが変化し、ダイニングとリビングの垣根がなくなり、ダイニングですべてが完結するようになってきたと同社ではとらえている。そのため開発にあたっては、ダイニングシーンでもソファのようにくつろげるようにとデザイナー陣にリクエスト。それを受けてデザインされた「ミカド」は、アームチェアおよびサイドチェアの2つのタイプをラインナップした。ダイニングで仕事ができ、そして仕事が終わった後にくつろぐことができる、二つの要素を満たすことができるチェアとして開発された。
特徴としては、座る人の動きに合わせて背もたれが独立して動くメカニズムを座面下に採用している点が挙げられる。また、多彩な張地と脚のカラーバリエーションも豊富で、特に脚はチョーク、ミント、ベーシックダーク、アルミポリッシュ、ダークオーク、ナチュラルオークから選択できる。脚の棒は4本ともに共通で使用できるため、一つの脚が壊れたとしても、その脚を一本交換するだけで元の状態に戻すことができる。別のシーンで使いたいときなどに、新たなカラーのものに変更することも可能だ。
ヨーロッパでは昨今特にサステナビリティに関する意識が強く、「何をどこまで配慮しているか」といった具体的な要素までを求められるといい、その説明をきちんと行うことができないと「サステナビリティを軽視している」と、マイナスにとらえられてしまうという。ヴィトラは製品そのものを捨てる機会を減らすべく、様々なシーンで再利用しやすいことをコンセプトに「ミカド」を開発。環境に配慮した持続可能な構造を採り入れて、簡単にパーツの変更や分解、分別ができる構造にしており、カバーは接着剤未使用。専門業者によってクリーニングや交換が可能となっている。
バックレストシェルには再生ポリプロピレン100%素材、シートサポートには再生材使用率95%のアルミダイキャストを使用している。再生材を多く使用しながら、ライフスタイルの変化に合わせて、チェア自体も変化が容易に可能な点が、「ミカド」の最大の特徴といってもよいだろう。ヨーロッパやアメリカでの耐久試験に加え、さらに厳しい自社試験を経て生産しているため、製品の耐久力も非常に高いという。
「Mikado – The Art of Hosting」 の開催にあたり、ドイツのヴィトラショールーム兼ショップ「ヴィトラハウス」のクリエイティブディレクターを務めるティル・ウェバー氏が来日。「ミカド」を含めた家具のセッティングに、デンマークのテーブルウェアブランドの「ロイヤル コペンハーゲン」、長崎県の波佐見焼を中心とした陶磁器メーカー「マルヒロ」を組み合わせ、ヨーロピアンダイニングとジャパニーズダイニングの2つのシーンおよび、ミーティングのスタイリングとテーブルコーディネートの各シーンを作り上げた。ジャパニーズダイニングのシーンは、日本の伝統を尊重しながらも、それを再解釈して提案したスタイルだ。
新作を発表するにあたり、製品のみを展示するより、その新作製品が使われたシーンを見せることで、ユーザーがどのようなシーンで使用できるかをイメージしやすくした。オフィスでもダイニングでも使える「ミカド」だが、基本はダイニング用として開発されたものであるため、今回のイベントでもダイニングシーンを想定したコーディネートで空間を構成。今後は販売店のみならず、ハウスメーカーやインテリアコーディネーターへのアプローチも強化し、より幅広いシーンでの導入拡大を目指すようだ。
(佐藤敬広)