スチール製シースルー階段需要増、富裕層向けの間取りで高評価
スチール製の階段をはじめとする建具や、家具・インテリアを製造するカツデン(東京都台東区 坂田清茂社長)は今年5月、島根益田工場の増築工事を完工させた。
同社はハウスメーカーやビルダー向けのスチール階段や手すり、金属製インテリア・エクステリア製品などを主軸としたメーカーだ。近年の業績はすこぶる好調で、2023年度の売上は36.9億円に及び、5年前と比べて約2倍に成長した。好調の要因は、同社の得意とするシースルー階段の受注増が背景にある。ニーズにキャッチアップすべく、3年前の2021年に、島根益田工場の拡大を決定した。
同社の工場は埼玉県児玉郡美里町と、一部規格品の大量生産が可能なベトナム、そして今回増築を行った島根県益田市に所在する。島根益田工場は、西日本での需要増及び配送に対応するために2020年に完成したばかりだ。稼働させて2年経たないうちに、急増する需要に供給が追い付かず増築を迫られた形だ。マザー工場は埼玉だが、あえて島根の工場を拡大した理由には、埼玉に比べて地元人材を確保しやすかったことが背景にあるようだ。
今回の工事で工場面積は2.5倍に拡大。新たに最新鋭のレーザー加工機も導入し、パイプの3次元加工も可能になるなど、製造のバリエーションも広がった。これにより、約3倍の製造能力を有するとともに、パイプを自由な形状に肉抜きすることで、テーブルや椅子の脚に多様なデザインを表現することが可能になった。
シースルー階段とは、踏板のみで構成されたデザイン性の高い階段。蹴込板がないため背景の景色がそのまま見えることからこういった名称で呼ばれている。昭和や平成初期の住宅では、玄関に入るとすぐに階段が現れる構造が多くみられたが、近年は家族とのコミュニケーションを増やすべく、子供部屋など上階個室への動線上にリビングを据える間取りが増加した。このためリビングに階段が設置されるケースが増えている。
同社が施主500人、住宅事業者500人に対して実施したマイホーム建設に関するアンケート調査によると、住宅設計者の2割以上がリビング階段のある間取りを支持している。また、回答者全体の約7割近くが、リビング階段を取り入れたいという意向を示した。このように、リビングと調和し、意匠性を高めるべくシースルー階段の需要はかつてなく高まっているという。
同社販促企画部の日高萌氏は、「リビングに階段を設ける住宅は増えており、ある調査によれば、全体の半数以上がそのような住居となっています。当社のシースルー階段はスチール製であるため強度が確保しやすく、結果的に線の細いデザインを実現可能です。これにより採光性に一層優れ、施主様、ハウスメーカー様に好評いただいています」と自社の強みを語った。
同社のスチール階段をはじめとした製品群は、物件ごとのセミオーダーを基本とする。寸法もさることながら、金属をつなぐ時に生じる溶接痕を目立たせなくするデザインが同社の売りだ。社内には専用の設計部隊があり、近年はその強みを活かして他分野への参入も活発。家具・インテリアもそのうちの1つだ。2023年より本格的に参入し、日経メッセ、IFFT2023に出展して受注やパートナー企業の模索を図ってきた。自社製造のスチールテーブルや椅子、ベッドだけでなく、チェアの脚部やベッドなどのOEMや、タイアップでの製品開発も取り組みが進む。
スチール家具製造も拡大へ
日高氏は、「今回の増築工事で、階段のみならず、家具の生産力も拡大しました。また、自社製品の開発だけでなく、他社協業やOEM品についても積極的に受注するよう動いています。OEMでは大量生産が条件となることが多いですが、当社の製造ラインの構成上、ロット1の受注生産でも対応が可能です。最大5mの長さで、レーザー加工、溶接、塗装を一気通貫で実施できる工場は日本でもごくわずか。加工種別ごとに工場を分けた場合と比べ、納期、価格、品質で大きなメリットを出すことができます。
それに加え、営業、設計の柔軟な対応が強みの会社なので、様々な分野でものづくりをしていきたいと考えています」と意気込みを見せた。
同社は今年11月にバンブーエキスポに出展を予定している。スチール家具を展示予定としており、協業やOEMの相談も現地で可能なようだ。
(長澤貴之)