【オルガテック東京2023ピックアップレポ④ シンコー(ウィステリアグループ)】ビジネスモデル「KYKLOS(キクロス)」で環境への配慮推進

シンコー(ウィステリアグループ:名古屋市中川区、矢追和彦社長)は、オルガテック東京2023の「インターツムショーケース」エリアに出展。出展に際しては「シンコー」の社名ではなく「ウィステリアグループ」の名称で出展した。シンコーは海外生産品も含めて様々なブランドを取り扱っており、今回はウィステリアグループの一員として出展、グループ全体でより多くのアイテムの訴求を図った。

「ウィステリアグループ」として、あえて「シンコー」の名は提示せずにブース展開

出展ブースの「ウィステリア」の名称は、もとはシンコー社内において使用されていたものだったが、海外企業などとの取引が拡大するにつれ、「ウィステリア」の名を標準化して使用していくことになったと、同社の肥田雅史常務取締役を話す。ウィステリアグループは椅子の張地などに関するすべてのブランドをサポートするため、「インナーテリア」をプロデュース・提案を図っていくとする。なお、「インナーテリア」とは同社による造語で、「インテリアやエクステリアでもない、本質の良さ」に焦点をあてている。

同社は経済産業省が今年1月末に発表した「時代を担う繊維企業100選」に選出されている。環境に配慮した製品をより多く供給していることが選定の理由となった。そのため、ブース内には環境配慮の製品を広く展開した。同社が手掛けるビジネスモデル「KYKLOS(キクロス)」は、同システムに加盟したメーカーの椅子張り工場から排出された、椅子張り用PVCレザーの裁断くずを、同社の自社便で回収・粉砕後にレザーメーカーに返し、それを原料として再びレザーを生産するというもの。自社便で製品を輸送しており、取引先企業へ納品後に裁断くずを引き取るというシステムは、物流面での効率化にも貢献している。この夏には新工場の稼働開始を予定しており、見本市でもモニターを使用してシステムの説明を行ったほか、実際の粉砕物を例示することで、来場者の関心を集めていた。

撥水加工を施したテーブル天板「MOATEX®」

同社の広報担当者は「環境については、各社のアンテナがかなり高まっており、商品価値を高めるための大きなポイントでもある。オフィス家具メーカーが多く出展するこのオルガテック東京2023だが、オフィスには『環境』という要素は切り離せないものなので、環境対策での製品提案というものはやはりウリになるのでは」と語る。自社便での配送とその効率化に対する反響は来場者からも大きいようだ。

無染色製品「BizVA」はCO2削減に貢献

ウィステリアグループのブースではこのほか、無染色製品「BizVA」といったアイテムが展示された。「BizVA」は樹脂の段階で色を付けたもの。一般的に染色の作業では水と熱を必要とするが、この「BizVA」ではその染色の過程がなくなるため、その分CO2の排出量の削減につなげられるという。無線職の製品を今後もさらにブラッシュアップして展開する予定だ。

シンコーの矢追和彦社長は「来場者や出展社の、環境問題への関心は強いが、その本質からずれて、『マーケティングが飛びつきやすい、受けやすい言葉』が飛び交っている状況になってしまっていると感じる。我々は『本質的に』きちんとした製品づくりを取り組める企業同士、『キクロス』でタッグを組んでいく」とし、「『キクロス』では、システムに賛同していただいたパートナー企業から、廃棄処理費用や環境対策のマーケティング費などをいただいた上で、当社がリサイクルシステムの機能をまわしていく。例えば廃棄物を100㎏いただいたとしたら、同量のキクロス認定レザーを相手先に納入するので、廃棄分の100%がリサイクルされるという『完全循環』となる。課題は経営者のトップレベル同士を巻き込みながらシステムを拡大していかなければならないことだが、軌道にのればゆくゆくは織物などにも進出していきたい」と、今後の抱負を語った。