【インタビュー2024】一建設 名古屋店インテリアコーディネーター 大苗優香 氏×東北事業部長 兵藤憲治 氏

年間9千棟の分譲実績、注文住宅にも進出

――本日はインタビューに応じていただきありがとうございます。一建設さんは分譲住宅を多く取り扱っていますね。注文住宅も手掛けておられるのでしょうか。

経営企画部 江角 ご指摘のとおり、当社は分譲住宅の供給が中心ですが、注文住宅もお請けしております。年間で、分譲住宅と注文住宅を合わせて約9,800棟を供給しているうち、約500棟、売上高でいうと約84億円が注文住宅で、全体の約2・5%を占めます。お客様の多様化するニーズにお応えするためにも、当社として注文住宅の供給棟数も増やしてまいりたいと考えています。

――本日はインテリアがメインテーマです。インテリアといいますと注文住宅が語られがちですが、分譲・注文の両観点からみたインテリア需要についてと、御社のお取り組みについてお教えください。

大苗 はい、私は名古屋店にて、コーディネート業務を担当しておりますので、東海エリアについてご案内いたします。同エリアでは、住宅ニーズの多様化に対応するべく、注文住宅と分譲住宅のコラボレーションモデルハウスを2020年から展開しています。

今年の9月からは、新たに名古屋市港区にて、空間を広く見せるガラス製の扉(LIXILのラフィス)や幅広タイプの洗面、高級感のあるアイランドキッチンを採用したモデルハウスをオープンしました。開放感のある吹き抜け部分にはホスクリーン(川口技研の室内用物干し)を設置しているので、共働きでも天気に左右されずに洗濯ができます。暮らしのイメージがつきやすいように家具等も設置しています。洗面も通常は750や900ミリの幅ですが、ここでは1800ミリを採用しており、ご家族2人が並んでもご利用できます。外観は人気のボックス型でスマートな形状で建造しました。本物件はモデルハウスですが、販売も行っております。

――分譲と注文住宅のコラボというのはどのような意味でしょうか。

大苗 はい、このモデルハウスは注文住宅仕様で建造されていますが、このモデルハウス自体が建売として販売されていますので、扱いは分譲住宅なのです。5区画のうち1区画にモデルハウスを建てて隣の土地を建築条件付きで販売するので、注文住宅もこのような雰囲気で建てられることをPRするものです。当社は分譲住宅だけでなく注文住宅も対応可能で、一建設が注文住宅を手掛けるとこのような空間になるのだということを、エンドユーザー様に広く認知頂きたいと考えております。

――なるほど、分譲でお考えのエンドユーザー様も、注文住宅でご検討されるきっかけにもなりますね。ところで、ボックス型の住宅が人気とのことですが、会社全体でお取り組みされているのでしょうか。

大苗 一昔前はフレンチっぽいものやかわいらしいものやゴテゴテしたものが人気でしたが、近年はスタイリッシュで、シンプルな住宅が好まれています。建物の上部の破風を極力薄くして、より四角く、「かたまり感」が出せるように工夫しています。

――住宅の外観にもトレンドがあるのですね。洗面がかなり広いですが、これは造作ですか。

大苗 洗面はオリジナルではなくメーカーの既製品です。当社はローコスト住宅を一つの訴求ポイントとしておりますので、造作は極力使わずにご提案をしています。具体的には、アイカのスマートサニタリーシリーズを採用しており、最近ではインスタグラムなどのSNSを中心に人気を集める製品です。カウンター部分や棚の色が、白だけでなく石目や木目を選べるので、造作せずとも現在のトレンドを掴んだ洗面を実現できると考えます。

――家具はどのようなメーカーのものを採用しているのでしょうか。

大苗 愛知県みよし市の富士家具さんと業務提携を結び、物件の雰囲気に合致する家具をリクエストし、提案を受けて、納入を決めます。一棟当たりの価格が決まっている中で、見栄えがよく使いやすい点から、関家具さんなどは使い勝手がよいと感じています。

――他に家具・インテリアに結び付く取り組みはあるでしょうか。東北エリアでもあればお教えください。

兵藤 当社は建売が中心ですが、ニーズの広がりに合わせて、建売でカバーしきれないお客様層を注文住宅でご提案しようという動きを広げています。東北エリアでも、お客様に住居のイメージをお持ちいただけるよう、建売でも家具を入れてお見せしております。2021年ごろから注文住宅の部署も増員し、強化が図られました。また、従来の建売住宅から少し仕様をアップグレードした注文住宅を、「街角モデル」という名称にて展開しています。住宅展示場にみられるようなモデルハウスでは、高額で手が届きにくいとお考えになるお客様でも、検討していただける仕様・価格のレンジでの提案を行っている点が特長です。

今ですと、平屋のモデルハウスを展開して好評いただいています。当社は、建売においては夫婦、子供1~2人を想定した一般的な4LDK2階建ての仕様で展開しておりますが、この層とは違う層をターゲットとしています。家具はメーカーさんなどに委託して床材など、周囲に合わせた製品をプレゼン頂き、決めています。

――建売でも家具を提案されているのは興味深いですね。

兵藤 はい、やはり実際に家具が入った状態を見ることで暮らしのイメージがわきます。東北エリアのこうした家具は、東京インテリアさんから仕入れたものを展示しています。家具を気に入って頂ければ、東京インテリアさんにご紹介することもあります。また、レンタル家具を利用しているケースでは、お客様にホームステージング業者さんをご紹介するケースもあります。お引渡し後、お客様ご自身でお買いになると、ソファやカーテンで家族の意見が合わないといったケースが多くみられますが、プロによるコーディネート提案を受けることで家族の意見がまとまりやすい効果もあるように思います。また、当社ではモデルハウスの販売促進として、このように東京インテリアさんから仕入れた家具や、ホームステージング業者さんが展示したものをそのまま付帯してプレゼントすることもありますが、このような提案は販促として一定の効果がみられると思います。

