【インタビュー2024】JAFICA所属インテリアコーディネーターたちにトレンド最前線を訊く

インテリアコーディネートワークス(宮城県仙台市) 関口和美氏
Interior Design PUPILLA(香川県高松市) 吉岡恭子氏
Luna crescente(ルーナクレシェンテ)(長野県駒ケ根市) 鈴木恵理子氏

家具、インテリアの最新トレンドを探る

インテリアコーディネーターの仕事とインテリアのトレンドに迫る。
今回も一般社団法人日本フリーランスインテリアコーディネーター協会(JAFICA)会員を中心に3名の現役のインテリアコーディネーターにインタビュー。各位の強みとエンドユーザーのインテリア観についてなど、日々感じていることを伺った。


インテリアコーディネートワークス 関口和美氏

――本日はお忙しい中ありがとうございます。まずは関口様より、ご自身のお仕事について簡単に教えてください。

関口 私の会社は仙台を拠点としていて、同地の他にも東北各県など広範囲にわたってお仕事をしています。コーディネート業務は年間50件ほど手掛けております。仕事の8割以上が住宅案件でして、ハウスメーカー様を通じてコーディネートする案件もあれば、自身で直接仕事を受けることもあります。また、住宅を建てる時、すなわち建築の時点、間取を決める時点から関わることが多いです。

――お客様が自宅を建てられる際、どこまでご一緒されるのでしょうか。

関口 間取り、お引渡し、そしてインテリア商材選びまでご一緒させて頂きます。これはお客様によって、様々なケースがあります。ハウスメーカー様がインテリアフェアを開催することもあれば、メーカー様のショールームにお連れして家具やカーテン、壁紙等を選ぶこともあります。

また、大変光栄なことにトータルインテリアコーディネートを一任頂けるということもありますが、そのぶん身の引き締まる思いです。また、近年みられる傾向の1つとして、お客様がインターネットやSNSでお調べになって、こういうデザインを取り入れたい、こういう家具が欲しいといった好みを提示され、それらを組み合わせてプレゼンテーションしてほしい、と言われるケースが増えています。打ち合わせの時にインスタグラム等を提示頂くことがとても増えました。総じて、SNSの普及とともに、お客様もリサーチするスピードがとても速くなったと感じております。

また、インテリアの嗜好も二極化しているように思います。例えば、コスト重視のお客様もいれば、何か月かかっても構わないので取り寄せて欲しい、とこだわりを貫くお客様もいます。

――一年間で約50棟やられるとのことでしたが、そのうちどれくらいの割合の人がインテリアの感度の高く、何割の人が興味の薄い方と感じますか。

関口 実のところ、興味のない方は少ないと感じます。新築住宅は皆さま大なり小なり興味をお持ちです。しかし、ここ最近はさらに興味を持たれる方が増えたと感じます。特に、コロナ禍の後からは、ご自身でSNSを活用して探しぬく、感度の高い方が急増したと感じます。皆さんとても積極的になり、関心がない、興味が薄い、といったことが急激に減ったようにも感じます。これは、様々な職業の方が在宅ワークを取り入れはじめ、住まう環境に対して、より敏感になってきたのが要因としてあるのではないでしょうか。

――ありがとうございます。次に、関口様の強みを教えてください。

関口 私は宮城県に長く住んでおり、東日本大震災を経験しました。それで気づいたのですが、東北の方々は、住まいは安全で安心できる場所であるべきだという考えが深く根付いています。心地よく穏やかに暮らしたいという願望を強くお持ちでいらっしゃいます。そのため1つの案件が終わったらそれで関係が途切れるというよりは、その後も住まいに少しずつ関わらせていただいています。5年後、10年後を見据えてお客様に寄り添う住まい作りをしていけたらと願っております。それが私の使命であり、仕事の強みだと思っています。

