――大和ハウスさんはたくさんの住戸を供給されています。どれくらいの規模を年間にやられていて、その中でインテリアに向けてのアプローチはどのような状況でしょうか。
船岡 はい、当社の2022年度の戸建住宅販売戸数は5762戸です。注文住宅は、ご契約後のお客様と一から打合せをしていくため、インテリアコーディネーターとお客様とのコミュニケーションが取りやすく、家づくりを行っていく過程で新居のテイストに合わせた家具を提案することができ、ご成約に繋がるケースが多いと感じます。
具体的には、生活空間のイメージを持っていただくために、希望されるソファやダイニングテーブルのサイズやフォルムを、図面や弊社オリジナルの3Dソフト上に落とし込んで家具の見え方や生活動線なども含めて提案いたします。
一方建売住宅は、その建物のコンセプトや空間に合わせた家具、カーテンを実際に設置して展示する場合もあり、家具を設置していない建物よりも、生活のイメージが沸きやすく、私たちも案内がしやすいです。ケースバイケースですが展示した家具を一緒に販売する場合もあります。
――注文と分譲で少し実態が異なるのですね。会社としてインテリアの提案についてどうお考えなのでしょうか。
船岡 まず当社は、ご契約者様に家づくりの全ての工程を楽しんでいただき、ご満足いただくという点にこだわっています。家具・インテリアの側面で満足度を高めるとなると、床や壁などの内装だけでなく、家具も含めたトータルの空間提案をすることが大切だと考え、その提案は打合せの中で欠かさず行うようにしています。
また、このようなトータルの空間提案も、時代に応じて変化しています。ライフスタイルの多様化に伴い、最近は、お客様が家づくりと並行して新しく購入するおしゃれな家電やスポット家電などを想定しながら打合せをし、それらのカラーや質感を活かしたり、使いやすく見映えのする設置場所にこだわりながらコーディネートしていくという方も増えてきました。テレビの薄型化、大型化により、設置の仕方も置いたり壁に掛けたりと様々で、テレビボードの役割も以前と変わってきましたし、ロボット掃除機を使う方が増え家具の下も掃除機が入れるように、脚が高めのデザインの家具を希望される方も増えました。時代に応じた細かなニーズにも対応したインテリアの提案を心がけています。
――日本にも家具メーカーはたくさんいますが、選定の基準についてお考えを聞かせてください。
船岡 お部屋の大きさや、お客様の予算にもよりますが、家具の提案は、お客様と内外装の打ち合わせを重ねる中で家具の好みのテイストが見えてくることも多いので、要望に合いそうなメーカーや商品、サイズ、配色など総合的に選定し提案するようにしています。
また、家での時間が増えペットを飼う方も増えてきました。そのような方が好む素材感やニーズに合わせた提案をすることもあります。また、家族構成によってはお子様の成長に合わせてカスタマイズできる家具を提案するケースもあります。多様なリクエストに備えて、普段提案する機会が多いメーカーついては、特徴や商品のバリエーション、新製品などについてお客様にお話しできるようにしています。
近年は、お客様がSNSに投稿されている好みのインテリアの画像を集めて、具体的にこういうメーカーやこういうフォルムの家具にしたいというリクエストも増えていますのでSNSでトレンドになっているメーカーや製品もチェックするようにしています。
――様々な引き出しを用意されていらっしゃるのですね。そのインプットの元はどのようなところなのでしょうか。
船岡 過去には年に2回弊社の東京本社でインテリアフェアを開催していましたので、そこで各メーカーの家具展示や担当者様と交流することで情報を得たり、展示会を訪れたりしていました。現在所属する東関東支社では支社内で年二回程度フェアを開催しています。それに加え、地域の提携家具店にお客様をお連れする形式も採っています。コロナ以降、フェアや展示会の機会が減ってからはメーカーから届く新商品情報などには必ず目を通すようにしています。また、最近では営業担当者様と直接お会いできる機会も増えてきましたので直接案内や説明を受けた製品は記憶にとどまりやすいと感じています。
また、お客様に提案する際に、貼地や素材のサンプルは必ずお見せするので、そういった面をしっかりサポートして頂けたりカタログが見やすく内容が伝わりやすいメーカーの製品は一層取り扱いやすく提案する機会も多くなるという面はあります。
――ハウスメーカーとして、家具業界やメーカーに望むことなどあれば教えてください。
船岡 先も伝えましたが、最近のお客様はSNSから情報、画像を持ってこられることが大変多くなりました。このためSNSで集めてこられたインテリアの写真を基に、3~4社を選んで検討、決まらなければまた別のメーカーで選びなおして再検討、といったプロセスを繰り返す傾向があります。各メーカー毎にHP内のソフトで簡易的に家具のシミュレーションができるシステムは少しずつ見られますが、お客様のプランを反映した3D空間でどのメーカーの家具でも簡単にシミュレーションして比較することができれば、時間をかけることなくサイズやフォルム、色などイメージが沸き提案もしやすくなると思います。そのようにメーカーの枠を超えて私たちの方で一堂にコンサルティングができるような協業の動きを進めていって頂ければ嬉しく思います。
また、プランやテイストに合わせてセミオーダーができる家具もニーズが高いので対応して頂きたいです。メーカーによっては素材やサイズが限定的であるケースも少なくありません。家具の使い方や素材も多様化しており、キッチンの天板や扉面材に合わせた素材の家具が置きたい、といったリクエストもよく聞かれます。
――素材の話がでましたが、最近人気の家具素材はどのようなものですか。
船岡 総合的には木製かと思いますが、最近はセラミックや石の素材なども人気があります。コロナ以降家具も含めて消毒をこまめにする方はアルコールに耐性がある素材や、在宅ワークをする方は、家で仕事をする際のテーブルの天板の平滑さやパソコンなど仕事のしやすさ、長時間座っても疲れない椅子など素材に加えて機能面を重視される方も増えたと感じています。
――最近多い、インテリアに関するご質問はどのようなことですか。
船岡 家具を選定していく中でよく言われるのは「新居のテイストに合っているか」そして「飽きがこないかどうか」というご質問です。SNSで集めた情報も含めご自身の選択が正しいかどうか最終的にはアドバイスを求めてこられる方が多いとかんじています。SNSの多くの写真や情報の中から、新居に置きたいその家具が内装に合うのか、大きさは不自然ではないか、生活スタイルに合っているのかといったことを聞かれることが増えました。また、SNSやメーカーのカタログで家具は写真映えする特定の方向だけが写っていて、家具の後ろ姿は写っていない場合もありますが、実際の配置においては後ろ姿もよく見える場合がありますので、置いたときには全方向が空間になじむような提案を心掛けています。
大和ハウスの強みは、インテリアも含めてトータルでコーディネートができる点です。情報発信が豊かな時代になり、お客様も多くの情報を得ていらっしゃいます。コーディネートのプロとして、お客様が得ている情報から一歩、二歩先に踏み込んだ提案を行い、暮らしの質を高めるお手伝いができるよう心がけていきたいと思います。
――SNS時代のお客様のインテリア事情について、大変参考になりました。貴重なお話を頂き、誠にありがとうございました。
(聞き手 長澤貴之)