【インタビュー2024】AKASE 代表取締役社長 藤井幸治 氏

 

AKASEのMASTERWAL直営店、家具+カーテン、ラグ等の空間提案へ

 ――AKASEさんの家具のどのような点がエンドユーザーの皆様に評価されているとお考えですか。
 藤井 弊社は年に2回、小売店様とエンドユーザー様にアンケートをとっています。その中で「AKASEの家具を使うと部屋が恰好よくなる」と思われて購入されているケースが、ありがたいことに多いようです。昔からこの回答は多いので、店舗では私たちも、お客様はそこに価値を感じてくださっていることを念頭において空間提案をしています。そして今、全体の65%が新規で、35%が既存のユーザー様です。だんだんとリピートのお客様が増えてまいりました。アンケートによれば、リピートの鍵となる要素の第一位はデザイン、第二位は品質でした。

 ――自分の部屋のイメージを持ちにくいお客様は世の中に多いと思うのですが、AKASEさんが2006年から展開している家具ブランド「MASTERWAL(マスターウォール)」直営店に相談に行き、気軽にニーズを聞かせてほしいという想いはあるのでしょうか。
 藤井 もちろんそれはあります。むしろお客様の声を聴きたいからこそお店をやっているという側面が強くあります。私たちの直営店はそんなに大きくありませんが、その分スペースを有効活用して部屋のスタイル表現に重きを置いています。皆様の参考にしていただけると思います。また、お客様の意見から商品が生まれることも少なくないのです。

デザイナーの小林幹也氏と、小林氏デザインの「US1ソファ」
MASTERWAL 小林幹也氏デザイン「YU COLLECTION 2023」新作発表会開催 -AKASE & Mikiya Kobayashi-

 ――例えばAKASEさんのソファを買うと、ソファだけは格好よくなるかもしれませんけど、まわりがどうかというとそうではないですよね。そういう不安については?
 藤井 お客様の中で多いのは、ソファを買って、次にダイニングセットを買う、というリピートの方が多いです。買い足していって頂ける方が多くいらっしゃいます。買い足しても変にならないラインナップ、商品の調和に重きをおいて開発をしているのも弊社の特長です。例えば、デニッシュはもう20周年を迎える製品です。最初はカウチソファのみだったのですが、この20年間でオットマンが生まれ、ヘッドレストが登場し、棚やサイドテーブルが新たに加わりました。周りの関連アイテムを増やすことで、家具だけでなく空間提案へ繋げているのです。私たちは関連アイテム、付随するアイテムの多いメーカーだと思います。

 最近では、カーテン、ラグ、照明にも力を入れています。今まで接客していると、「カーテンはないんだね」とおっしゃるお客様が多かったのです。今後は寝室向け・寝具にも力を入れて参ります。空間提案に向けて、ラインナップの一層の充実を考えております。

ウォルナット好き、長期間愛用できる家具をお探しの方に最適

 ――エンドユーザー様の好み、テイストは様々と思いますが、どういう方とベストマッチだと思いますか。
 藤井 やはりウォルナットがお好きな方でしょうか。またコンセプトにある、「100年後のアンティーク家具へ」も大きなコンセプトです。飽きの来ないデザインで、長く使っていきたいとお考えのお客様に是非見てほしいと思います。代々使って頂けるデザインにしているのですが、根幹にはそのコンセプトが根ざしています。

 ――なるほど、では修理やメンテナンスのご希望もあるのでしょうか。
 藤井 はい、こまやかに対応させて頂いています。クッションを変える、張地の張り替えをする、細かな傷にも対応するなどメンテナンスには特に力を入れています。また、買い取りもはじめました。最近横浜で、ポップアップストアを開き、一か月間限定で、中古で買い取って修繕してお安く再販するという取り組みを行いました。お客様からの反応はよく、本社岡山付近で再度展開するか検討をしています。

 ――若年層でAKASEさんの製品を使いたいという方にもよさそうですね。
 藤井 まさにそうなのです。値段も従来品の3割ほど安くなっていました。無垢材ですので、薄く削ることで表面も綺麗になります。

 ――AKASEさんは、特にどのような年齢層のお客様が多いですか?
 藤井 40代周辺の方とご年配の方が多いですが、近年はありがたいことに若い方のファンも増えてきております。特に、COMMON ROOTS(コモンルーツ)シリーズはもう少しお求めやすい価格設定にしており、チェアも4万円台で提供しております。節を有効活用した家具で、これもウォルナットの家具です。

 ――お部屋をどのようにすればいいか悩んでいる人に、その他どのようなアプローチをなされていますか。
 藤井 自分の部屋をどのようにデザインしていけばいいのか、悩んでおられるユーザー様は少なくありません。店舗スタッフは、そのようなお客様のニーズを聞き出し、必要に応じて3Dシミュレーションを行ってサポートすることもあります。お客様も設置後のイメージを持ちやすくなり、どのような部屋が自分に合うのか具体的なイメージを持ちやすくなります。

 ――お客様のインテリアのトレンドで最近お感じになられていることはありますか。
 藤井 この前、あるハウスメーカーの設計の方がおっしゃっていたのは、今、家を建てるお客様はSNS等で取得した写真を持ってきて、「この写真通りつくってくれ」と要望される方が増えているそうです。皆様、部屋をどうしたらいいのかわからない方は、案外多くいらっしゃるのだということかもしれません。実際、モデルとなった写真を見て、弊社の家具であることを突き止め、私たちの直営店にハウスメーカーの方とそのお客様がご来店するというケースは散見されます。どうしたらよいかわからないお客様が多い中、SNSやシミュレーションソフトの進化が購買決定行動に影響を与えているように感じます。

 ――SNSなどの写真は販促効果が大きいということですか。
 藤井 はい。一般の方が撮られた、リアルな家の写真なのですが、弊社のソファも使われていたものでした。その写真をハウスメーカー様のお客様がお持ちになられて参考にしながら、家具を買って行かれたケースもありました。
 私たちは商品の参考写真や実例写真を撮ることが多いのですが、やはりどうしても商売のにおいといいますか、作られた感じが強く出てしまいます。そういった実例写真は飾られていないリアルなものなので、説得性がありますが、用意するのも簡単ではありません。弊社ブランドの良さを知って頂くためにも、今後の課題としたいと思っています。

 ――御社がエンドユーザー様に今知って頂きたいことはどんなことでしょうか。
 藤井 やはり、長く使えるという点、ウォルナットの美しさが主でしょうか。家具はもちろんそうですが、私たちの家具に合うようにカーテン、ラグも用意していますので、気軽に来店いただいて部屋のイメージを一緒に決めていけたら、と願っております。

 ――AKASEさんの家具のイメージや、空間提案の取り組みについてなど、興味深いお話をお聞かせいただけました。本日はありがとうございました。

(聞き手 長澤貴之)