【インタビュー2024】アール・エフ・ヤマカワ 代表取締役社長 木村奬 氏 オフィス家具製造にとらわれない事業展開、4代目社長が手掛けるオフィス空間提案

アール・エフ・ヤマカワは、オフィス家具をメインに取り扱っているファブレスメーカー。現社長の木村奬氏は、空間提案事業などを精力的に推進している。4代目の代表である木村氏に、アール・エフ・ヤマカワの現況とこれからの展望を訊いた。

――アール・エフ・ヤマカワの事業内容について、概要をまず教えていただけますか。

木村 当社は主にオフィス家具の開発を手掛けています。もともと創業時代から本社のある三重県に工場は設けていたのですが、今から20年以上前に、その工場を閉鎖しまして、その後は生産を全て海外に移管しています。海外の工場について、我々の資本が入っている工場はなく、基本的に協力工場という形で取引をさせていただいています。工場の所在地は中国、台湾、韓国など、東アジアや東南アジアがメインです。国内にも協力工場はありますが、どちらかといえば小ロット、特注対応のものになります。

――現在のその主な販路については、どのようなルートが主なのでしょうか。

木村 販路自体は通販が最も多く、カタログ通販とかWEB通販を手掛けていらっしゃる取引先を通じて販売させていただいているケースが一番多いですね。主なところではアスクルさんやオフィスコムさん、モノタロウさんなどですね。ただ、最近ではオフィス家具を取り扱う販売店さんとも取引させていただいています。

――自社でのEC販売もされているのですか。

木村 そうですね。自社ECサイトも運営していまして、そこでの販売も行っています。自社公式通販の他には楽天市場、yahooショッピングにも出店しています。

――通販系の売上が、全体売上の多数を占めているのですか。

木村 トータルでは、全体売上のうちの半数程度を通販売上が占めています。通販と言っても当社ではアスクルさんやカウネットさんなどを「カタログ通販」、オフィスコムさんやモノタロウさんなどを「WEB通販」として売上実績の集計を分け、販売動向分析を行っております。

――コントラクト市場などにも営業をかけられているのですか。

木村 オフィスデザインを手掛けていらっしゃる企業さんなどとも取引があります。あと同業のメーカーさんとかも結構お取引させていただいていますね。

――オフィス家具をメインに取り扱っていらっしゃる御社のこだわり、強みについてまずお伺いできますか。

木村 まず、顧客層というところで言いますと、基本的に中小企業のエンドユーザー、中小企業のお客様をメインターゲットに据えています。大企業のお客様はすでにそこで市場が固まっているので、当社としてはあえてそこに入り込むよりも、実際に同じ立場や目線で関わることのできる中小企業の方々にお届けしたいという考えで事業に取り組んでいます。

当社のこだわりは、デザインとコストのバランスです。良いデザインのものを手の届きやすい価格で販売されているメーカーさんは意外と少ない。我々としては、中小企業の方々にそのような商品をお届けしたいという思いでいます。

――中小の企業からは、どのようなニーズが御社の方に寄せられているのですか。

木村 最近ですと、一時期大企業で流行したフリーアドレスなど、いわゆる「働き方改革」といった要素が中小企業にも徐々に認知されてきています。当社商品の売上実績においても、固定席用のオフィスデスクなどが売上の柱であったのが、次第にフリーアドレス用デスクに売上の柱が移り変わってきています。

直近の当社の売れ筋を見ると、フリーアドレス用デスクの他に、カフェ用のテーブルやカウンターデスクなども好調ですね。フリーアドレスにすると、席数がだいぶ削減できるので、その空いたスペースに「カフェオフィス」のような空間を作りませんかというご提案などもさせていただいています。

あとは、ブース型のデスクも引き合いが多いです。オフィスの集中スペースなどへ向けた販売も多いのですが、学習塾などからもニーズがあります。昨今は副業として、空部屋やテナントを活用した自習室の開業をされる方も非常に増えていて、これは特に地方で多いですね。

