旭川家具工業協同組合が主催する「Meet up Furniture Asahikawa2023」の会期中に開催される、第2回旭川木工技能競技大会の決勝が、6月25日に旭川デザインセンターで開催された。
昨年の「Meet up Furniture Asahikawa2022」において初めて開催された「旭川木工技能競技大会」は、今回が2回目の開催。旭川家具工業協同組合に属するメーカー(年齢制限なし)からエントリーした25名が予選会を戦い、うち12名が予選を通過、旭川No.1職人の座をかけて決勝に進んだ。なお、前回大会はガージーカームワークス(北海道旭川市、木村亮三代表)の山口智大氏が優勝している。
決勝戦の競技時間は11時から12時までの1時間。会場には、決勝に進んだ12名の選手の関係者を含め、多くの来場者が集まり、盛況となった。
競技開始前の大会開会宣言は、1967年開催の第16回技能五輪国際大会(スペイン・マドリード大会)銀メダリスト、旭川家具工業協同組合の桑原義彦相談役(匠工芸会長)が務めた。
▽桑原義彦氏の開会宣言
皆さんおはようございます。いい天気ですね。この大会も2年目ということで、1年目はどうなることかなと思って心配していたのですけれども、旭川家具工業協同組合の担当理事の方々がそれぞれ、この大会の意義をしっかり業界で認識できるようにやろうということで、藤田理事長をはじめいろいろと試行錯誤をしながら、現場の「ものづくり」の人たちをどういう風に皆さんと、いろんな意味で皆さんと交流を図ることができるような「技術交流」をどのようにしていけばよいかということを、本当に真剣に考えた大会です。
この大会は、これからも良い意味で色々と進化をして、現場の人たちが「作るためにどのような心構えが必要なのか」ということの指針になるような大会になれば、と願っています。私も若い頃に大会に出させていただいて、大変刺激を受けたひとりです。そのような形で、現場の人たちが「ものづくりというものを再認識できる」、そのような競技大会になれば、さらに良いなと思っています。どうぞ、ここにいる皆さんもしっかり応援をしていただいて、これからの組合活動に絶対に必要な人たちですので、是非応援をしていただきたいなと思います。
開会宣言ですので、第2回目の旭川木工技能競技大会、開会を宣言します。よろしくお願いします。ありがとうございます。
開会宣言に続き、予選会を突破し決勝に進出した12名の選手がひとりずつ入場し、決勝への意気込みを述べた。以下、当日の紹介順。※()内は社名
決勝の舞台に進んだ12名の選手に、会場から大きな拍手が送られた。
選手入場、紹介に引き続いて、旭川家具工業協同組合の藤田哲也理事長が主催者を代表して挨拶した。
▽藤田哲也氏の挨拶
皆さま、おはようございます。当組合理事長の藤田です。いま、選手の皆さんの力強い発言を聞いて、すごく気持ちが高揚しています。今年は6月の17日から、あさひかわデザインウィーク(ADW)に、旭川の多くの産業に参加いただいて、爽やかなこの季節にデザインウィークを開催しています。その後半の5日間、「Meet up Furniture Asahikawa2023」、家具産業が中心となったイベントを6月21日より5日間開催しており、今日が最終日です。
当組合も6月17日に、施設をリニューアルオープンしました。家具産業を産業観光として、沢山の方に全国、そして世界からこの旭川デザインセンターを見ていただこうということで、リニューアルいたしました。当然、デザインウィークのなかで、このデザインの力を発揮できるのは「ものづくり」です。「ものづくり」には、技能・技術がとても重要です。ものづくりと技能・技術、デザインを含めて、皆さんに発信したい。それが「Meet up Furniture Asahikawa2023」ということになります。この最終日を飾る「旭川木工技能競技大会」の第2回目を開催できることは、非常に嬉しく思っております。沢山の方々に一緒に参加いただいて開催できることを、感謝申し上げます。
この後1時間、本当に緊張する1時間ですが、この1時間を共有いただいて、皆さんの応援のもと、しっかりと競技を進めていきたいと思います。この旭川の地は、先ほど開会宣言をいただいた桑原相談役が、世界で銀メダルを獲得しています。その後も沢山の家具の技術者が、この旭川の地から日本代表として世界大会に出場しています。直近では8回連続で、旭川の選手が日本代表の選手として出場しています。2年に一度の世界大会ですので、もう16年以上です。来年がフランス大会ですので、そこにもぜひ優勝して、世界大会に家具職種で出ていただきたいなという、強い思いがあります。そのようなことを伝承するために、この旭川木工技能競技大会を進めていますので、ぜひまた来年も引き続き開催を続けていきたいと思います。皆さんの協力を得て盛り上げていきたいと思います。
選手の皆さん、この後、頑張ってください!
