【インタビュー2024】ミサワ 代表取締役社長 三澤太 氏 全国のunico店舗で組織力を活かしたインテリア提案 法人対応の強化や異業種とのコラボ、海外進出も視野に

――全国にインテリア・ライフスタイルショップの「unico(ウニコ)」を展開されているミサワさんですが、まずは現在の業績についての現況や、新たな販路拡大に向けての戦略などをまずお伺いできますか。

三澤 一昨年から円安が進行したことが、業績には大きく響きました。その影響が商品の価格にも影響しています。生活において、衣食住だと「食」がまず優先で、その次に「衣」。我々の扱うような家具・インテリアアイテムは、その中でどうしても最後に考えるものになってしまいます。極論を言えば「無くてもよい」ものですので、なかなか難しい状況です。価格転嫁についても当然難しいですので、経営的な環境としてなかなか厳しかったという認識です。

そのような中で、当社の販路は現在、リアル店舗49店舗、そしてECでの販売の2つがメインとなっています。今期の重点的な施策としも販路拡大を掲げており、着手中のものを含めて大きく3つの戦略を考えています。

まず一点目は、「B to Bの法人対応の強化」です。これは以前から取り組んではいたのですが、一昨年ぐらいから、その法人の部署を拡充して人員も増やしています。今までは法人部門の守備範囲も限定的で、BtoBの中でも主に住宅の案件が中心だったのですが、今後は企業様の福利厚生の充実のための提案や、コントラクト案件の提案も図るなど、BtoBの領域を拡大していこうと考えています。

二点目は、広報・PR面です。かなり前にもこのような部署はあったのですが、なかなかうまく機能させることができていなかったのです。今回改めて担当者を設けて、売上・利益拡大を図る一つのチャンネルとして機能させていきたいと考えています。他の企業様とコラボなどの取り組みを共にさせていただくことで、我々が今までリーチできなかったような領域の方々に認知していただき、購買に繋げていきたいと思っています。

当社はSPA(製造小売業)の形態を採っていますので、クリエイティブ部門を社内に設けているのですが、それを最大限に活用するという意味で、異業種の企業と組ませていただき、我々もデザインとして協力をさせていただくといったことや、お互いの販路に乗せて販売させていただくといったことによって、新たな一つの活動として見出していこうと考えています。

三点目は、海外への進出です。これは着手したばかりなのですが、今年の2月に行われたインドネシアの家具見本市に出展しました。海外への出展は初めての試みでして、為替の影響を極力本業に影響のない形にもっていきたいという考えのもと出展しました。

以前から海外からは出店に関するお話はいただいていたのですが、ニトリさんを除くと我々の業界の中で海外での成功事例、先人を切る企業さんが無かったことなどで、なかなか展開は難しいのではないかと思っていたのです。アライアンスを組むことができる企業さんも見つけることが難しかったという面もあり、少し二の足を踏んでしまっていたところはありました。

しかしながら、タイミング的にチャンネルを拡大すること、為替の環境などを踏まえ、主にASEANなどのマーケットで我々の製品が受け入れていただけるかどうか、その反応などを展示会で得たかったというのが、出展の一番の理由でした。基本的にはフランチャイジーを探したいというのが、最も望ましいアライアンス形態ではないかと考えていますので、海外のブランドビジネスを手がけられるような事業会社さんが対象になってくるのかなと思っています。初めての出展ということで、我々の商品自体が通用するのか、ニーズが我々の商品に対してあるのか、その試金石的な位置づけで出展しました。

――海外に出展されたということですが、来場者の反応、手ごたえはいかがでしたか。

三澤 一般のお客様も入場される展示会でして、当初はASEANの方々が多いのかなと思っていたのですが、どちらかというとインドネシア国内の方々が半分ちかく、あとは欧米の方々がもう半分といった印象の来場者層でした。欧米の方々は、インドネシアが得意とするラタンの家具や、マホガニー材などその土地特有の素材重視で見に来られていたので、我々の扱っている商品は対象外だったように思います。

しかしながら、インドネシアやASEANからの来場者の反応ですと、当社はあのエリアでおそらく初お目見えのはずだったのですが、SNSなどを通じて当社のブランドを知っているという方が意外と多かったのです。シンガポールやタイに店舗を持っているバイヤーの方々からは、ぜひ出展してほしいとのお声がけもいただきました。

インドネシアやベトナムといった国はかつて、いわゆる列強とよばれた欧米の国々の植民地でした。その影響で、大きな家具などでは地元のプリミティブ(原始的)なものなどが中心だったようですが、最近は若い世代の方々の間で、いわゆるジャパンディスタイルのもの、「シンプル」「ミニマル」といったことばがキーワードになっているようです。東南アジアの国々は人口も増えていますし、労働人口世代も非常に若い。