――最近のインテリアトレンドについて感じることをお教えください。

関口 最近、サステナブル、つまり環境や社会に配慮した暮らしを選ぶ方が増えています。お手頃で、便利で使い捨てのアイテムを選ぶ人は減ったように思います。例えば無垢材とか自然素材を使った家具などを、熟考した上で選ぶお客様がとても増えました。これは何年くらい使えるのかとか、メンテナンスで長く使えるのかといったご相談も増えました。また、国産材を使っているメーカーが信頼できるという意見も聞きます。できるだけ合成した材料やプラスチックなど合成樹脂材を避けたいという要望もありました。少し前にオール電化がもてはやされましたね。東北でもかなり増えました。今はさらにHEMSの導入も増え、照明一つとっても単にデザインだけでなく、効率を考える人が増えました。デザインプラスこれからの環境を考えるといった要素を提案に盛り込むことがさらに求められるようになったと感じます。

――インテリアのテイストで最近感じられる流行りなどあればお教えください。

関口 自然素材系が増えているように思います。床材もそうですが、建具、外壁も含めてそのように感じます。例えば、今打ち合わせしている案件でも、モスグリーンやペールグリーン、フェザーホワイトといった、天然素材に近い温かみのあるカラーテイストでなければお客様のセレクトに入りませんでした。ブラックとか、人工の色合いよりも、ニュートラルな自然色が好まれていると感じます。

一方、そのようなトレンドがありつつ、多様化の波も感じています。自身の思いつかなかったような組み合わせをリクエストとして頂くこともあります。お客様がご自分の感性でお調べになり、『こういうのをどう思いますか』と意見を聞かれることも増えました。お客様は自身の選択肢から私どもの率直な意見を求め、確証を得ることで安心したいというお気持ちがあるのだと思います。そのような時、従来のセオリーや知識から離れて、多様性を受け入れて柔軟に提案を受けとめることが求められている潮流なのだと感じます。その結果、『やっぱり選んでよかったのよね』と感想を漏らされるお客様が増えました。家具だけでなく照明にも興味を持たれている方も増えています。明かりを演出するにはどういう照明器具が良いですかとか、多灯照明、間接照明などの提案も使い分けたいという姿勢のお客様も増えています。

――家具業界やメーカーへの要望などはありますか。

関口 難しいご質問ですね。家具メーカー様へ直接の要望ではないのですが、最近、世の中の流れが早くて、お客様と一緒にじっくり選んだ家具やインテリア商材が、納品段階で価格が高騰したり、あるいは欠品したり廃番になってしまうというケースに直面しています。私のお客様は皆さま、家具にもこだわられてご自宅の完成を楽しみにしておられる方が多いです。

家の空間設計が固まる前に先行して家具だけ決めるのも、難しいですし、また、住宅が完成した後に、限られた時間と選択肢の中から選んでください、ということになるとこれまたお客様は残念に感じてしまうものです。ですので、空間コーディネートが決まったところで、タイミングよくインテリアも一緒に考えていけたらいいなと感じております。


若年層を中心に、自ら調べる人が急増

Interior Design PUPILLA 吉岡恭子氏

――ありがとうございます。続きまして、吉岡様のお仕事についてお教えください。

吉岡 私も住宅のコーディネートが中心です。新築、リノベーションを主に手掛けておりますが、ハウスメーカー様、工務店様からお仕事を頂くときはすべて新築案件です。自社で仕事を受けるときはリノベーションが中心です。件数としては新築のほうが多くて、年間で30から40棟ほどやらせて頂いております。

――関口さまのお話では案件が増えているとのことでしたが、吉岡様はいかがでしょうか。

吉岡 ハウスメーカー様、工務店様からの仕事を無差別にお請けしている訳ではなく、このお客様は吉岡でなければだめだろう、と担当の方が感じた案件のみ頂くことが中心です。

その根底には、私が楽しく仕事ができないと、お客様も楽しくできないだろうという想いがあります。リノベーションについても同じ思いがありますが、そのような案件は今のところ増えている印象は受けております。

――吉岡様でなければだめだろう、というのはどのようなお客様なのでしょうか。

吉岡 ストレートに申し上げますと、ご要望をたくさんお持ちの方ですね。ハウスメーカー様、工務店様はどうしても効率的にお仕事をされる必要がありますので、自社で使う床材、壁紙が決まっているケースがほとんどなのですね。お客様に対して、このメーカー、この商品の中から選んでください、というケースが圧倒的です。しかしお客様の中には、そのような限定的な選択肢では満足がいかない、という方も一定数いらっしゃいます。そのような方をご担当させて頂くことが多いです。