審査員および競技の概要は、組合理事でものづくり・人材育成担当の木村亮三氏(ガージーカームワークス代表)が説明。「予選もそうだったが、決勝戦の課題内容も楽しみにしていただきたい」と話した。競技内容の詳細はこの時点でも選手には知らされておらず、一同が緊張感をもって説明を聞いた。審査員は北海道立旭川高等技術専門学院の教員、元教員の4名が務めた。
その後、選手に向けて競技内容の詳細が発表され、競技にあたっての注意事項などが説明された。
定刻となり、ホイッスルに合わせて競技大会がスタートした。以下、競技中の写真。
競技終了後、昼休憩を挟み、13時半より表彰式・閉会式が行われ、組合の藤田理事長が、3位から順に、上位入賞者を読み上げた。なお、上位3名には賞状と賞金、道具券などが贈呈された。
3位入賞を果たしたのは、ガージーカームワークスの傳里聡選手。
▽傳里選手のコメント
予想外に3位という結果で、私自身まったく表彰式には関係ないと思っていたので、本当にびっくりしました。ありがとうございます。
第2位は、ワカサの下條恭平選手。
▽下條選手のコメント
自分も、賞をとれるとは思っていなかったので、ちょっとびっくりしているんですが、昨日平出さん(平出大礼商店)のところで『鋸』を買ったので、そのおかげかなあと思っています。皆さん買ってください!
優勝を飾ったのは、ガージーカームワークスの山口智大選手。昨年に続いての優勝で、連覇を達成した。
▽山口選手のコメント
宣言通り二連覇することができて、本当に嬉しいです。ケガのアクシデントもあったのですが、日々の練習の成果もあってか、落ち着いて最後まで作業ができて、それがこのような結果につながって本当に良かったと思っています。
この決勝戦を見てくださっているなかで、またこの大会に挑戦したいなという人がこれからどんどんと出てきて、来年以降もっと人数が増えても、自分が1位を獲り続けることができるように、これからも頑張っていきたいと思います。技能競技大会と本業とでは、行っていることは異なるのですが、この経験を普段の業務でもしっかりと活かして頑張っていきたいと思います。
閉会にあたり、組合でものづくり・人材育成を担当する桑原強理事(匠工芸社長)が挨拶した。
▽桑原強氏の挨拶
みなさん、今日は集まっていただきましてありがとうございました。旭川という家具産地は、「職人」が多くいる産地です。ただ、私たちが話をしていても、表に職人がなかなか見えてこない。普段の仕事は工場の中でやっており、お客様の顔を思い浮かべながら日々一生懸命に作っているのですが、なかなかスポットが職人に当たることがない。どのような活動をしていけば良いかと考えるなかで、組合の仲間の皆さんと打ち合わせをして、このような競技大会を開催しようということになりました。職人たちの技能・技術を、盛大に見ていただけるものを催したいというところからスタートしています。
今後なかなか、職人が増えるという予想もしていません。その中でどうやっていけば良いかということで、やはり「ものづくり」に従事している人が「カッコいい」「凄い」「素晴らしい」、そうなりたいと思う人をどんどんと集めていかないと、職人は少なくなっていくばかりだと思いますので、お客様のためにしっかりとものづくりに取り組んでいるメンバーがいるんだ、ということを皆さんに見ていただきたいと思っています。今回は(山口選手が)二連覇ということなので、ちょっと私どものシナリオとは違う結果になりましたが(場内笑いが起こる)、今後「打倒山口!」が来てほしいという、そのようなシナリオもまだまだありますので、来年以降もまた開催していきたいと思います。
この競技大会を見ていただいているお子さんたちが、是非何年後かにこの舞台に立って、優勝・賞金を獲る日が来てほしいなという夢を見て、引き続き頑張って続けていきたいと思います。今日は暑いなか集まっていただきまして、ありがとうございました。
旭川産地の家具づくりを担う職人たちが集った「第2回旭川木工技能競技大会」。家具づくりを手がける職人の「顔」が見え、「技」が見え、そして家具づくりにかける「情熱」が選手をはじめ関係者からもひしひしと伝わってきた。家具づくりの職人という「人」がいるからこそ、生活空間の中で家具は生きるものだということを、改めて実感させられた。
来年の2024年6月19日には、国際家具デザインコンペティション旭川2024(IFDA2024)も開催予定だ。家具産地旭川への注目や、家具づくりの職人たちがフォーカスされる旭川木工技能競技大会のさらなる発展に期待がかかる。
(写真・文 佐藤敬広)