
――ドリームインテリアのWEBサイトにも詳細に書かれていらっしゃりますが、加藤さんのこれまでのご経歴を拝見すると、特に新築マンションのインテリアコーディネートを得意とされているのですね。
加藤 私自身、かつて新築マンションを手掛ける事業部に勤めていまして、当時は新築マンションをご購入された方へのインテリアコーディネートをお手伝いさせていただいていました。そのような物件では、比較的大手企業さんに勤めていらっしゃるサラリーマンご家族が多く、良い意味で“悪目立ちしたくない”、普通のコーディネートがよいという方が多くいらっしゃいましたね。
そのような中でも、個性的なインテリアを望まれるお客様に対応する機会があり、“ちょっとやりすぎかな”といった私の個性を出した提案も受け入れてくださる方が多くいらっしゃったため、企業に所属してコーディネート提案を行うよりは、独立して独自のサービスを提供したいと考えました。このような経歴をもち、マンションの空間づくりなどの工程について一通り理解しているというところから、新築マンションについてのコーディネートについて多くの案件に携わらせていただいています。
――今現在、主な顧客層などのような年齢層の方が多いのでしょうか。
加藤 30代から40代で、特に私のお客様で最も多いのは男性の一人暮らしの方、富裕層の一人暮らしの方といった感じです。サービスの提供エリアは全国ですが、基本的には都内に住まいを構える方が多いですね。少し離れた場所のケースだと、山梨県の河口湖の別荘といったところです。海外に住まわれている方でも、後に都内などに引っ越される予定があるような方などに、オンラインで相談させていただいているケースもあります。
――海外に住まわれている方だと、日本国内のショールームを見てまわることは難しいですから、そのような方々からの要望も多いというわけですね。
加藤 そうですね。普段は都内にいらっしゃらないので、自ら探しに行く時間がとれないような方や、都内に住む理由があって物件ももっているけども、普段はアメリカなどの海外に住んでいらっしゃるような方、あるいは例えば今はイギリスに住んでいるけれど、3ヶ月後に日本に戻ってくるといった感じのお客様がいらっしゃいますね。
――今回、新たなサービス提案を開始されたということですが、これについて詳しく教えていただけますか。
加藤 従来のインテリアコーディネートサービスに加えて、「コーディネートにかかる手間と期間を短縮して簡単に済ませたい」というお客様に向けたプランとなります。「素敵な空間は手に入れたいけど、プロセスは省きたい」という方もいらっしゃりますので、そのような方に向けたサービスです。先ほども申しましたが、顧客の方々は男性の一人暮らしの方、特に会社経営者の方が多く、実は7割以上を占めます。したがって、そのような方々にご利用いただくことに適したサービス内容としています。
――通常のプランとは具体的にどのような差異があるのでしょうか。
加藤 通常のサービスは、お客様にヒアリングしながら、常に伴走する形でショールームなどに同行し、家具選びなどもお手伝いしつつ、ウェブでの打ち合わせも何度も行うような内容となっています。お客様がイメージしていらっしゃる”こだわり”を形にすることについて、全面的にきめ細かくサポートするため、やや時間もかかります。トータルサポートプランですので、一つ一つ丁寧にプロセスを進めていく感じですね。
新しいプランは、「エグゼクティブプラン」という名称にしまして、先ほども申しましたが、”とにかく忙しい”経営者の方むけのプランです。インテリアを決めるにあたり、時間がとれない方に向けて、スピード対応していく形ですね。打ち合わせ回数が少なく済み、オンラインの無料相談の後、現地に行って詳細の確認と打ち合わせの後、提案書をお作りします。ほとんどオンライン上で完結することが多く、次にお会いするときはもう納品の時、ということも多いです。
――賃貸マンションで住み替えをされる層というのも、多くいらっしゃるということですか。顧客のインテリアに対する意識も様々なのでしょうか。
加藤 いい物件が見つかればそちらで暮らし、そして1、2年住んだらまた引っ越しをされるという方は、経費で借りていらっしゃる30代から40代の経営者に多いのではないでしょうか。結構いい物件を、節税対策も意味もあって借りて、またいい物件が出てきたら気分を変えるために引っ越されるなどですね。お客様自身がスピード感をもちつつ、日常生活にこだわりがあって、いいものを買いたいという方は多いです。