――なるほど、例えば壁紙で行くと、そのようなお客様にはどのようなご提案をされるのでしょうか。

吉岡 そうですね、最近ですとそういったお客様は壁紙を選ばない傾向があります。イタリアやフランスの塗り壁などが多い印象です。しかしどうしてもコストがかかるので、インテリアに予算をかけたいお客様が中心です。

――最近SNSなどを活用して、自身で情報収集するお客様が増えているというお話がありました。

吉岡 実は私のお客様の中では二極化しており、予算に余裕のある人ほど、おまかせのケースが多いです。予算を多く取れない方はご自身で調査をされることが多いイメージです。

私の感覚では、(ご自身で色々と調べるお客様は)30代などの若い方に多い傾向があります。自身で調べるのが普通、という世代なのでしょう。しかし一方で、サービスを受けることに価値を感じていない世代なのではないか、という仮説もあります。例えば、デパートで化粧品を買うと、(店員による)サービスの費用が含まれていますね。結果、インターネットで買うよりも高くなる。しかし、そういったサービスは不要であるとお感じになる世代なのではないかと感じます。インテリアにも、このような側面があるように思います。

――年齢による、サービスへの姿勢が異なるというのは興味深いですね。また、インテリアのトレンドについてお感じのことがあればお教えください。

吉岡 私も、自然素材が当たり前の傾向になってきていると感じます。何十年も前に一枚板のテーブルが人気となりましたが、それから近年まで殆ど流行っていませんでした。しかし、ここ最近では再び一枚板のテーブルを望む方が顕著に増えたと感じます。かなり高額ですが、そこにお金をかけたいユーザー様は少なくありません。50代から60代の人からすると、一枚板のテーブルは少し昔のデザインを彷彿させるアイテムでしょう。彼らからすると昭和レトロといって差し支えなく、あまり人気がありません。しかし30代の人たちにとってはそれがカッコイイ、クールであると映るのです。このように、インテリアの捉えられ方は世代とともに変わってくることもあるのですね。世代とともに、自然素材が当たり前に受け入れられる価値観が増えてきたのだと思います。

日本が高度経済成長期の当時、住宅をたくさん供給する必要があり、建売住宅が流行りました。工期を短くする必要もあったので、壁・クロスは白、と機械的に決定されていった時代がありました。それで日本人は、『壁・クロスは白が普通』という意識が醸成されたのだと思うのですが、今は基本の壁・クロスを薄いグレーやベージュといった、アースカラーを取り入れるケースもかなり増えてきたと思います。

――お仕事はどの段階から入られることが多いのでしょうか。

吉岡 私は、間取を変更可能な設計段階から携われないならお請けしない、とお伝えしています。それもありまして、契約前のお客様のもとへハウスメーカー様、工務店様の担当者、設計者とともに同行で打ち合わせに参加することもあります。

――間取りが決まる前でなければ携わりたくないとのことですが、それはなぜなのでしょうか。

吉岡 本当はこの家具を入れたかったのに、このキッチンにしたかったのに、この間取りでは入らないじゃないか、ということが結構多いからです。お客様とお話をしていると、本当はこういうことをしたかったんだ、と後から思いつくこともあるのです。そこで柔軟に対応、変更してくれる設計さんとお仕事をしたいと思っています。

――間取りを先に固定すると、設備・インテリアも制限されてしまいますからね。続きまして、家具メーカーに対して臨むことなどあれば教えてください。

吉岡 これは、後輩のコーディネーターたちによく言っていることなのですが、私は比較的多くの家具メーカー様とつながっています。それは自発的に繋がらせて頂いているのです。例えばJAFICAの会合で名刺を頂いたら、積極的に連絡するようにしています。なぜなら、それにより色々な情報を頂くことができるからです。また、私からお伝えできる情報もなるべくお伝えします。そうやって自身の知識、情報を増やしていかなければ、いずれAIにとって代わられる日が来ないとも限りません。そういった人間的な部分を大切にしているインテリアコーディネーターは生き残っていくと私は考えます。ですので、要望というよりも、もっと私たち側からも繋がっていくべきだと考えています。


自然素材系へ立ち返るトレンドも

Luna crescente 鈴木恵理子氏

――ありがとうございます。続きまして、鈴木様よりお仕事のご紹介をお願いできますでしょうか。

鈴木 私の仕事は、設計とコーディネートの組み合わせが中心です。ハウスメーカー様や工務店様からお仕事を頂くケースがほとんどですが、設計をしながらインテリアの提案も可能です。

