【特集:広がるホームステージャー(3)インタビュー】米三 常務取締役 増山隆 氏

――御社のWEBサイトにおいて、ホームステージングの紹介を行われています。一般的には、賃貸や中古物件でホームステージングを行い、販売促進や付加価値向上につなげるイメージがありますが、一方で米三はインテリアショップとしての立ち位置です。どのようにビジネス化しているのでしょうか。

増山 ホームステージングと一口に言っても様々な形があります。加えて、都心と地方では事情も異なります。当社は富山県で家具インテリアの販売を中心に事業を展開していますが、富山県は持ち家率が高く、核家族化も進展しています。30代で戸建てを構える文化が今も息づいているのです。

当社のホームステージングの特徴を一言で申し上げるなら、「レンタル料やコーディネート料を主たる収益にしない」点です。賃貸や分譲の室内を飾り付けて手数料をいただくことは、入口にすぎません。狙いは、そこで出会ったエンドユーザー様に店舗へお越しいただき、理想の暮らしを実現するための家具・インテリアをお選びいただくこと。その導線をつくる手段として、ホームステージングを活用しているのです。他社様と同一ではないかもしれません。

――最終的な収益ポイントは、ホームステージングで空間価値を示し、エンドユーザーが御社で購入するところにある、という理解でよろしいでしょうか。対象は新築戸建てが中心ですか。

増山 概ねその理解で差し支えありません。物件の価値を高めること自体はホームステージングの本分で、当社はそこにも取り組んでいます。短期レンタルの典型は二つあります。

第一に、住宅メーカーさんが施主様の完成邸で内覧会を行うケース。家具を設置することで暮らしのイメージを付与しやすくなるので、短期で一式を設えます。第二に、カタログやWeb用の撮影対応です。いずれも短期レンタルの需要が中心です。

もう一つ、当社の柱になっているのが建売・中古分譲への対応です。本格稼働は2019年で、住宅メーカーさんから「新しい建売に家具を入れ、住宅とセット販売することによりお得感を演出し早期販売につなげたい」というご相談が増えたのです。正直に言えば、当初は違和感もありました。というのも、入居者様にはそれぞれ望む暮らしがあります。自分で選んでいない家具が“付いてくる”ことが、必ずしも幸せにつながらない場合があるからです。ここが当社の発想転換のきっかけでした。

富山県でも建売は一時的に大きく伸びました。新築価格が上昇する一方で所得が伸びにくく、30代で家を持つという地域文化の中で、注文住宅の代替として建売や中古リノベが選ばれる構図が広がったのです。住宅メーカーさんは建築費を先に負担しているため、回収リスクを抑える意味でも早期販売が命題になります。当社は家具店として、家という“箱”が動かないと中身である“家具”も動かない。新築着工件数と売上が一定程度リンクするのは事実で、最終的にはエンドユーザーに「理想の暮らし」を手にしていただくことが私たちの役目です。

そこで当社は、モノとしてのソファやベッドではなく、ホームステージングそのものを「サービス商品」として設計しました。仕組みはシンプルで、初期申込料を頂戴し、一定期間、無償でフルコーディネートを提供します。申込料にはプランニング、搬入・設置、撤去、提案一式を含みます。期間中、物件の魅力を最大化し、販売を後押しする。その間に物件が成約すれば、私たちは購入者様との関係にバトンをつなぎ、理想の暮らしを実現するための具体的な選品・納品へと進めていくのです。

――当初はハウスメーカーさんから「家具を入れてほしい」という依頼が中心だったところを、御社が「初期申込金で一定期間無償フルコーディネート」という、より付加価値の高いサービス設計に切り替えた、という理解でよろしいでしょうか。

増山 その通りです。2019年にホームステージング部を立ち上げる前は、営業課宛てに「できるだけ安く、体裁が整えばよい」という趣旨のご相談が多く、受注しても数十万円で収益が止まる構造でした。そこで考案したのが現在のパッケージです。初期申込金を頂戴し、一定期間は無償でフルコーディネートと搬入・撤去まで提供する。その代わり、契約終了時に当社の商品券をご購入いただくというのが条件です。

この商品券は、原則として成約されたお客様にお渡しいただきます。会計上はハウスメーカーさんの支出に見えますが、多くは住宅価格に内包されます。その代わり、当社が空間価値を高め、価格改定が必要になる前の早期成約に貢献する。家が売れても売れなくても商品券はご購入いただく取り決めで、実務上はほとんどが成約に至っています。

――そのサービス期間内に住宅が売れた場合はどうなりますか。

増山 その時点で契約は終了し、規定額の商品券をハウスメーカー様にご購入いただきます。コーディネートの延長も可能で、1~3か月など延長期間に応じた延長料を設定しています。「空室だと印象が弱いので置き続けたい」といった要望には柔軟に対応しています。