――家具は全部自分で買うという客と、提案してほしいという客の比率はどのくらいでしょうか。

兵藤 家全体のコーディネートを依頼するお客様はあまりおりません。一方、来客も使う部屋、例えばリビングのような空間だけコーディネート依頼をされる方は比較的多くいらっしゃいます。
割合についていえば、例えば1000世帯いらっしゃるとすると、肌感覚では7割近くのお客様は、何らかの提案をしてほしい、家具までいかなくてもカーテンなど窓回りを提案してほしいというご要望をお持ちと考えます。

――7割近くも。そんなにいらっしゃるのですか。

兵藤 はい。とはいえ、時期によって変動もあります。例えば直近ですとコロナ禍のときには、住宅の販売が比較的好調でした。建売住宅が完成する数か月前から成約するといった状況が続き、「巣ごもり需要」も後押しし、完成までの間にインテリアについて色々調べるお客様が相当数見られました。
現在は住宅需要が比較的落ち着き、その結果約7割が住宅完成後に成約に至ります。そうなりますと、比較的短期間で引っ越しが発生するため、家具付き住宅に人気が集まる、また提案されている家具をそのまま購入したいと希望されるエンドユーザー様は増えているように思います。

――床材・壁紙・照明・外構でトレンドのようなものは。それに一建設としてはどのように対応しているのでしょうか。

大苗 床材に関していいますと、かつてはウォルナットのような濃い色合いが流行っていましたが、現在はグレイッシュのものが人気で、具体例を挙げると大建工業さんの、少しくすみがかった色合いが持ち味の「トープグレー」が人気です。また、東海独自の取り組みで、分譲の建て売りでもアクセントクロスのオプションを採用しているのですが、かつては織物調のクロスが大変人気でした。一方、最新のサンゲツさんの見本帳を拝見すると、織物調の製品が非常に減った印象を受けました。その代わり、マテリアル調の「塗り」や、「石目」に見えるクロスが増えたと感じます。トレンドを掴んでいる動きであり、私たちもこういったアクセントクロスを増やしています。

――アクセントクロスを分譲でもやっているのですね。

大苗 中にはシンプルに行くべき分譲もあるため、物件にもよりますが、愛知県、岐阜県、三重県、静岡県の4県では比較的アクセントクロスを採用しています。また、東海エリア独自でオプション工事によるアクセントクロスのご提案もしています。住宅が完成する前のほうが、お選び頂けるクロスが多いため、完成前の販売促進にインテリアを活用する事例とも言えましょう。

顧客満足度を高めるインテリア提案も

――東海でもモデルハウスに家具を置いてそのまま販売するケースはあるのでしょうか。

大苗 建売住宅に家具を入れるケースでは、建物の雰囲気に合わせて家具をコーディネートし、住宅をご購入いただいたお客様にそのままプレゼントするパターンの他、ホームステージング業者さんが入り、小物・雑貨を中心とした空間提案を行うケースもあります。当社が提携しているホームステージング業者さんは、愛知県東海市の深谷家具さんなのですが、ダイニングテーブルの上に置ける観葉植物、食器、スタンドライトやシーリングライトといった、空間の設えを大切にした提案をしてくださいます。多くのお客様が、提案された商品をご購入してくださっています。

――例えばモデルの家でなく、同じ並びの他の建売を買いたいがそこにモデルと同じ家具を入れて欲しい、といったケースはあるのでしょうか。

大苗 はい、あります。建売が10軒あって1号棟だけ家具を入れたモデルとしているとき、3号棟を購入して1号棟の家具をそっくり買うということも可能です。
また、物件によっては20畳のリビングもあれば、動線の関係で14畳のリビングもあります。LDKでは置けるソファのサイズも変わるので、このようなケースでは当社から柔軟に提案を変えてご案内しております。

――エンドユーザー様が家具付きのモデルでインスピレーションを得ることが可能ということなのですね。最近はこういう家具を使うという傾向はありますか。

大苗 最近はセラミックのリビングテーブルやテレビ台を好む人が多い印象です。また重ためのイメージより明るく軽やかなイメージを持つ家具が選ばれると感じています。例えば脚がアイアンで細いとかインダストリアルまではいきませんが、スタイリッシュでシンプルなものが好まれているように感じます。もちろん、お客様は昨今インスタグラム等で情報を仕入れておられますが、そこでは、そのような(軽やかなイメージの)家具が目に留まりやすいのかもしれません。

――壁紙以外にインテリアのオプションで人気があるものは。

大苗 カーテン・カーテンレールセットが3段階のグレードに分かれています。一番裾のグレードはカーテンレールの色だけが選択できます。真ん中のグレードは、カタログからカーテンレールの色とレースとドレープが選べます。最高グレードのものはカーテンのコーディネーターが建物の雰囲気に合わせたものを選びます。また、まだ少ないながらですが、リモートワークスペースというのもあります。袖壁がある、もしくは大きなウォークインクローゼットがあるといった条件もありますが、ハンガーパイプを設けず、カウンターを設けてリモートワークが可能なエリアも人気です。

――様々なご意見を頂き、誠にありがとうございます。