ロルフベンツ 創業60周年記念の新作ソファ「SINA」を発売開始 デザインを手掛けたBECK DESIGNのNorbert Beck(ノルベルト・ベック), Silja Beck(シリヤ・ベック)夫妻が来日 -ROLF BENZ-

ヤマダデンキ大塚家具事業部が正規代理店を務めるドイツの家具ブランドのROLF BENZ(ロルフベンツ)が、創業60周年記念の新作ソファ「SINA(シナ)」を発表し、2024年5月16日より発売開始した。

新製品の「SINA」は、人が集まり、会話を楽しむ「リビングの核」に捉えなおすという画期的な発想から生まれた、ロルフベンツのコーナーソファ「Addiform(アディフォルム)」のオマージュとして開発された。

アラビア語で「美」を意味しており、好みのパーツを組み合わせ、空間の自由度を高めるモジュール性が特長だ。パーツは27種類、ベースのフレーム・クッションの張地は、ファブリック約200種・レザー約80種から選択できる。座面の奥行きや高さ、背クッションの仕様、脚部の色も様々なオプションをもち、シーンにあわせたカスタマイズが可能だ。

BECK DESIGNのノルベルト・ベック(右)、シリヤ・ベック(左)夫妻

5月16日には、「SINA」の発売を記念して、ロルフベンツ東京で内覧会を開催。「SINA」のデザインを手掛けたドイツ「BECK DESIGN」のNorbert Beck(ノルベルト・ベック)、Silja Beck(シリヤ・ベック)夫妻が来日し、新作のデザインコンセプトなどについて語った。

ベックデザインは様々な家具メーカーの製品を手掛けてきているが、その中でもロルフベンツは特に長い付き合いで、約26年から手を組んで、様々なプロダクトを生み出し続けてきた。夫妻がデザインを生み出していく本拠の工房は、緑豊かな自然のなかに位置しており、この環境が夫妻のインスピレーションの源となっている。

製品開発では、ロルフベンツとのブリーフィングにより、ターゲット層などをまず絞り、価格帯を決定した。そして、どのようなライフスタイルにマッチするソファが必要であるかという視点からも、議論が重ねられた。昨今は、レトロデザイン・クラシックなものを再度新たなライフスタイルのもとでリデザインするというトレンドがあり、今回の「SINA」もこのトレンドに当てはまるアイテムだ。過去と現在では、ソファの位置づけや使い方そのものが変化してきたといい、その観点を踏まえて「Addiform(アディフォルム)」をリデザインし、「SINA」を生み出した。

デザインのアウトラインについては、今回は特に苦労して考え出したとノルベルト・ベック氏は語る。10年前、ロルフベンツ50周年記念モデルもベックデザインが手掛けたが、そのモデルも「Addiform(アディフォルム)」のオマージュだった。10年を経て、現在のロルフベンツの強みを、どのような形で表現できるかに焦点をあて、綿密な協議のもと様々なスケッチを作成しながら、最初のプロトタイプを作り上げていった。

この作業には、何十日もの期間を必要とするため、協議を重ねつつ、他のコレクションなども見ながら検討が進められた。時間を必要とする理由として、デザインのみならず実用性の要素を考慮した際、様々なユニットの種類なども考えなければいけない点がある。レイアウトやユニットの形などについて、これまで発表されてきたコレクションも念頭に置きながら作りこんでいくことになる。ベックデザインでこの役割を果たすのは、妻のシリヤ・ベック氏だ。

そしてこれらがある程度まとまった時点で、ノルベルト氏が製品の「ミニチュア」を作成する。その後、内部構造などを3Dでデザイン。ミニチュアのフレーム部分を3Dプリンターで製作していく。「実物がどのようなものになるか、それを知るには、3Dのものを実際に作ってみることが一番なのです。図面だけでは確認しにくい部分もあるので、このミニチュアを作りこむのです」とシリヤ氏。ソファの張地についても、張地のステッチの箇所を図面でおこしていくという。様々なミシンを駆使して、それぞれのステッチの技術面をミニチュアで再現している。

「なぜこのミニチュアの制作に力を入れているかというと、やはりソファというものは『見るもの』だけではなく『実際に座って、触る』という『五感』で感じるものですので、たとえミニチュアのように大きさが小さくても、ミニチュアのような実物の存在なしには、その五感を感じ取ることができないからです」とノルベルト氏は話す。

シリヤ氏は「通常、デザイナーがプレゼンテーションを行う際は、資料や動画などを用意しますが、我々はそれに加えてほぼ実物の、完成品になる予定のミニチュアを見せることで、クッションのやわらかさの加減や、張地とのバランスなどを見せるのです。これは、なかなか図面だけでは伝えることが難しい」

「したがって、ミニチュアをご覧になったメーカーの方々にとっても完成品のイメージが湧きやすいというメリットがあるだけでなく、その後の打ち合わせにも役に立つのです。もちろん、プレゼン前の段階で採用されるかわからない状況の中での製作にはなるのですが、ミニチュアまで作りこんでいると、大抵のケースでその後のコミュニケーションも上手くいき、採用されることが多いのです」と語る。

当初、ロルフベンツの60周年記念モデルには、ベックデザインの他にイタリアのデザイナーが名乗りをあげており、プレゼンテーションの結果、ベックデザインがデザインを担うことになった。その際、ミニチュアモデルを用いたプレゼンテーションを行ったという。

商品の特徴としては、ユニットを連続させて配置することが可能であることや、一つ一つのユニットを単体で配置することが可能な点をノルベルト氏は挙げた。このことにより、レイアウトの幅を広げやすい。バックレストが無いタイプも組み合わせることが可能で、これを組み入れることにより、空間に「抜け感」を求めるユーザーのニーズにも対応できる。

ソファ下のプラットフォームベースは、ユニットによるが、あえて少し外側に出すような形状となっている。プラットフォーム自体をデザイン要素として強調させており、張りぐるみも可能。好きな張地を選択できる。

エッジの縫製も、ロルフベンツならではの技術がつまった部分だ。「バックレストとサイドパーツに関しては緩やかな曲線を描きましたが、その中央にステッチを組み入れていくことは、ロルフベンツならではの技術によるものです」とノルベルト氏は強調した。

張地は様々なバリエーションから選択できるが、シリヤ氏のおすすめは、プラットフォームと本体の部分をレザー張りとし、内側のシートは柔らかさを象徴するファブリックの組み合わせだという。くつろぎ感を増すために、SINAは背クッションのサイズにもこだわった。昨今は圧迫感を感じさせないよう、背クッションが低いタイプが多くみられるが、あえてSINAでは高く設定し、しっかりと体を支えることができるデザインとなっている。オプションアイテムによって、ユーザーの好みの座り心地にも変えることが可能だ。

ミニチュアを製造することに関して、最後にノルベルト氏は「私たちが、いわゆる”アナログ”な人間だから、このようなミニチュアを製作するのかもしれません。しかし、実際にものを作っている方が、私たちとしては信頼できます。ベックデザインの工房には、金属や木工加工機械、ミシンも様々なものをそろえています。我々はそれを用いて家具を作ることができる職人でもあるわけです。このような職人肌のなかでプロダクトデザインを手掛けています」とし、

「日本の方々は”匠”の概念をお持ちだと思います。ロルフベンツの品質やディティールの面、細かい丁寧な仕上がりの部分をきっと理解していただけると考えています。メイドインジャーマニーですので、持続性のある長寿命なところ、座り心地というところを、このSINAを機会に知っていただきたいです」と語った。

(佐藤敬広)

https://www.rolf-benz-tokyo.jp
https://www.beck-design.eu/