――季節や販促の区切りで、内容を差し替えることもあるのですか。

増山 そうですね。季節感の色替えなど軽微な調整から、入れ替えまでケースにより対応します。商品券は購買特典としても差別化に寄与します。「この住宅には家具購入に使える商品券が付く」という訴求は効きますね。

加えて、私たちが感じる大きな課題は、家具購入が住み替えプロセスの最後に回りがちなことです。土地・建物に予算が偏り、入居時には資金が乏しくなる。一方で新居にはカーテン、ソファ、ダイニングセットといったように必需品が並びます。そこで商品券を手にご来店いただける導線を用意することで、理想の暮らしを現実にしていただく後押しができるのです。実際、お渡しする商品券の額面通りで完結するケースは少なく、さらに追加でご購入いただけるケースが多く、一件あたりの単価の押し上げにも貢献しています。

「家具付きで喜ばれるはず」という発想だけでは、お客様の好みに合わず満足度を損なう恐れがあります。私たちは家具・インテリアで日々の幸福感を高めてほしい。そのために、ハウスメーカーさん・当社・購入者様の三者がWin-Win-Winになる仕組み、空間価値を高めて早期販売を支え、商品券で理想の選択を後押ししながら、当社は継続的な関係づくりにつなげるビジネスを設計しています。

――たとえば「A市のA物件」で成約し、その商品券を手に来店されたお客様は、ホームステージングと同じ内容を希望されるケースと、まったく別の提案を選ばれるケース、どちらが多いでしょうか。

増山 商品券を持って来店されたお客様の動きは二分します。ステージング通りをご希望の方も一定数いらっしゃいますが、ダイニングはそのまま、ソファは別モデルにといった“部分変更”が実は多いですね。担当は原則としてステージングを行ったスタッフが引き継ぎます。間取りや採寸、色設計を把握している分、提案の精度が上がるからです。なお、商品券の使い道は自由で、カーテンに厚く振ってソファは控えめ、というケースもあります。

――建売物件におけるホームステージングの提案範囲はどこまでを含みますか。ソファ、ラグ、ダイニングはもちろん、照明やカーテン、小物まで対応されるのかを教えてください。

増山 提案範囲はLDが中心ですが、かなり広いです。置き型照明、ペンダント、フロアスタンド、ラグ、アート、グリーン、テーブルウェア、ディフューザーのような小物まで。壁に穴は開けない前提で演出します。カーテンも要望があれば採寸・提案・施工まで一貫対応します。ハウスメーカー側のリクエスト密度はまちまちですが、当社は最初から「家具だけで終わらせない」方針で営業しており、ペルソナ設定の上で“暮らしの痕跡”まで体現するのが強みです。

――小物やグリーンまで含む依頼は体感でどの程度ありますか。

増山 ほとんどですね。家具・雑貨の在庫バリエーションが豊富なので、トータルで“住まいの温度”まで作り込みます。

――これは御社組織についての質問となりますが、商品券の額を超える追加購入分は、ホームステージング部門の売上実績に計上されるのですか。

増山 計上します。ホームステージングの収益源は大きく三つ。①レンタル料、②建売サポートの申込金、③店頭販売、すなわち商品券の額の超過分もすべて実績計上します。さらに現場での御用聞き起点の案件である、修理・買い替え・追加手配なども部門売上に入ります。この部門は毎年右肩上がりですね。

当社の全体像も補足しますと、店頭販売とは別にBtoB事業を担う「営業部」があり、オフィスや病院、学校向けの造作家具や什器納入を手掛けています。木工所と組んだ特注制作も多く、会社売上の約40%を占める柱です。当社小売の旗艦店である「ファニチャーパークケースリー」は延べ3,000坪。1階が雑貨・小物、2階が家具で、商圏は県内全域。価格帯はミドルが中心で、ニトリさんと競合するレンジは全体の約15%、カリモク家具さんや浜本工芸さんといったミドルレンジが約55%、残り約30%はカリガリスなど一段上のゾーンという構成です。

さらにBtoBtoCの上位レイヤーを担当する別部署もあり、キッチンハウスのシステムキッチン、薪ストーブ、ジャグジー、B&B Italia等のハイエンド家具を扱います。設計事務所や施工会社と連携し、注文住宅の設備・内装をトータルで提案する領域で、ホームステージングとは重ならない市場を担っています。

結果として、社内には外部と接点を持つBtoBの営業部、ハウスメーカー連携のホームステージング推進部、そして上位価格帯のBtoBtoC部署が並走し、それぞれが住宅事業者と密に関わっているという構造です。