――昨今の働き方に合わせた製品開発をどんどんと進めていらっしゃるということですね。

木村 そうですね。時流を的確に捉えていく必要があります。やはりどうしても「売れていく商品」はその時々で変わっていくものだと思います。ファッションほど速くはないにしても、移り変わりはありますので、それに遅れないよう時流の変化とニーズを先読みしながらどんどんと商品を作っていきたいです。

――日本国内のオフィス家具などの見本市に出展などはされているのですか。

木村 見本市については、海外は以前にドイツやアメリカ、フランスの見本市に出展したことがあります。日本でもかつて何度か出したことはあり、将来的にもどこかの展示会に出るという可能性はもちろんありますが、現状で出す予定は特にはありません。

――デザインと、デザインに付随した価格が一番の売りということですが、多くの方が求めやすい価格で提供できる、その理由はどういったところがあるのでしょうか。

木村 デザインに関しては、「付け加えるデザイン」ではなくて、「そぎ落とすデザイン」を意識しています。不要な機能はどんどんと外してシンプルにしていくという考えですね。そのうえで、必要最低限の機能などに価値を付けて出していくことに一番注力しています。

ただ、そうすると、どんどんと物がシンプルになってきて他社の商品と似通ってしまうので、シンプルさの中にどのように価値をつけるかという部分にこだわりを持ち、最後まで気を遣ってデザインをしています。基本的に大量に生産しているので、その部分のボリュームメリットを活かしながら、商品そのものだけでなく梱包にまで気を遣って設計をしています。

――月島にある東京ショールームでは、毎日展示されているものを替えているそうですが、その理由はどのような理由があるのでしょうか。

木村 毎日同じレイアウトですと新鮮味がなくなります。当社は様々な製品を取り扱っているので、レイアウトを変え、雰囲気を変えることで、社員も常に新鮮な気持ちで働くことができるのではないかと思っています。また、何度もショールームに来ていただくお客さまにも飽きさせないようにというのも、一つの理由ですね。

ショールームの見学は予約制で、当社のことをどこかで見つけてくださったお客様が、実際に体感したいといって来てくださるケースが多いですね。特に、椅子などは実際に座ってみないとわからない面があるので、ここに体感しに来られる方が増えています。

あとは、家具だけでなく、オフィス全体をトータルで提案してほしいといったお客様もたくさんいらっしゃいますので、その空間設計の事業も手掛けています。実際にショールームで製品などを見ていただきながら、イメージを膨らませていただいて提案をさせていただくことも多いですね。

――木村社長はアール・エフ・ヤマカワの4代目の社長ということですが、社長に就任されてから何年ほどになられるのですか。

木村 今年で4年目です。当社は私の母方の祖父母、つまり母の両親が始めた会社です。私は社長としては4代目になりますが、世代的には3世代目です。最初は、私の祖父の山川一郎が創業しまして、私の父が2代目として引き継いだのですが、2011年に急逝しました。

それを受け、当時副社長を務めていた私の母がその後を継ぎ、10年経った2021年に私が社長に就任することとなったという経緯です。交代のタイミングとしては、ちょうど区切りのいい10年だったということと、またそのタイミングで、母が社長に就任してから目標としていた年間売上30億円を達成できたのです。したがって、会社として次のステージに行こうという機運もありました。

私自身は、アメリカの大学を出てから1年ほど、現地で仕事をさせていただいていました。そして、家業が忙しいということで呼び戻され、以降はずっと当社に在籍しています。

――では、早い段階から、いずれは社長を継ぐということを意識されていたのですね。

木村 それについてはもう、ある意味生まれた時から、この事業を引き継ぐように祖母からは教育されていました。私が生まれた時からこの会社は在り、両親は常に仕事に従事していたため、幼少期は祖母に育てられました。祖母(創業者の妻)から帝王学のような形で経営者としての考え方を教え込まれたというところが大きかったですね。