設計から入る案件に関しては、インテリアを中心に考えた間取りを手がけることが多いです。この家具やインテリアを使いたいのだけどどうやればいいのか、といった案件の時にご指名を頂くことが多いです。リノベーションについても、インテリアにこだわりたいからとご指名を頂くものが多いです。ですので、家づくりにこだわりのあるお客様が中心です。比重としては家具以外が多いですが、取り扱うこともあります。

今やっている案件も、設計のセカンドオピニオンとしての立ち位置で、間取、照明、カーテン、家具選定までご提案しています。間接照明は設計から入らなければなりませんので、そういった点も考えながら詳細に提案しています。

――お二人のお話の中で、エンドユーザー様のインテリアに対する感性が鋭くなってきた、敏感になってきたというのは、お感じになりますか。

鈴木 はい、若い方は特にご自分たちで調べることがとても多いです。最初はおまかせ頂いていても、お話をしているうちにどんどんご自身で調べていく方が多いです。そのうち情報の多さにはまってしまい、アドバイスをお求めになるというケースが多いように感じます。年齢をある程度重ねられた方で、かつ予算も潤沢にあると、わからないからおまかせしますという方も多いです。先ほど、若い方はサービスを受けることに価値を感じていないのではないかというお話がありましたが、なるほどと思うこともあります。

特に30代はその傾向が顕著で、自身で調べる方がとても多いです。皆さん共通されているのは、失敗したくないという想いがあることです。その気持ちが原動力にあって、若い方は納得するまで調べる、その結果に対してコーディネーターがアドバイスをして納得がいくと、よりよい関係が生まれやすいです。この傾向はだいたい40代くらいまでのお客様に見られるように思います。それ以上の年齢層の方々は、全てをお任せされる方が増えていきます。一方、そのような上の年齢層の方々と会話していると、『昔家を建てたときは、大工さんにおまかせしてあまり自身で考えられなかったけど、こうやってインテリアコーディネーターと話して色々決めていけるんだね』と気づいてインテリアに目覚める人もまた、最近増えたと思います。

――ありがとうございます。続きまして、最近お感じになられている家具もしくはインテリアのトレンドについてお教えください。

鈴木 同じ答えで恐縮ですが、自然素材系がやはり多いと思います。また同時に、手入れが大変なものを避ける傾向があるようにも思います。汚れにくい壁紙ですとか傷つきにくい床材など、そういったものを好まれる傾向もあるのではないでしょうか。また、特定の箇所にこだわりを持ってお金をかける方も徐々に増えてきたように思います。

例えば、つい先日は30代のお客様で、組子を入れたいという方がいらっしゃいました。組子は住宅に取り入れるにはお金がかかるといったイメージが定着していてあまり導入例がなかったのですが、そういった私たちが見逃してきたものや、勝手に『受け入れられないだろう』と決めつけていた伝統を若い方が魅力を感じて、決して安価でないのに導入を決定されるのは、とても面白い傾向だと思いました。その背景には、廃れることのない、永く続く伝統的なデザインを、そして長持ちするものを求めている心理の現れとも捉えられます。もちろん、予算を抑えたインテリアを望む若い方も多くいらっしゃるので、そういった意味で両極端の時代だなと思います。

また私の活動する長野県は、古民家をカフェにするといった建築物も多く、そのような場所に若い人も多く集まってきています。そういった点に目を向けているのも面白いと感じます。

また、家具メーカー様へのご要望ですが、インテリアコーディネーターでショールームや展示会をコーディネートするといったコラボができるととても面白いなと思っています。私たちを使っていただければ、例えば小物をあわせて空間づくりもできます。

多くの家具メーカー様は、自社の中でショールームのレイアウトや見せ方をお考えになる会社様が多いように思っています。以前、JAFICAメンバーがそのようなお仕事をされたことがあり、メーカー様にとても好評だったと聞いています。そういったコラボレーションの輪が広がると面白いと思います。


――本日は皆さんに素敵なお話をたくさん伺うことができました。お忙しい中誠にありがとうございました。

(聞き手 長澤貴之)