コーディネート前に、お好きなアートやクッションのみご購入された方などもいらっしゃるので、そうすると、私の立ち位置も少し変わってきて、お客様が好きなものをお伺いして、それをトータルでまとめたり、色の組み合わせや間取りに合わせたサイズ感についてアドバイスさせていただいたりといったケースもあります。お客様については、美意識の高い方が多いです。インテリアにはまだあまり興味はなくとも、美意識は高くて、例えば洋服などのコーディネートには気を遣っていらっしゃる方なども多いですね。しかしインテリアについては、アパレルと比較すると情報が少ないので、私からブランドなどの情報提供や提案、そして一緒にセレクトさせていただく流れです。
――空間丸ごとコーディネートしてほしいというパターンと、一部をコーディネートしてほしいというパターンでは、どちらの方が多いのでしょうか。
加藤 これについては、最初は「空間全部をお任せしたい」という方が多いのですが、オンラインの打ち合わせを進めていくうちに「このような家具を置いていきたい」とおっしゃるパターンも多いです。最初の無料相談の段階でお客様がご希望になるイメージをお伺いし、こちらでそのイメージを3Dに落とし込むので、その後のオンラインでの打ち合わせの際にもキッチンの場所や窓の広さ、床の色やスケール感などをご覧いただきながら提案します。そうすることで、お客様もより具体的にイメージが膨らみ、「このようなものを置きたい」とおっしゃっていただくことにつながっています。また、まだなんとなく空間のイメージが湧かないお客様については、好きな洋服のブランドやアートをお伺いするようにしています。それを知ることで、空間の全体像を組み立てやすいからです。
――先ほどおっしゃっていた、ドリームインテリアの顧客のなかで、経営を営んでいる一人暮らしの男性というのは、どのような家具を好まれる傾向にあるのでしょうか。
加藤 ケースバイケースではありますが、やはり海外ブランドのものを好まれる方が圧倒的に多いですね。「ホテルライクに」というご要望も多く、細かくお伺いすると「生活感がない感じにしたい」ということを望んでいらっしゃるように感じます。あるお客様からは「座っている時間が長いからソファについては使い心地も見た目もこだわりたく、予算も問わない。だけどダイニングセットはそこまで使用しないから、予算もかけたくない」というご要望をいただきました。
しかし別のお客様は「座り心地が悪い椅子は嫌いなのだが、しかし座り心地がいい椅子にまだ出会えていない」ということで、3、4軒ほどメーカーのショールームにお連れして、座り心地を試していただきました。このお客様の場合お忙しいお仕事の合間に1.5時間・2時間と細切れで時間を作って頂きショールームにご案内していましたね。このように、お客様それぞれで本当に千差万別です。個性、こだわりがあるお客様が非常に多いですね。
――最後に、顧客の要望をヒアリングしてコーディネートしていくうえで、大切にされていることを教えていただけますか。
加藤 お客様はそれぞれ、こだわりをお持ちではあるのですが、そのこだわりを言語化することはなかなか難しいものです。したがって可能な限りイメージを共有できるよう、好みの家具の画像などをシェアし、家での過ごし方やそこで何を重視して暮らしたいかなどを汲み取っています。製品そのものの見た目も大事ですが、そのレイアウトについても暮らし方に沿った提案を行えるように心がけていますね。
このような提案についてスピード感を持って行うことができるように、メーカーのショールームを訪問して情報収集なども随時行っています。今年はミラノサローネにも視察に行きまして、ヨーロッパのラグジュアリーブランドの現在の空気感や立ち位置、ブランドが目指している空間の在り方を視察してきました。各ブランドの家具のコンセプトというものは、やはりそのブランドの本国のショップに行くとわかるものなのです。様々な海外ブランドが日本にもショールームを構えていらっしゃいますが、いわゆる「日本での売れ筋、日本人好み」の製品で揃えていらっしゃるブランドが多いのかなと思うので、日本のショールームだけ見ていると、「もっと自由にコーディネートしてよい!」という感覚が鈍ってしまうのです。
ミラノ以外でも、海外のメーカーショールームに行くと、日本の感覚ではあまり見られないようなディスプレイの仕方や色の合わせ方をしているなど、様々な刺激が得られます。したがって私自身が海外を見て回って確認することで、各ブランドのこだわりをよりお客様にフィードバックして伝えることができるように心がけています。
海外のインテリアを見ると、壁や床のデザインについてもっとご提案していきたいと思うようになりました。これまでは工事を伴わない範囲での提案・納品を主に承っていたのですが、体制が整いましたので今後は範囲を広げて内装工事も承っていきたいと思っております。
――本日はお忙しい中、多岐にわたりお話しいただきましてありがとうございました。
(聞き手 佐藤敬広)