飛騨産業 Haruka Misawa Exhibition「HIHI DADA」開催 飛騨地域のブナ材使用、個性的なデザインの「HIHI」と「DADA」

飛騨産業(岐阜県高山市、岡田明子社長)が、日本デザインセンターの三澤デザイン研究室の企画による展覧会「Haruka Misawa Exhibition『HIHI DADA』」を、2024年11月12日(火)~17日(日)の期間、東京神宮前の「+81 Gallery Tokyo」で開催している。

「DADA」(左)と、「HIHI」(右)

展覧会では、三澤遥氏が飛騨産業のためにデザインした国産材の新作椅子「HIHI(ヒヒ)」と 「DADA(ダダ)」を、インスタレーションとともに披露している。

「HIHI」

「HIHI」と「DADA」のネーミングは、飛騨産業の「HIDA」が由来。本格的にプロジェクトが始動したのは約1年前だ。「HIHI」はシンメトリーデザイン、「DADA」は左右非対称のアシンメトリーデザインとなっている。直径34㎜、飛騨地域のブナ材を使用している。

「DADA」

当初は曲木の技術を用いて製作する構想もあったが、試作段階でフィンガージョイントによる色の変化を魅力に感じ、フィンガージョイントによる製作となった。飛騨地域のブナは小径木が多く、曲木よりもフィンガージョイントで短い材をつないでいった。ホゾやダボを使用していない点もこれらのアイテムの特徴の一つだ。会場ではナチュラルの基本色のほか、三澤氏がセレクトしたレッドおよびグレーグリーンの特注色仕様も展示された。

デザインおよびインスタレーションを手掛けた三澤氏は「お昼間の自然光の中で見ていただくと、椅子のやわからな質感や、日常の生活感のなかでどのように椅子が存在しているかを、体感していただけると思います」と語る。

「私自身、プロダクトと呼ばれるものをチームで製作したのは今回が初めてでした。これまではどちらかというと抽象的なものを手掛けてきたのですが、今回は椅子ということで、座るという機能面をクリアしなければならないため、初めは力んでいました。しかし途中で少し考えが変わり、親しみのあるフレンドリーな存在のアイテム、そばに置きたいようなものを作ろうと思いました。座っていない状態でも、愛くるしく、ずっと見ていたくなる、ほっとするような存在として、プロダクトの延長で製作できたら良いなと考えました」と三澤氏は話す。

特注色仕様も展示している

曲線がオブジェクトになっていく要素を追求し、木材でできたパーツを活かしてオブジェクトを作り上げていった。

「HIHI」と「DADA」の開発過程で、強度をクリアするために追加された脚貫も、今回のアイテムの特徴の一つと言えるだろう。一次試作時は脚貫なしでの製作だったが、同社の10年保証の基準をクリアするべく、直径28㎜でカーブを描く脚貫が追加された。

緩いカーブを描いた「脚貫」にもこだわりが詰まる

「HIHIとDADAは、もちろん椅子ではあるのですが、”まさに椅子だ”というプロダクトにはしたくなかったのです。このようなオブジェクト的なアイテムでも、しっかりと強度試験をクリアできるというところを大切にしました。34㎜以上の直径にすれば、強度は強化できますが、あえてこのサイズにこだわり、強度とフォルムとのバランスを意識しました。脚貫も強度確保のために設けましたが、最初は直線の脚貫でした。これをカーブさせること、カーブの向きも様々な方向で悩みながら、このデザインに行きつきました」。(三澤氏)

デザインと強度とのせめぎ合いの中で生み出された「HIHI」と「DADA」。国産材、デザイン、そして飛騨産業の技術力という魅力が結集したアイテムだ。

(佐藤敬広)