そのような方々が、都市部で40平米、50平米ぐらいの空間のところで生活されるケースが増えている。所得も上がり、家具への感度についても平準化されてきていると感じています。したがって、今当社が取り扱っているような家具に対しての需要という意味では、タイミング的にもそうですし、感性や経済の部分を考え合わせても、そんなに悪くない環境が整ってきつつあるのではないかという印象を受けました。今後はASEANや東アジアを中心に海外の展示会へ出展を目指すべく、新たな部署を立ち上げて計画していく予定です。

――製造は国内外の企業と手を組まれていますが、今後もより拠点を拡大していく方針でしょうか。

三澤 まず、日系の企業で海外にも進出されているメーカーさんは、クオリティの面でも安心です。基本的に売上の面で、1社の工場で10%以上にはしないようにするというポリシーがありますので、その要素を維持しながら新たな国や取引先のメーカーを広げていくのは、なかなか難しい面はあります。しかし、どんなに良い製品を作る海外メーカーであっても、昨今は地政学的な問題もありますので、今回インドネシアに当社のオフィスを新たに設けて、製造拠点の分散・平準化に取り組んでいこうとしているところです。

――先ほど、法人向け提案の強化とおっしゃっていましたが、5月に行われるオフィス施設用家具や設備の見本市「オルガテック東京」にも初出展されるそうですね。どのような展示を行われる予定でしょうか。

三澤 我々が今取り扱っている商材は、ホームユース向けのものになります。以前、国際ホテル&レストランショーなどに出展したことはあったのですが、なかなか直接的に取引に結びつきにくかったり、売上に繋がりにくかったりといったのが現実でした。しかしここのところ、これは一部コントラクトをスタートしようという動機にも関わってくるのですが、特にオフィス関連で法人の引き合いをいただくことが増えてきました。

以前ですと、オフィス然とした、とにかく仕事をしやすい機能的な部分に焦点を当てた形の需要が大きくありました。しかし、サイズ感的にもそこまで規模の大きくない企業さんや、ライフスタイル寄りの企業さんなどですと、オフィスはあまりオフィス然としたくない、というような思考の広がりが定着してきているように思いますし、それに伴って我々にもそのような引き合いがいただけているのではないかと理解しています。ホームユースを中心に取り扱っているからこそ打ち出せる部分を強みとした形で、オルガテック東京に今回初めて出展します。

――次に、ブランディングの強化についてですが、unicoの名前をこれまで以上にどのように拡大していきたいとお考えですか。

三澤 先ほどもお話しましたが、広報・PR感動を積極的に展開していきたいと考えています。当社の認知度について、これはアンケート対象にもよるのですが、例えば「ゼクシイ」などの雑誌の場合、30~40%の方々に認知いただいています。

しかし、まったくスクリーニングなしのアンケートでは10%ほど。日本は人口が減っていることや、そして昨今の市場環境なども考え合わせていくと、やはり入口の部分を広げていくことが必要ではないかと考えています。広報・PRのほか、SNSの活用、アンバサダーマーケティングを設けるなどの取り組みを加速させます。

ECについては、Eコマースとしての役割自体ももちろんですが、認知度拡大のための販促、マーケティング効果も狙いながら進めていきたいと思っています。これまで我々が対象として見ることができていなかったユーザーのユーザージャーニーが把握できていなかったので、そこに到達できるような手段を、SNSなどを中心に試していこうという段階です。

――ECのお話がありましたが、ECと実店舗のシナジーはどのようにとらえていらっしゃりますか。

三澤 コロナ禍の時期ですと、店舗を閉めていた影響もあり、全体の売上におけるECの比率は約50%まで上昇しましたが、今現在は売上の中におけるECの構成比率は約20%ほどです。これは「オンライン」と「オフライン」を分けていた当時の話ではあるのですが、売上拡大を図る中で、全体の売上に対してオンラインがその拡大に悪影響を与えかねない、もしくは全体売上を最大化するためのオンラインの最適値が30%ぐらいではないか、といわれていた時期がありまして、一時は我々もそこを目指して取り組んでいました。

しかし当社を支持してくださるお客様のユーザージャーニーですと、「店舗に来ないで購買を決める方」というのが、ほぼいらっしゃらない。決して安くはない価格帯のためなのかなと思っていますが、そのように考えると、なかなかECだけで完結というのは難しいのです。

したがってECの役割というものは、最終的には全体売上を最大化していくためのものですが、戦略目標としては店舗にいかに送客するか、いかに早い段階で店舗に送客をするかというものだととらえています。今現在、それを目標としたときの指数というのは、20%くらいだろうという認識です。数字ありきでターゲティングしているのではなく、あくまでも店舗送客を早い段階ですることの主目的として、ECを活用しています。

