【インタビュー2024】アメリカ広葉樹輸出協会(AHEC)日本代表 辻隆洋 氏

ーー御協会の今年の活動予定を教えてください。直近の東京国際家具見本市(IFFT2024)にもご出展予定ですね。

 はい、同展では去年は広島府中、静岡、九州のメーカーと組んでアメリカ広葉樹を使用した家具をつくって頂きました。今年は香川県の家具木工メーカー6社にお願いしています。昨年はチェリーとヒッコリーでしたが、今年はハードメープル(カエデ)とアルダー(ハンノキ)を提供し、家具や内装材をつくっていただき、IFFT2024で展示します。

ーー今年はなぜハードメープルとアルダーなのですか。

 ハードメープルは20年以上前に世界各地で大変な人気を誇りました。今はウォルナットなどの色物と言われる樹種が人気を集めていますが、同樹種は色が薄いためか、現在は人気が下火になりつつあります。しかし、硬度など材質そのものは家具・内装材向けに全く問題がなく、もっと注目されていい樹種だと思います。市場にもう一度再認識頂きたいと考えているためです。アルダーも30年程前、日本で人気でしたが、同じ理由で下火になりました。

ーー去年のIFFTでは、チェリーとヒッコリーをプロモートされました。その結果はいかがでしたか。

 一定程度効果があったと考えます。例えばプロジェクトに参加された静岡の家具メーカーでは現在ヒッコリーを使って家具を作られるようになりました。気に入った顧客もついて、売れ行きも堅調と聞いています。

ーー木材が高騰する中で、ハードメープルとアルダーは価格面でどうなのでしょうか。また、一番人気のホワイトオーク、ウォルナットの代替として価格面を含めて推奨できるような樹種は他にありますか。

 私見ですが、(ハードメープル・アルダーいずれも)価格競争力はあると思います。ウォルナット等の価格水準には及ばないのではないと考えます。

また、ホワイトオーク、ウォルナットはご指摘の通り人気で、円安もあり、価格上昇の圧力が強いのかもしれません。代替材としては前述のハードメープル、アルダーもそうですが、一昨年提案したレッドオークも良い材です。とりわけアメリカ北部のイリノイ州、ミシガン州、ウィスコンシン州等のレッドオークは南部と比べて木目が細かく、色が白いです。

ーーIFFT出展以外ですとどういう取り組みを考えていますか。

 昨年秋にも記者発表会を行いましたが、アメリカ広葉樹は改正クリーンウッド法に対応し、持続可能な資源であり、合法性が担保されている材であることをプロモートしていきたいと考えます。

また、昨年は各主要都市の建築家の方々と懇談会を実施しました。2月に東京、4月に沖縄、6月に北海道、11月に福岡と静岡で開催しました。アメリカ広葉樹のサステナビリティと合法性の紹介、流通、すなわちどのようにアメリカ広葉樹が日本市場に届くのかについて、米国の当協会メンバーも招いて行いました。今年は昨年とは異なる地域で開催したいと考えています。

一般住宅の構造材は針葉樹ですが、床材、階段部材、システムキッチンやテレビボード等には幅広くアメリカ広葉樹が使われますので、参加された建築家の皆様はその点について知見を深め、意見を交換しました。
 
ーー具体的にはどのような意見交換が多かったのでしょうか。

 これまで当協会もプロモーションをしてこなかったこともあり、日本の建築家の方々はアメリカ広葉樹の床材やビルトインファニチャーをどう仕入れたらいいのか把握されていない方が多くいらっしゃいました。この点に関して活発な意見交換が達成されたと言えます。また、各地元の木材業界の方々とコンタクトを確立することができたのも成果でしょう。

建築家の方は工務店さんを通じて木材製品等の手配をされていますが、意匠に携わる建築家に直接、アメリカ広葉樹の良さを知って頂きたかったのです。反応も好評だと確信しています。

ーーその他予定されている活動についてはいかがでしょうか。

 2022年の11月末に金沢で、建築家向けにセミナーを開催しました。今年はそのような取り組みを再びやりたいと考えています。
こちらは前述の懇談会とは異なり情報の一方的な提供を行う形ですが、アメリカ広葉樹の合法性や、製材の有効利用、そして日本の有名な建築家に講演をしていただき、木材の良さについて発信する、といったことを行います。

ーー去年の記者発表会で、アメリカ広葉樹のサステナビリティについて訴求されていたのは印象的でした。そこを啓蒙する動きはどうやりますか。

 メディアを通じて一般に発信をすることに加えて、IFFTなどのトレードショーを通じてプロユーザーへの啓もう、そこから一般ユーザーへ認知が広まることを期待しております。

ーー木材の家具を自宅で使うこと、公共物件で採用することはCO2をため込んでおくことができ、放っておいて自然倒木となるより地球環境には良いそうですね。そのことを日本のメーカーが訴求できるような仕組みは何か考えていますか。

 はい、我々はハングタグプロモーションというタグ、説明書、POPスタンドを無料で配布しています。家具メーカーさんによっては、この説明書を必ず添えて製品を販売されているようです。ここには、アメリカ広葉樹の年間生長量が伐採量を大きく上回っており、サステナビリティのある資源であることを記載してあります。ハングタグプロモーションは、当協会に電話やメールで問い合わせを頂ければ、無料でお送りできます。

ハングタグプロモーション

ーー今年の木材需要、そして昨年の輸入量についてわかっていることを教えてください。

 日本の需要は住宅市場の状況によるでしょう。金利がもし上がったとき、どうなるか読めません。金利が上昇し、円高に振れたら今度は相対的に木材価格も変動します。

2023年は、丸太の輸入が増えましたが、製材は減少しました。丸太はロシアから入ってこなくなり、アメリカからの輸入が増えた構図です。2023年、日本の家具、住宅市場は不調だったことが製材の需要ダウンにつながったのではないかと推察しています。

価格の動向について詳しく申し上げることはできませんが、やはりアメリカ国内の市場と、中国の市場動向に左右されていくと思います。中国市場が回復すれば需要が増え、値段も上昇傾向となるでしょうし、アメリカ国内の住宅市場が良くなれば、やはり上昇トレンドに入るでしょう。しかしアメリカではFRBが金利を上昇させたため、住宅市場は総じてスロウダウンの傾向です。アメリカの景気、中国の景気の雲行きが怪しいと、木材価格は下落傾向になりますが、アメリカ全体で賃金上昇トレンドの影響により、同国の製材所は人手不足である点も見逃せません。今は需要が減っているため現状の人員で賄えている製材所が多く、表面化していませんが、このまま景気が回復すると増産に対応できるのか、という課題が残っていると言えましょう。
 
ーー本日はお忙しい中、ありがとうございました。

(聞き手 長澤貴之)