――なるほど。多くの家具販売店は住宅メーカーを競合視しがちですが、御社はむしろ共存を志向している、という理解でよろしいでしょうか。

増山 その通りです。ですから近い将来、お互いの強みを補完して底上げできるよう、勉強会を定期化したいと考えています。ハウスメーカーさんは家具の知見が限られますし、逆に私たちは建築側の最新事情を学ぶ余地がある。富山県内では当社がハブになって、双方にメリットが出る場づくりを主導したいですね。

個人的な考えの根っこにあるのは「家づくりは家具から始まるべき」というものです。しかしながら現実は逆で、家がほぼ完成してから図面を持って来店されることが多い。そうなるとサイズが合わない、色がちぐはぐ、といったミスマッチが起きやすいのです。建物にはしっかり投資しても、最後に資金が尽きて「本当は良いものが欲しいけど今回はリーズナブルに買える他社さんで」となってしまうケースも少なくありません。だからこそ、設計の早い段階から私たちと一緒に進めるのが理想だと思っています。

しかし、図面段階で家具目線の提案をこちらから差し込むと、ハウスメーカーさんが構えられる場面もあります。本当は、最初から同じテーブルに着いて進めたいのです。「この壁を少し動かせば、このソファが収まる」「床材をこのトーンにすればダイニングが映える」といった対話を、初期から一緒に行う体制がベストですよね。

不動産の未来も変わってきています。仲介や売買だけでは立ち行きにくい。30代の方々は新築が難しく、車でいう“新古車”的な住宅を探す発想に近づいています。実際、不動産会社さんは中古を買い取り、リノベして供給する動きに力を入れ始めています。新築の返済が月十数万円に対して、中古+部分リノベなら月5万円前後で抑えられるケースもあるなか、そうした文脈で「家具があってのリノベだよね」と考える不動産会社さんが当社に声をかけてくださります。「建材や建具の色を家具に合わせて決めよう」「床のトーンも含めて一体でコーディネートしよう」と。家具の専門知識は任せるから、一緒にやろう、と。

最終的に当社が目指すのは、お客様が“ワクワクする暮らし”を無理なく手に入れられるようにすること。家具のコーディネートを起点に、床・建具・照明・ファブリックまで整えることです。

――最後の質問ですが、業界全体は縮小傾向にあり、人口減少で市場も先細ると見られています。そのなかで御社はどの領域を伸ばしていくのか。コントラクトを一段と重視されますか。それとも、将来的に別事業まで視野に入れていますか。

増山 BtoBはまだまだ伸びます。戦後に建てられた公共・商業施設の改修サイクルが一気に来ていますし、当社は中身である造作・什器までワンストップで担えるのが強みです。建築事務所機能もあり、住宅も含めて“建物に関することは何でも”対応できる体制ですから、ここは攻め続けます。小売は形を変えながら、全体としてはマーケットのニーズに合わせ形を変えながら、現状と同規模で地域に寄り添い事業を進めることになると思います。

そのうえで大事なのは、「面白い暮らしを提供できるのは自分たちだ」と腹をくくることです。ニトリさんがスタンダードを作るなかで、「似たものがホームセンターさんにもあるから、米三は不要」と言われたら終わりです。だからこそ、当社の旗艦店であるケースリーでは2016年ごろから売場を三つのセグメントに分け、住居形態や家族構成まで見据えた“マーケット起点”で編集してきました。

3000坪という旗艦店の大きさは一見強みですが、今の多様化した購買行動とはズレも生まれる。大箱を維持しようとすると数を追わざるを得ず、そこにギャップが出てきました。これからは的を絞って、深く丁寧に手掛ける領域を増やすべきだと考えています。他社さんでは、リビングハウスさんはフォーカスを効かせて尖る、地元のミヤモト家具さんも「天然素材×30代」を徹底されてきました。対して当社は“オールエイジ対応”を続けてきましたが、このままでは数年内に難しくなる。したがって、必ずモデルチェンジが必要だと見ています。

今後については、ユーザーのお客様が当社に期待していることと、私たちができること・やりたいことをしっかりと見据えた展開に集中します。家具・インテリアを手放すことはありませんが、当社は催事も年3回までに制限しています。正直、催事は“麻薬”になりかねない。短期売上は作れても中長期の体力を削るからです。

一方で、どんな隣接の大手が来ても勝てる店づくりは、2016年から一貫して磨いてきました。「店が本質」という軸はぶらさずに、お客様に選ばれる場所として、これからもサービス向上に取り組んでいきたいと考えています。

――お忙しいなか、多岐にわたりお話しいただき、ありがとうございました。

(聞き手 長澤貴之)