――近年はECをメインとしている家具インテリア販売企業でも、実店舗の展開を拡大するケースが出てきました。

三澤 それぞれの企業で当然、考え方は異なりますが、しかしどの企業も全体売上、利益の最大化というのが、理念の下のところにあるのは間違いありません。そのように考えていくと、実店舗とECの収支構造は全く異なりますので、ECをメインとされてきた方々にとっては、実店舗の運営は全く異なるノウハウとなるわけです。今までリーチできなかったエリアにおいての販路拡大の取り組みや、人件費や賃料をどのようにとらえていくか。実店舗としての効果というのが本当に全社的な売上拡大に寄与しているのかというジャッジで、今後の拡大の手法なども決まっていくのではないかとみています。

例えば、ある商業施設に同居している競合他社さんがあったとして、我々としては「競争が激しくなった」という印象はあまり持っていないのです。結局のところ、マーケットのサイズは変わらないのですから、そのシェアの取り合いといった話になるのだと思います。例えば、なんばパークス(大阪府)に当社は出店しており、そこには多くの同業他社さんの店舗もあります。あのような商業施設には、そこを目指して来られるお客様の母数がとても多い。

そのような施設に、新たに同業他社さんが出店されると、今まで経験しなかったような数のお客様も来店されます。したがってその施設に、インテリアに興味のあるお客様を集約することができるため、プラスの面のほうが大きいという印象です。

――昨今の家具・インテリアのトレンド感については、どのようにとらえていらっしゃるでしょうか。

三澤 リサーチレポートを定期的に見ていますが、やはり「多様化」傾向にあるのは間違いないでしょう。これは海外の話になりますが、シンプルで素敵なものに対しては根強い人気があり、そのスタイルのアイテムが汎用的・一般的になってきていると感じています。我々も基本的に、一つのスタイルというものには絞り込まず、その時々の変化・ニーズをデザインに採り入れていく考えではあります。

しかし、「流行り」や「決まったスタイル」というものが無い時代になっているのかなと思いますし、そのような時代に入ってからも久しいのではないでしょうか。そのような中で、結局はシンプルでミニマルなアイテムというものが、しばらくはベースになるのではないかとみています。

――今後のインテリア提案の充実に向けた課題や施策についてもお伺いできますか。

三澤 まず、「もの」から興味をもって当社の店舗にお越しいただくお客様は、おそらく100%に近い割合でいらっしゃると思っています。したがって、「商品の品質は良いものでなければいけない」というところは自明で、絶対的なものです。

ただ、「ものを作る」という意味で言うと、MDが商品政策ならば、今ですとSPAが増えていますし、我々の競合他社の企業もおそらく自社で商品企画を行われているところが多いと思います。他社さんも同じようなマーケティング手法で作ってきますので、ユーザージャーニーがどうであるかリサーチを行い、強みを抽出して自社の形態に落とし込みを行うことについて、ほぼ同じ過程をたどります。そうすると、商品の差異化は当然難しくなってきます。

したがって、それ以外の部分でいかに差異化するかというところが、我々としては大きいのではないかと考えています。当社では以前から「ルーミング」という呼称で「家の中のお部屋のように店舗空間を見せていく」ことに取り組んでおり、ビジュアル面も強化していますが、店舗の空間作りにおいても、プライスカードなどのグラフィックの要素についても力を入れることなどで、広義の商品力を高め他社との差別化を図っています。

当社には、スタイリストのスタッフや、販売促進のスタッフ、グラフィック製作のスタッフも在籍しています。商品はまず最も重要ではあるのですが、その商品を使ってどのような生活をするのかという提案も大切になってきます。

そしてそれをいかに現場で体現してお客様にお伝えするか、この一連の取り組みをワンストップで行うことが当社は可能です。これは他の企業ではあまり見られない、当社ならではの特性だととらえており、ブランドの世界観やパーパスを薄めることなく、直接お客様に良いタイミングで発信できるという仕組みを構築できています。

したがって、きちんと良い商品が開発できた際には、とても大きなプラスのシナジーが得られると思っています。基本的には、「他社との競争軸を変えたい」という思いが常にありますので、当社の組織の強みや特性を最大限活かした形で競争していければと考えています。

――最後に、ユーザーに向けてメッセージをいただけますか。

三澤 当社はクリエイティブ面や提案力を伴った接客が強みのブランドであると考えていますので、商品やそれに関連するサービス・世界観をワンストップでご提供できます。家具・インテリア販売業界において、自社内でペルソナを設定し商品を開発し、更にユーザージャーニーを考えながら、お客様に向けてブランドを訴求している企業は、他にはないと考えています。全国のunico店舗で商品や生活空間の提案を行っていますので、ぜひお店に足をお運びいただきながら、unicoのブランドを体感していただけるとありがたいです。

(聞き手 佐藤敬広)