木村 製品を海外から輸入しているので、為替に影響される商売なのです。私が役員に就任した当時は、まさに100%為替に影響される事業を展開しておりました。ここをなんとか、 もう少し為替に影響されない事業も展開していきたいということで、この7、8年ぐらいかけて外貨で取引しない空間提案の事業も手掛けるようになったのです。

――オフィス家具製造以外の、トータルな提案ということですね。

木村 オフィスなどの工事案件などを請け負っています。内装工事や空間デザインなどですね。したがって、「オフィスをつくりたいけども、何からどう手をつけてよいかわからない」といったお客様へのご提案が可能です。

このようなオフィス空間づくりの要望は、以前から家具の購入をご検討いただいていたお客様から多く声があがっていました。「そもそもオフィス全般の提案はしていただけないのですか?」といった声をいただいていたのです。

先ほども申しましたが、空間提案の事業は「円と円」での取引ですので、為替リスクが少なく、比較的キャッシュフローのよい事業にもなっており、在庫も関わらない事業ですので、これまでの家具製造と並行して、当社の業績をけん引している事業になりつつあります。

――現状の課題と今後の展望、国内外への戦略をお伺いできますか。

木村 まずは課題に関してですが、我々はまた自分たちのブランドとして販売できている商品のラインナップが、なかなか足りていないという要素があります。したがって、商品ラインナップの拡充が課題です。

比較的低価格帯から中価格帯ぐらいまでのものは取り扱っているのですが、高価格帯のラインナップがまだまだ少ないです。この高価格帯ラインナップについては、そもそも自社開発するかどうかを含めてまず検討が必要ですが、様々な事業を手掛けていく中で自社の商品ラインナップのみでは対応できないことも確かです。

したがって、現在高価格帯のブランド商品を仕入れさせていただいて販売するケースなどもあります。実際、ブランド名で購入されるお客様も少なからずいらっしゃるので、そのようなニーズにも企業として対応できるようにはしていきたいと考えています。

もう一点、先ほど申し上げた通り、当社としては成長事業である空間提案事業を、今後もどんどんと広げていきたいと考えています。他社とのその差別化について、当社はメーカーであるという要素で、開発力を活かし、特注家具なども含めた家具提案に長けている点で、まず一つの差別化はできているのですが、しかしながらそれ以外の差別化ができていないので、そこも一つの課題と認識しています。

当社のターゲットは中小企業のお客様であり、日本では全体の9割以上の会社が中小企業です。その中小企業で働く方々に、「毎日気分が上がるようなオフィスでお仕事をしていただきたい」というのが、私の願望、夢でもありますので、そのような企業を一社でも増やしていきたいという想いはありますね。

――どのようなアプローチを心がけていきたいとお考えですか。

木村 まずは、「働き方を変えていきたい」という想いのある企業さんへの提案を進めていきたいと思っています。いわゆる、「昔ながら」のお仕事をされている企業はまだまだたくさんいらっしゃると思っていて、そのような企業に空間を通して「新しい働き方を提案していく」というところが一つです。

特に今は採用難ということで、オフィスの環境を整えることは必要不可欠になってきていると感じています。そのため、当社としても特に東京のオフィスはデザインにこだわった空間作りを行っています。さらに、お客様にここに来ていただき、こだわりをお伝えすることで、新しい理想のイメージをつかんでいただきやすくなり、商談が進めやすくなっています。やはり、いろいろな方々に当社のことをもっと知っていただきたいと思っていますね。

――最後に、ユーザーの方々へメッセージをお願いします。

木村 仕事の空間や住まいの空間など、誰もがいい空間で過ごしたいという思いを持たれているはずです。そこに対して我々は、使いやすく、そして全体の空間デザインに馴染むような商品を目指して開発に取り組んでいます。したがって、その要素にこだわりを持たれていらっしゃるお客様には、是非お問い合わせいただきたいなと思います。

(聞き手 佐藤敬広)