【連載】ファイングレードウールクラブ 羊毛寝具の性能分析

British Woolは、国際羊毛繊維機構(IWTO)と連携し、さらにウェールズ政府の資金提供を受けて、羊毛と睡眠環境に関する研究を委託した。本研究はバンガー大学のBioComposites Centre(バイオコンポジットセンター)によって実施された。

このプロジェクトの目的は、特に掛け布団(デュベ)などの睡眠製品において、ウェールズ産羊毛が他の繊維素材と比較してどのような性能を示すかを明らかにすることであった。研究結果は、ウェールズ産羊毛が、いくつかの重要な点において、合成繊維の中綿やフェザー&ダウンよりも優れた性能を示すことを明らかにしている。
ウェールズ産羊毛の本来の特性は、同様の品種から得られる他の英国産羊毛と非常に似ている。そのため、本研究の結果は他の英国産羊毛にも直接当てはまると考えられる。羊毛が睡眠製品において優れた性能を持つことが広く理解されるようになれば、睡眠関連市場における羊毛需要は拡大し、英国の羊農家の収益向上にもつながるとBritish Woolは考えている。


研究範囲(Scope)
本研究の目的は、異なる素材を中綿とした寝具を比較することである。
すべての試験は、英国の小売市場で入手可能な製品から選ばれた、同程度の保温度(10〜10.5トグ)のシングルサイズ掛け布団を用いて実施された。
比較対象の中綿は以下の4種類である。

• 羊毛掛け布団
• 合成繊維掛け布団(ポリエステル)
• フェザー85%・ダウン15%掛け布団
• ダウン100%掛け布団

試験は、睡眠を考えるうえで重要な2つの要素である
• 熱の伝導(断熱性能)
• 湿気の移動
について行われた。


熱試験(Thermal Testing)―テスト1

方法
各掛け布団から 30cm×30cm の正方形サンプルを切り出し、中綿の厚みはそのまま保持した。
試験前には、サンプルを以下の条件で保管した。
• 室温:23℃
• 相対湿度:50%

これにより、すべての試験で同じ条件を確保した。
サンプルは FOX300 熱伝導率測定装置で測定された。

この装置では、サンプルを
• 上側プレート(冷却):10℃
• 下側プレート(加熱):30℃
の2枚のプレートの間に挟み、温度勾配を作る。
これにより、素材を通してどれだけ熱が移動するかを測定する。各サンプルを通過した熱量を測定し、中綿素材の断熱性能を比較した。

熱伝導率(K値)が低いほど、断熱性能は高い。結果として、羊毛掛け布団は試験対象の中で最も低いK値を示し、最も優れた断熱性能を示した。つまり、羊毛掛け布団は他の素材よりも高い保温性を提供し、これは快適な睡眠を支える重要な要素となる。


熱伝導率とは

測定される値は 熱伝導率(K値) と呼ばれる。これは、熱が素材をどれだけ通りやすいかを示す指標である。

例えば K値が1W/mK の場合、素材の両側で 1℃の温度差 があるとき、1ワットの熱が流れることを意味する。簡単に言えば
• K値が高い → 熱が通りやすい → 断熱性が低い
• K値が低い → 熱が通りにくい → 断熱性が高い
ということである。


結果

測定結果(熱伝導率)
羊毛 0.037
合成繊維 0.049
フェザー&ダウン 0.053
ダウン 0.045

羊毛掛け布団は最も低い値となり、最も優れた断熱性を示した。


熱試験 ― テスト2

方法
時間経過による熱性能を測定するため、掛け布団の内部に温度センサーを設置した。

試験条件
• 片側:30℃(暖側)
• 片側:10℃(冷側)

掛け布団の
• 上層
• 中央
• 下層
にセンサーを配置し、8時間にわたって熱の移動を追跡した。温度は 1分ごとに記録され、1時間ごとの平均値が算出された。試験は 3回繰り返して再現性を確認した。


誤解について

羊毛掛け布団は一般的に、他の掛け布団よりも
• 厚みが少なく
• ボリューム感が小さい
ため、消費者の間では「羊毛は暖かくないのではないか」という誤解がある。しかし試験結果は、この考えが誤りであることを示した。羊毛掛け布団は、ロフト(かさ高)が低くても、むしろ高い断熱性能を発揮する。


断熱性能比較

羊毛掛け布団は
• 合成繊維より 25%高い断熱性能
• フェザー&ダウンより 30%高い断熱性能
• ダウンより 17%高い断熱性能
を示した。


熱試験の結論

羊毛掛け布団は、他の中綿素材よりも優れた断熱性能を持つ。また、掛け布団内部の温度をより高く、安定して保つことができる。


湿度調整性能(Humidity Buffering)

方法
各掛け布団の中綿サンプルを 35cm×35cm のサイズで切り出し、水槽の上に設置した。サンプルは周囲を密封し、水には直接触れない状態にした。

水槽の温度は
• 37℃(人体の体温)
• 50℃(高湿度条件)
の2条件で実施した。

約24時間後
• サンプルの重量増加
• 水槽の水の減少量
を測定し

• 吸湿量
• 水分透過量
を計算した。


結果(37℃)

羊毛は
• 水分保持
• 水分透過
の両方において他素材を大きく上回った。つまり水分が羊毛内部を効率的に移動することを示している。体温条件(37℃)では、羊毛は湿度を適切に調整し、快適な睡眠環境を作る。


高温条件(50℃)

50℃では、湿度負荷が大きく増加する。この条件でも、羊毛掛け布団は

• ダウン
• フェザー&ダウン
• 合成繊維

よりも多くの水分を外部に移動させた。これは蒸発による冷却効果を高め、より早く快適な温度に戻ることを助ける。羊毛繊維は自重の約 30% の水分を吸収しても湿った感触を感じにくい。試験では、この吸湿能力が十分に活用され、水分が効率的に移動した。


湿度調整性能のまとめ

湿度が上がると、羊毛掛け布団はより多くの水分を移動させる。50℃では37℃の約2倍の水分移動が確認された。

一方、合成繊維では結露が発生し、水滴が滴り落ちたこれは実際の睡眠環境では蒸し暑く不快な状態を生む可能性がある。


水分移動速度

羊毛は
• 水分量が多いだけでなく
• 移動速度も速い
ことが確認された。

高温条件では
• 合成繊維より 最大120%速い
• フェザー&ダウンより 最大153%速い
• ダウンより 最大49%速い
速度で水分を移動させた。


最終結論

試験結果から、羊毛は
断熱性能
湿度調整性能
の両方において、他の素材より優れていることが確認された。

これらの特性は
• 体温調節
• 夜間を通じた快適な睡眠
を支える重要な要素である。

また羊毛掛け布団は
• 水分を内部に溜め込むのではなく
• 素早く外部へ移動させる
ため、湿度が高い状況ほどその性能差は大きくなる。